科学は、如何にしてヒトを幸せにするか～ななの例～

相場

「そりゃ、会社のお金をいくらでも
使えるとなれば
貧しい心の持ち主には、管理できないだろうね」と、加藤は言った。


僅かな金額で、三浦も井川も
将来を台なしにしたのだ。


「だから、僕は放っておけばいいと思うけれどね。いずれ自滅するよ。悪、って結局
欲望が大きい人の事だから、貧しいのさ
いつだって。



手元のものより、もっと欲しいと思う。
それは想像だから、現実じゃない。


こんな事が解らないのはバカなんだけど
工学博士だなんて言ってもねぇ」



井川は、それで定年後に
ずっと嘱託で居られるハズだったのだが

３年契約、になってしまったそうだ（笑）。



「非正規って事ですか」ジョナサンは笑った。


加藤は頷く。「まあ、そんな低俗な奴らは
どうでもいいけど。もう、株式投資も終わりさ。そんなものを使わなくても、自然エネルギーの無料化で、工場は動く。あらゆるものが無料になる。インターネット、みたいなものになるね。それで僕は、自分の人格をコンピュータに移している。いつ死んでも、僕の人格は
コンピュータの上に残る。ネットワーク上の
あちこちに増殖するね。スーパーコンピュータの」と、加藤は笑顔になった。


「アクセスすれば、僕は答えるだろう。会話もする。そうしてステータスが変化する。
恋もするかもしれない。

何よりいい事は、低俗な奴らに関わる事が
絶対ない、と言う事だ」加藤は
元々逃避的なせいもあって、戦って勝つより
撤退して関わらない、そういう道を選んだ。



ゆりと婚姻してもいいが、権利関係で
争う事もあるだろう。


損得があるなら。


それが面倒なので、婚姻を避けたのが
こちらの加藤。


向こうの、ななが恋した方の加藤は
過ぎた時間を取り戻す為に、並列時空間に
旅した、のだった。


そちらは、もちろん損得も貨幣もある
ふつうの
世の中で

ゆりと共に生きていく、事にした加藤。




ななは、やっぱりそっちの加藤がいいな、
なんて思う（笑）