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空の秩序

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ガソリンを投入しながら、老人は
ジョナサンに注意を促す。


「暗くなると危ないから、海辺を飛んで行った方がいい。モーターパラグライダーが増えているから高度を取って。それから、腕試しに
来る奴らがいるからな。相手にするな」


「腕試し?」ジョナサンに聞いたことのない
言葉。


老人は頷き「いつの時代も同じさ。ただ、今は暇になった奴らが飛行機を買って、飛ばしているからな。モーターの。操縦訓練とか言って」
嘆かわしい、と老人は言う。

飛行訓練と称して、仕事で乗っている
ジョナサンのようなパイロットと
腕を比べたいらしい。


いつの時代も同じだが、操縦が上手いと言う
証が欲しいらしい。




「郵便飛行機って上手いパイロットだと
思ってるんだろう。それに勝ったって
吹聴したいんだろな。愚かな奴らだ」と、老人は言う。



さっきのF15のパイロットが来て「護衛してやろうか?ミサイルで吹っ飛ばしてやるぜ」と
笑顔(笑)。


もちろん冗談である。


ジェット戦闘機とではスピードに違いがありすぎる。





暇が出来て、食うに困らなくても
男ってのは力比べが好きらしい。



科学の子ジョナサンには理解できない。



「僕は郵便運ぶのが任務だから」ジョナサンは笑う。




「ああそうだな。それでこそ公務員だ。」と、老人。



郵便局は、貨幣流通経済が破綻してから
国営に戻った。



市場経済には見合わないコストだからである。



同じく、鉄道もほとんど国営に戻る。




利益を得る必要がもうないからだ。



自然エネルギーの無料化で、企業活動をしてまで

日本銀行券の信頼を上げようとする企業もない。



企業活動そのものが必要なくなったのだ。



人々はそれぞれ、好きな事をすればいい。
いいのだが。


飛行機の操縦、なんて
今まで普通の人々には無縁だったものを
する時間が出来て来ると


上手いと言われたい。


そんな欲もあるのが人間。



「エアレースでも出ればいいのさ」と
F15のパイロットは笑った。


「そうやって、キチンと勝敗がつくと
まだ怖いのさ、そういう連中は」と、老人は
よくわかっている。

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