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赤い電車

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女の子の持っていた、アコースティックギターは

金属の弦が張ってあって、爽やかな
音がした。


区役所の前で音楽を奏でても、別に
迷惑だ、と言われる事もないくらいに
綺麗な声で、さすがに
インディーズ、で歌ってるんだなと
ななは思い


「駅前で歌ったりもするの?」





女の子は、かぶりを振り

「ちょっと怖いもの」と、にっこり。


区役所だと、あんまり怖い事には
ならないらしい。



今は平和な世の中になったと言っても
不安な気持ちって、すぐにはなくならない。


長い間、人間が生きてきて
そういう記憶が積み重なっているから


女の子は、やっぱり防御適応するのは
それまで、仕方ない事だったけど



科学で生まれた子供達は、戦いを好まないから
いつか、安心できる時が来るのだろうけれど。



「さっきの歌、あなたが歌うと
さっぱりとして、いいね」と、ななが言うと

女の子は、ありがとう、ってにっこり。

みわって呼んで?と言う。



「あたし、なな」と、少しお姉さんの
ななも、みわと同じ口調になって

学生みたいな気持ちになってしまって。

なんだか懐かしく思った、ななだった。



そういえば、みわ、って名前を

加藤が言っていた事を思い出したりする
ななだった。



加藤の、ガールフレンドのひとりだったのか
そんな、女の子の名前を
彼が口にするだけでも
ちょっと、気にしてしまっていた
その頃のななだった。
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