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殺意のバカンス
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「本気で殺意なんて抱かないように
してるのさ。だから」と、加藤は
口調が砕けた。
普段のジェントルマンは、防御なのかと
ジョナサンは思う。
心に感じないように、自らバリアを張ってしまう。
解離、などと呼ばれるが。
レストランの音楽が変わった。
エリック・サティのジムノペディ1番。
ゆったりしているようで、どこか
哀しさを感じるメロディー。
加藤は、その曲が好きなようだ。
表情に和みが見える。
「父の時も、兄の時も
彼らは僕の自由を束縛しようとした。
できないで、なぜか死んだ。
切迫観念、だったんじゃないかな。
優位でなくてはいけない、と言うような。
父は、政治家になったような人物なので
頭脳に自信があったんだろう。でも、僕を
支配できなかった。無力感から、病気が悪化した。
医師が、治療が困難だと言う事を僕に告げた。
僕は、そのまま父に伝えた。
父は、治療拒否して死んだ。
兄は、議論で僕に勝てなかったので
宗教を信じた。
そこなら、僕に勝てると思ったのだろう。
祈祷が過ぎて、自動車を運転中に発作的に
高速道路から落ちて死んだ。
事故を装った自殺だと、僕は知っている。
その数日前に、推理小説、僕の書いているそれを見ていた。
その手段を書いてあった。
ふたりとも、僕の自由を奪いたかったらしい。
気づいていないけれど、そういう思想に
ふたりとも、縛られている。
家族は序列、父は息子を支配できる、
兄は弟を支配できる。右の思想かな。
そういうものが社会にあふれている。
そういう人達は、盲信的にそれを信じているから
僕のように信じない人がいると、自分達が
信じられなくなるんだろね。
愚かな事だ。
学校教育もそういうところが昔はあったから
教師の言う事は絶対だ、なんて
暴力的に教えた。
そのうちに教師が、教え子を暴行したりして
無くなったけどね。元々は思想だよ。
教師に従え、親に従え。会社に従え。そして、
国に従え」
「最後は、天皇陛下万才」(笑)ジョナサンが合いの手を入れた。
「そうそう。そうやって服従を植え付けているのさ。イジメだって、そういう連中が
集団暴力でする事だよ。もし、教師や親が
自ら考えて行動しろ、って教えたら
イジメは起こらない。それをしたくても
できないのさ。国がしてるんだから。
戦前の思想狩りと、何も変わっていないのさ。
こういう研究所だってそうで、東大出てたら
偉い、と信じこまされて、何もできない
連中の集まりさ。
でも、コンピュータは嘘をつかないからね。
できない奴にはできない。
それで僕らが研究員になってる、って事さ。
万能細胞騒ぎだってね。国のベンチャーで
始めたんだよ。
それができなくなって、ひとりの研究員の
責任にしたけどね。
管理職で良心のある人は、自殺したり
辞任したりしたでしょう?
みんな、心の切迫観念のせいさ。
信じない僕らには、どうって事ない。」と、加藤は言った。
「コンピュータに育てられた僕も、なんとも思わないけど」ジョナサンは言った。
「これから、君達の時代が来る。父親も
母親も居ない、国も家族も要らないけど
友達はいる、仲間はいる。
元々人間はそうだったんだよ。」
してるのさ。だから」と、加藤は
口調が砕けた。
普段のジェントルマンは、防御なのかと
ジョナサンは思う。
心に感じないように、自らバリアを張ってしまう。
解離、などと呼ばれるが。
レストランの音楽が変わった。
エリック・サティのジムノペディ1番。
ゆったりしているようで、どこか
哀しさを感じるメロディー。
加藤は、その曲が好きなようだ。
表情に和みが見える。
「父の時も、兄の時も
彼らは僕の自由を束縛しようとした。
できないで、なぜか死んだ。
切迫観念、だったんじゃないかな。
優位でなくてはいけない、と言うような。
父は、政治家になったような人物なので
頭脳に自信があったんだろう。でも、僕を
支配できなかった。無力感から、病気が悪化した。
医師が、治療が困難だと言う事を僕に告げた。
僕は、そのまま父に伝えた。
父は、治療拒否して死んだ。
兄は、議論で僕に勝てなかったので
宗教を信じた。
そこなら、僕に勝てると思ったのだろう。
祈祷が過ぎて、自動車を運転中に発作的に
高速道路から落ちて死んだ。
事故を装った自殺だと、僕は知っている。
その数日前に、推理小説、僕の書いているそれを見ていた。
その手段を書いてあった。
ふたりとも、僕の自由を奪いたかったらしい。
気づいていないけれど、そういう思想に
ふたりとも、縛られている。
家族は序列、父は息子を支配できる、
兄は弟を支配できる。右の思想かな。
そういうものが社会にあふれている。
そういう人達は、盲信的にそれを信じているから
僕のように信じない人がいると、自分達が
信じられなくなるんだろね。
愚かな事だ。
学校教育もそういうところが昔はあったから
教師の言う事は絶対だ、なんて
暴力的に教えた。
そのうちに教師が、教え子を暴行したりして
無くなったけどね。元々は思想だよ。
教師に従え、親に従え。会社に従え。そして、
国に従え」
「最後は、天皇陛下万才」(笑)ジョナサンが合いの手を入れた。
「そうそう。そうやって服従を植え付けているのさ。イジメだって、そういう連中が
集団暴力でする事だよ。もし、教師や親が
自ら考えて行動しろ、って教えたら
イジメは起こらない。それをしたくても
できないのさ。国がしてるんだから。
戦前の思想狩りと、何も変わっていないのさ。
こういう研究所だってそうで、東大出てたら
偉い、と信じこまされて、何もできない
連中の集まりさ。
でも、コンピュータは嘘をつかないからね。
できない奴にはできない。
それで僕らが研究員になってる、って事さ。
万能細胞騒ぎだってね。国のベンチャーで
始めたんだよ。
それができなくなって、ひとりの研究員の
責任にしたけどね。
管理職で良心のある人は、自殺したり
辞任したりしたでしょう?
みんな、心の切迫観念のせいさ。
信じない僕らには、どうって事ない。」と、加藤は言った。
「コンピュータに育てられた僕も、なんとも思わないけど」ジョナサンは言った。
「これから、君達の時代が来る。父親も
母親も居ない、国も家族も要らないけど
友達はいる、仲間はいる。
元々人間はそうだったんだよ。」
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