241 / 418
神様の願い 魔王の願い
しおりを挟む
「加藤さんのしたいことってないんですか?」ななは尋ねる。
本当は、加藤の心が掴めないと思ったのだった。
普通の男だったら、かわいい女の子に慕われて
我が物ともせず、10年待とう、などと言う
のは、ななの想像を超えている。
でも、1970年代あたりでは、それが
当たり前だった。
男女の結び付き、それ以前に
人間としての結び付きを大切に考えていた。
それは、人種も性別も超えて、と言う事だ。
「僕には、母がいるんです。母は、父と兄を
同時に無くして心の拠り所が無くなっている。今、僕がゆりの元に走れば、喪失感が大きいだろう。」
加藤は、ななの聞いた事のある言葉を放つ。
そう、並列世界に旅立ったもうひとりの加藤が
言った言葉だった。
彼は、ゆりと、母の
協調を見届けてから
そちらに旅立ったのだけど。
こちらの加藤は、それを見極めるよりも
もう少し、慎重なようだ。
「本当はうんざりですけどね。でも
家族って助けないと。昔なら
隣近所があったり、会社の上司や仲間があった。
今は、どちらもない。
会社も、派遣、なんて制度のせいで人間的結び付きは薄いし」と、加藤が言うと
「そうでしょうか」背後から加藤に声を掛けた
不思議に柔和な微笑みを持った初老の大男。
加藤に微笑んでいる。
加藤は、彼を尊敬しているらしい。
この研究所の理事、らしい。
平服だが、折り目正しい雰囲気。
「わたしは、加藤さんの人格を信頼しています。呼び戻したのも異例の事で、普通は
出て行った人が戻る事はない。
そういう例もありますね、派遣でも」と
彼は柔和にそう言った。
大男らしい、揺らぎのない堂々とした雰囲気はどことなく加藤にも似ている。
加藤は、ありがとうございます、と
礼を述べた。
ななと、ジョナサンも
自然と頭が下がる。
人格に魅力があれば、自然と尊敬されるもので
威張る必要などないものだ、と
ななも実感した。
静かに去っていく理事、を
加藤は視線で追い
「あの方と、もう長い付き合いになるね。
事ある度に呼んで貰えて。人柄が信頼できるから、どんな事でも素直に従える。
人の付き合いってそういうものだと
僕は思うんだ」加藤はそう言った。
昔は、みんな年長の人はそうで
従っていれば楽だった。
それが壊れたのは、年長の人が
自分の利益をまず考えるように
変わったから、だった。
本当は、加藤の心が掴めないと思ったのだった。
普通の男だったら、かわいい女の子に慕われて
我が物ともせず、10年待とう、などと言う
のは、ななの想像を超えている。
でも、1970年代あたりでは、それが
当たり前だった。
男女の結び付き、それ以前に
人間としての結び付きを大切に考えていた。
それは、人種も性別も超えて、と言う事だ。
「僕には、母がいるんです。母は、父と兄を
同時に無くして心の拠り所が無くなっている。今、僕がゆりの元に走れば、喪失感が大きいだろう。」
加藤は、ななの聞いた事のある言葉を放つ。
そう、並列世界に旅立ったもうひとりの加藤が
言った言葉だった。
彼は、ゆりと、母の
協調を見届けてから
そちらに旅立ったのだけど。
こちらの加藤は、それを見極めるよりも
もう少し、慎重なようだ。
「本当はうんざりですけどね。でも
家族って助けないと。昔なら
隣近所があったり、会社の上司や仲間があった。
今は、どちらもない。
会社も、派遣、なんて制度のせいで人間的結び付きは薄いし」と、加藤が言うと
「そうでしょうか」背後から加藤に声を掛けた
不思議に柔和な微笑みを持った初老の大男。
加藤に微笑んでいる。
加藤は、彼を尊敬しているらしい。
この研究所の理事、らしい。
平服だが、折り目正しい雰囲気。
「わたしは、加藤さんの人格を信頼しています。呼び戻したのも異例の事で、普通は
出て行った人が戻る事はない。
そういう例もありますね、派遣でも」と
彼は柔和にそう言った。
大男らしい、揺らぎのない堂々とした雰囲気はどことなく加藤にも似ている。
加藤は、ありがとうございます、と
礼を述べた。
ななと、ジョナサンも
自然と頭が下がる。
人格に魅力があれば、自然と尊敬されるもので
威張る必要などないものだ、と
ななも実感した。
静かに去っていく理事、を
加藤は視線で追い
「あの方と、もう長い付き合いになるね。
事ある度に呼んで貰えて。人柄が信頼できるから、どんな事でも素直に従える。
人の付き合いってそういうものだと
僕は思うんだ」加藤はそう言った。
昔は、みんな年長の人はそうで
従っていれば楽だった。
それが壊れたのは、年長の人が
自分の利益をまず考えるように
変わったから、だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!



異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる