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その時、その時
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かなは、九州の田舎から
エンジニアになって出てきた娘だった。
女の子では珍しいのだけれども
たまたま、近くに住んでいた加藤(笑)
と違い
日本一の研究所で働く希望を持って
出てきていた。
でも、ひとり暮らしは寂しいので
加藤のような、寄り掛かれそうな人に
気持ちを寄せる。
そういう事は、よくある。
加藤は、攻撃的ではないから
怖い感じがしないのだろう。
幼い頃から、女の子の仲間に
誘われる事が多かった。
乱暴な事もしない、楽器が好きで
物静かなところなどが、女の子にしては
扱い易かったのだろう。
かなとしては、そういう加藤と
自然に仲良くなりたかったのだろうけれども
任期があって。
任期切れで、研究所を去る事になり
泣く泣く別れた、そんな思い出が
かなにはあった。
加藤は、解らない。
どうして自分なのだろう?(笑)。
格別、お金儲けが上手な訳でもなく
賢い訳でもない。
加藤は、ゆりと別れたばかりだったのだけれども
その事が記憶にあった、と言うのもあって。
なんとなく、時は流れて行った。
それもひとつの記憶、なのだろうけれども。
現実的に、お金が無かった(笑)と言う理由が
一番加藤にとって切実だった。
本当は、土着して生きるなんて大嫌いなんだけれども
母親を残して、父が死に兄が死に
見捨てる訳にも行かず、その上
研究所の仕事は不安定な契約社員である(笑)。
母親は別にして、婚姻なんて自滅だと
加藤は思っていたから
ゆりや、かなとも距離を置いていた。
そんな感覚が、自然エネルギーの
研究や、常温超電導の実用化、なんて言う
科学者としての仕事に向かわせるのであった。
「ま、お金は要らなくなる世の中にはなったけど」加藤は、エレベーターで1階に下りる。
広い構内を走るバスに乗り、これから帰宅しようかな、と思った。
経済の変革に伴い、働かなくても
良くなった人々は
労働から解放されたから
例えば三浦、のように
子育てをしながら嫌々働いていた人々は
働く理由がなくなった。
気取っていても、結局貧乏なので(笑)
働いていたのだ。
よく、お昼休みに家から持ってきた
冷凍のご飯を会社の電子レンジで解凍して
食べていた(笑)
加藤にそれを見られると、なぜか慌てて怒るのだが(笑)
なんで怒るのか加藤にも解らない(笑)。
加藤はのんびり「おや、お餅ですかぁ」と
にこにこしていると
三浦は金切り声を上げて「お餅じゃありません!」細い目で睨むのだが
なんで怒ってるの?(笑)と
加藤はにこにこ。
「ご飯暖かいと美味しいねぇ」と、ずっと
年下の三浦を愛でるように言うのだが
可愛がられて怒る、変な女(笑)。
多分、冷凍ご飯を解凍して食べるのが
格好悪いと思っていたのだろうか(笑)と
加藤には解らない不思議な怒りである。
別に怒る事じゃないような気もするが(笑)。
この、未来企画部は
なんだか、変な人々ばかりで
加藤は、早く以前いた研究室に戻りたいと
思った。
基礎研究を地道にする。
それこそ、科学だ。
未来企画、なんて怪しげな事を
付け焼き刃でやろうとして
結局出来ずに(笑)
加藤のような外部に頼るなら
最初から企画とお金の管理だけしてれば良いのだ(笑)
「解りもしない癖に口だけ出すなよ」加藤の独り言である(笑)。
働かなくても生きて行ける世の中にはなったが
それまで、物質が溢れていたのは
その経済のおかげだったので
だんだん、物質が減って行った。
農業が見直され、食べ物を作る産業が
発展する。
貨幣が無くなったので
資本、と言う考え方がないし
別に儲けなくてもいいから
皆、自給自足に近いようなスタイルで
生きていく。
株式投資は別に禁止されてはいないが
決済はKWHであるので
投資額は限られている。利益も僅かで
そもそも、無限エネルギーがあるのに
利益を得ても無意味だったから
市場は縮小していった。
銀行も同様で
決済は出来ても、人々の多くが
KWHを使うようになると
形骸になっていき
貨幣流通経済が退化すると
金利はゼロになった。
貸しても、意味がないのだ。
住宅ローン、なんてものも
土地取引が難しくなったせいで
借りてまで都会に土地を得る必然もなく
大方の人は山奥に引っ込んだ。
変に、人々が出会う事もなくなったから
争いも起こらないし、つまり発情も起きない。
人間の発情は社会の影響が大きかったから、である。
ななは、山奥の両親の小屋に戻った。
「ただいまぁ」
「おかえり」と、返事をしてくれる母親が
あれだけ疎ましかったのは?と
ななは思うけれど、解らない(笑)。
働かなくていい、って事が
そんなに自由だとななは思わなかった。
LINEを返さないと、なんて焦る事もない。
もう、集団に属さないでもいいのだ。
そう思うと、なな自身のストレスも消えていく。
報酬を得る為に、嫌な人々と
付き合う事もない。
好きな時間に、好きな事をして
暮らせばいい。
暮らしは結構、する事があった。
山小屋は狭いから、自分のコテージを
建てたいとななは思っても
売っている訳でもないから(笑)
自分で土地を拓いて、丸太小屋を建てなくてはならない。
でも、それを作るのも楽しいような気もする。
自分の家を自分で建てる。
そんな事が出来るなんて、会社勤めしてた自分には考えも及ばなかったからだ。
何より、時間もある。
「でも、誰かに手伝って欲しいなぁ」
そこは、女の子である(笑)。
メールで、加藤に尋ねてみた。
エンジニアになって出てきた娘だった。
女の子では珍しいのだけれども
たまたま、近くに住んでいた加藤(笑)
と違い
日本一の研究所で働く希望を持って
出てきていた。
でも、ひとり暮らしは寂しいので
加藤のような、寄り掛かれそうな人に
気持ちを寄せる。
そういう事は、よくある。
加藤は、攻撃的ではないから
怖い感じがしないのだろう。
幼い頃から、女の子の仲間に
誘われる事が多かった。
乱暴な事もしない、楽器が好きで
物静かなところなどが、女の子にしては
扱い易かったのだろう。
かなとしては、そういう加藤と
自然に仲良くなりたかったのだろうけれども
任期があって。
任期切れで、研究所を去る事になり
泣く泣く別れた、そんな思い出が
かなにはあった。
加藤は、解らない。
どうして自分なのだろう?(笑)。
格別、お金儲けが上手な訳でもなく
賢い訳でもない。
加藤は、ゆりと別れたばかりだったのだけれども
その事が記憶にあった、と言うのもあって。
なんとなく、時は流れて行った。
それもひとつの記憶、なのだろうけれども。
現実的に、お金が無かった(笑)と言う理由が
一番加藤にとって切実だった。
本当は、土着して生きるなんて大嫌いなんだけれども
母親を残して、父が死に兄が死に
見捨てる訳にも行かず、その上
研究所の仕事は不安定な契約社員である(笑)。
母親は別にして、婚姻なんて自滅だと
加藤は思っていたから
ゆりや、かなとも距離を置いていた。
そんな感覚が、自然エネルギーの
研究や、常温超電導の実用化、なんて言う
科学者としての仕事に向かわせるのであった。
「ま、お金は要らなくなる世の中にはなったけど」加藤は、エレベーターで1階に下りる。
広い構内を走るバスに乗り、これから帰宅しようかな、と思った。
経済の変革に伴い、働かなくても
良くなった人々は
労働から解放されたから
例えば三浦、のように
子育てをしながら嫌々働いていた人々は
働く理由がなくなった。
気取っていても、結局貧乏なので(笑)
働いていたのだ。
よく、お昼休みに家から持ってきた
冷凍のご飯を会社の電子レンジで解凍して
食べていた(笑)
加藤にそれを見られると、なぜか慌てて怒るのだが(笑)
なんで怒るのか加藤にも解らない(笑)。
加藤はのんびり「おや、お餅ですかぁ」と
にこにこしていると
三浦は金切り声を上げて「お餅じゃありません!」細い目で睨むのだが
なんで怒ってるの?(笑)と
加藤はにこにこ。
「ご飯暖かいと美味しいねぇ」と、ずっと
年下の三浦を愛でるように言うのだが
可愛がられて怒る、変な女(笑)。
多分、冷凍ご飯を解凍して食べるのが
格好悪いと思っていたのだろうか(笑)と
加藤には解らない不思議な怒りである。
別に怒る事じゃないような気もするが(笑)。
この、未来企画部は
なんだか、変な人々ばかりで
加藤は、早く以前いた研究室に戻りたいと
思った。
基礎研究を地道にする。
それこそ、科学だ。
未来企画、なんて怪しげな事を
付け焼き刃でやろうとして
結局出来ずに(笑)
加藤のような外部に頼るなら
最初から企画とお金の管理だけしてれば良いのだ(笑)
「解りもしない癖に口だけ出すなよ」加藤の独り言である(笑)。
働かなくても生きて行ける世の中にはなったが
それまで、物質が溢れていたのは
その経済のおかげだったので
だんだん、物質が減って行った。
農業が見直され、食べ物を作る産業が
発展する。
貨幣が無くなったので
資本、と言う考え方がないし
別に儲けなくてもいいから
皆、自給自足に近いようなスタイルで
生きていく。
株式投資は別に禁止されてはいないが
決済はKWHであるので
投資額は限られている。利益も僅かで
そもそも、無限エネルギーがあるのに
利益を得ても無意味だったから
市場は縮小していった。
銀行も同様で
決済は出来ても、人々の多くが
KWHを使うようになると
形骸になっていき
貨幣流通経済が退化すると
金利はゼロになった。
貸しても、意味がないのだ。
住宅ローン、なんてものも
土地取引が難しくなったせいで
借りてまで都会に土地を得る必然もなく
大方の人は山奥に引っ込んだ。
変に、人々が出会う事もなくなったから
争いも起こらないし、つまり発情も起きない。
人間の発情は社会の影響が大きかったから、である。
ななは、山奥の両親の小屋に戻った。
「ただいまぁ」
「おかえり」と、返事をしてくれる母親が
あれだけ疎ましかったのは?と
ななは思うけれど、解らない(笑)。
働かなくていい、って事が
そんなに自由だとななは思わなかった。
LINEを返さないと、なんて焦る事もない。
もう、集団に属さないでもいいのだ。
そう思うと、なな自身のストレスも消えていく。
報酬を得る為に、嫌な人々と
付き合う事もない。
好きな時間に、好きな事をして
暮らせばいい。
暮らしは結構、する事があった。
山小屋は狭いから、自分のコテージを
建てたいとななは思っても
売っている訳でもないから(笑)
自分で土地を拓いて、丸太小屋を建てなくてはならない。
でも、それを作るのも楽しいような気もする。
自分の家を自分で建てる。
そんな事が出来るなんて、会社勤めしてた自分には考えも及ばなかったからだ。
何より、時間もある。
「でも、誰かに手伝って欲しいなぁ」
そこは、女の子である(笑)。
メールで、加藤に尋ねてみた。
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