科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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pureness

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「ななは負けたのね」と、ひとりごと
みたいにつぶやくと

加藤は、「負けてないよ。ゆりが勝ってもいないし。
比べるものでもないさ、ただ、ゆりは
まっすぐに気持ちを伝えてくれた。
一緒に生きたいと言われて、僕も
そう思った。

それが、例えばひとときの夢で
いつか、壊れてしまっても

その気持ちを大切にしたい、そう思った。」







「ななが先に逢ってたら、ななを好きになってくれた?」




「それはわからない。歳も一緒のふたりだしね。でも、ゆりには強い意思があった。
まっすぐな気持ちがあった。」



と、加藤は言う。



ななにとって不幸だったのは、ななが16才の頃に

恋人に出逢えなかった事だろう。




駆け引きに慣れ、自分から恋しい気持ちを
抱いても


まっすぐに伝えようとせず、誘惑しようと
するあたりが



純粋な恋から外れているように思われても
仕方ない。


それは、損得感情、市場経済に毒された
歪んだ駆け引きだから。



それも、ななのせいでもない。

普通の生物は、雌に選択権があるから

人間だって、愛を求められたら拒めない(笑)。

加藤がいい例である。


加藤は、子供の頃から
愛を求められる事に慣れていた。


素直に育てられたから
女の子にとって、優しい存在だと
捉えられるらしい。



それで、ガールフレンドは多かった。


たまたま、ゆりが
加藤にとって好ましい、庇護したい存在だっただけ、なのだけれども



ゆりは、素直に愛を求めて
別れが辛くて泣きはらすような気性で

まっすぐなその心に、加藤は
応えざるを得なかったが


それも、生き物の本質である。




たぶん、ななが16才の時に
加藤に出会っても、まっすぐに恋を打ち明けは
しなかったろう。


普通、出来そうでできない事だ。





そういう女の子なら、加藤の周辺には
沢山居たから


生物の雄と違って、長年家庭に拘束される
人間の男としては、できれば避けたいと(笑)
思うのも自由である。





家庭、そう
加藤の功績であるエネルギー革命に因って

加藤が元々居た世界では、家庭を持たなくても

人間は生きて行けるし、子供でも
独立して生きていけるようになるはずだが
こちらの並列世界は、そうではないから


従前の家庭を営んでいる、加藤である。




「ななちゃんも、向こうに戻ったら
自由な世界が待っているんだ。いい人々も
増えてくる。

似合いの恋人を見つけるといいよ」加藤は
さらりと言った。



加藤の言葉は素直だけれども
それだけに、ななには辛い。


どういう訳だか、怒りを感じた(笑)なな。


「納得できない。不公平、そんなの!」と
公平であるはずもない自然な恋愛の在り方に
不満を告げる、なな。


生れつき、壊れた管理社会に生きて、公平と言うよりは
有利な立場に回る事に腐心していたらしい
言葉である。


不利な時だけ、公平を主張するのだ(笑)。



自分が有利な時には、困っている人を
助けたりはしないので

加藤は、そんなところも感じていて
あまり、好ましいとは思わなかった。




「君と僕とは、合わないな」と、加藤は
そんなふうに言う。
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