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もうひとりの彼
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もうひとりの加藤は
神様の計らいで
10年前に戻って、枝分かれした
並列時空間、至って普通の
世界で、それなりに暮らしている。
無限エネルギーも、常温超電導もない。
10年前の彼は、コンビニエンスのアルバイトで
もうひとりのゆり、こちらでは
友梨絵と呼ばれる少女に出会って、親しみあっているところだった。
魔法もない世界。
加藤は、友梨絵の愛らしさに
心を和ませていたところだった。
昼間は郵便局で働き、早朝に
コンビニエンスで働く加藤。
勤めていた国営企業が、政策で
リストラになって
解雇されて、疲弊していた加藤を
和ませた友梨絵だった。
小柄で髪は長く、少しだけカラーリングしていて
いつもスカートを穿かない友梨絵は
眠たそうに朝5時、ベージュのスクーターで
店にやってくるのだった。
初めて、コンビニエンスで
出会った時も
眠たそうに来たのだけれども。
「ごめーん、遅刻。」と、バイト仲間の
麻美に言いながら、見慣れない加藤に
笑顔を向けた。
加藤も、なんとなく笑顔を返してしまう。
幼いな、と微笑ましく思った、それだけだったけれど。
顔立ちはすっきりとしていて、17才と言っても
メイクアップのせいか、大人のようにも見えたが
話し方は子供っぽいので、かわいらしく思えた。
ふたりきりになると、普通の話し方になるのが
不思議だった。
レシートの裏に、名前を書いて
加藤に渡し
「よろしくお願いします」と、
真面目に挨拶するので
加藤も、同じようにした。
「名刺、あったんだけどね。会社の。」
と、加藤はリストラされた電気メーカーの
名刺を思い出した。
「どこの会社?」と、友梨絵は
自然に言う。
「芝浦電気」と、加藤は普通に。
「一流だねー。」と、友梨絵は笑顔。
顔いっぱいで笑うのが、子供っぽくて
とても愛らしい。
丸い頬は、まだ本当に少女のようだけども
寝不足なのか、少し疲れが見えて。
「あたしは、昼間学校なの。」
「僕は、昼間は郵便局かな。アルバイトだね」と、加藤は微笑んで言ったけど
でも、眠かった。
配達ではなく、集荷、と言う
郵便を集める仕事だった。
それでも収入が足らず、コンビニエンスで
アルバイトを始めたのだった。
「芝浦電気で、偉かったの?」と、友梨絵は
にこにこしながら。
「そう見える?」
「落ち着いてるもの、とっても。うちのお父さんよりずっと」と、友梨絵はにこにこ。
レジの前にある、マスコットの人形を
小さな手で撫でながら。
長い髪を後ろで束ねて、耳のピアスの穴を絆創膏で塞いであるのが、目につくので
加藤は
「なんか痛そうだね」と、言う。
「うん、規則でピアスは外すの」と、きちんと守る友梨絵を、加藤は好感を持って眺める。
笑顔で。
「きちんとしてるんだね」と、言うと
友梨絵は笑う。
「そんな事ないよー。あ、お父さんの方が
ずっと年上だよ。加藤さんより。
それに、ずっと若く見えるね。
20代かと思ったもん。自由な感じがして。」と、友梨絵はにこにこ。
「ありがと。よく言われるね。若いって
いいことだね、きっと。
君もナチュラルな感じで、とってもいいね。
かわいらしくて」と、加藤は
普通に言うと
友梨絵は、少し恥ずかしそうに笑った
えへ、と。
「トイレ行ってくんね」と
パタパタ駆けて行った。
暇な店なのだけど、24時間営業なので
仕方なくアルバイトを置いていた。
朝の5時からは、時給が少し高いので
それで暇なのは、結構有り難かった。
神様の計らいで
10年前に戻って、枝分かれした
並列時空間、至って普通の
世界で、それなりに暮らしている。
無限エネルギーも、常温超電導もない。
10年前の彼は、コンビニエンスのアルバイトで
もうひとりのゆり、こちらでは
友梨絵と呼ばれる少女に出会って、親しみあっているところだった。
魔法もない世界。
加藤は、友梨絵の愛らしさに
心を和ませていたところだった。
昼間は郵便局で働き、早朝に
コンビニエンスで働く加藤。
勤めていた国営企業が、政策で
リストラになって
解雇されて、疲弊していた加藤を
和ませた友梨絵だった。
小柄で髪は長く、少しだけカラーリングしていて
いつもスカートを穿かない友梨絵は
眠たそうに朝5時、ベージュのスクーターで
店にやってくるのだった。
初めて、コンビニエンスで
出会った時も
眠たそうに来たのだけれども。
「ごめーん、遅刻。」と、バイト仲間の
麻美に言いながら、見慣れない加藤に
笑顔を向けた。
加藤も、なんとなく笑顔を返してしまう。
幼いな、と微笑ましく思った、それだけだったけれど。
顔立ちはすっきりとしていて、17才と言っても
メイクアップのせいか、大人のようにも見えたが
話し方は子供っぽいので、かわいらしく思えた。
ふたりきりになると、普通の話し方になるのが
不思議だった。
レシートの裏に、名前を書いて
加藤に渡し
「よろしくお願いします」と、
真面目に挨拶するので
加藤も、同じようにした。
「名刺、あったんだけどね。会社の。」
と、加藤はリストラされた電気メーカーの
名刺を思い出した。
「どこの会社?」と、友梨絵は
自然に言う。
「芝浦電気」と、加藤は普通に。
「一流だねー。」と、友梨絵は笑顔。
顔いっぱいで笑うのが、子供っぽくて
とても愛らしい。
丸い頬は、まだ本当に少女のようだけども
寝不足なのか、少し疲れが見えて。
「あたしは、昼間学校なの。」
「僕は、昼間は郵便局かな。アルバイトだね」と、加藤は微笑んで言ったけど
でも、眠かった。
配達ではなく、集荷、と言う
郵便を集める仕事だった。
それでも収入が足らず、コンビニエンスで
アルバイトを始めたのだった。
「芝浦電気で、偉かったの?」と、友梨絵は
にこにこしながら。
「そう見える?」
「落ち着いてるもの、とっても。うちのお父さんよりずっと」と、友梨絵はにこにこ。
レジの前にある、マスコットの人形を
小さな手で撫でながら。
長い髪を後ろで束ねて、耳のピアスの穴を絆創膏で塞いであるのが、目につくので
加藤は
「なんか痛そうだね」と、言う。
「うん、規則でピアスは外すの」と、きちんと守る友梨絵を、加藤は好感を持って眺める。
笑顔で。
「きちんとしてるんだね」と、言うと
友梨絵は笑う。
「そんな事ないよー。あ、お父さんの方が
ずっと年上だよ。加藤さんより。
それに、ずっと若く見えるね。
20代かと思ったもん。自由な感じがして。」と、友梨絵はにこにこ。
「ありがと。よく言われるね。若いって
いいことだね、きっと。
君もナチュラルな感じで、とってもいいね。
かわいらしくて」と、加藤は
普通に言うと
友梨絵は、少し恥ずかしそうに笑った
えへ、と。
「トイレ行ってくんね」と
パタパタ駆けて行った。
暇な店なのだけど、24時間営業なので
仕方なくアルバイトを置いていた。
朝の5時からは、時給が少し高いので
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