科学は、如何にしてヒトを幸せにするか～ななの例～

思い込むひと

妬む、と言う気持ちを
加藤は知らない。


それまでの人生で妬んだ事が無いからで（笑）

「妬んで何になる？」（笑）と
理論的に考えるからだ。

妬んでいる時間に、新しい事を考えた方が楽しい。



伊原には、加藤にはできない事があるので
そもそも、比べるのが変だと
加藤は思う。

加藤の成果を、伊原がゼロ地点から見ているから

妬ましく思うのである。

伊原の成果から加藤を見れば良いので

それは発想の問題である。



名雪や愛紗が加藤を好んだとしても
それは、単に気分の問題であり


気が変わる事だってある。



妬む事はないのだが

実は、妬む気持ちは

幼い頃に得た劣等感に根差している。



幼い頃に、強い者から襲われた感覚。

そういう感情が、伊原を防御させ


加藤より劣っている事を自分に見出だしたがるので


被虐性嗜好である。



それは、岩重も同じなので
似た者同士で生きていた、と言う訳である。




岩重は、法の裁きを受け
精神科医療を受ける事となった。

それは、加藤が進言した事だが
司法警察官の依頼により
保健所より、二人以上の
精神科医の鑑定を得て

必要と判断された場合、精神科医療を
行う事になる。


所謂、措置入院制度であるが

岩重の場合、境界型人格障害と
判断され、加療を受ける事となった。





世の平和は、正しい法律の知識に因っても
守られる。




伊原は加藤を妬んだが、加藤が
悪い事はしていないので


何もする事は出来なかった。




加藤の家に下宿人が二人居たとしても
別に、法律上問題はない（笑）。





名雪は、しばらくしてから
石川の元に、いつかの礼を言いに来た。


美しい衣服を纏い、手作りのお菓子を抱え

整備士姿の石川を、工場に訪ねる。



石川は、汗を油に塗れて


名雪に笑顔を返した。


薄暗い工場の中で、エンジンと格闘している
彼は、男らしい。