科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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想定内

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それからすぐに、加藤に
仕事の依頼が入った。

工場自動設備の技術、だったけれど

専門外とは言え、出来ない事もない。



郵便局とバイトを掛け持ちするよりは楽だ。



仕事の報酬も、相場で決まるので
難しい仕事の単価は高い。



郵便局のように、大変な仕事でも
誰でも出来ると、単価は安い。





コンビニ店員とかもそうだけど。



加藤自身は、科学の仕事が好きな訳でもなくて

単価が高いから受けているだけ、だった。



「たまには、いいもんだな」と

世間並のアルバイトをしてみると


いい子に巡り会ったりするので(笑)。




料理が好きだ、と言って
サンドイッチを作ったり。


髪形の好みを加藤に尋ねて

「似合ってればいいんじゃない」と言うと



なんとなく察して、茶色から自然の色に
戻したり。



着衣も、いつも加藤の着ているものに
似せたり。




可愛い子だ、と思う。




時折、父親が観察に来ていたから
割と、箱入りなんだろうか。







春になれば、彼女も卒業で

どこかに就職しなくてはならないし

加藤自身も、バイトの掛け持ちよりは
収入のいいバイト(笑)にするべきだろう。







それで、次の日。


加藤は、少女の就職先を探して


連絡先を知らせた。




少女は、「ありがとう」と、喜んだ。



そこに行けば、もう、この思い出のある
店に戻る事もない。






バイトしながら、メモを渡したので



バイト仲間のみんなも、なんとなく


ふたりの行く末を察したようだった。


それを、少女が
別れと捉えたかどうかはわからない。

でも、少女の就職は上手く行き

アルバイトを辞める事になった。


「有名な先生でね、アタシの腕を認めてもらえたの!」と、少女は嬉しそうだった。


加藤も、同じくらいの3月に
店を去る事になる。



バイト仲間で、お姉さん格の麻美は22歳の
ピアノ教師だが

自由業故、収入源として
この店でバイトしていた。

麻美は、少女とも仲良しだったので


加藤に、何か言いたいようだった。


けれども、何も言わずに
麻美とも別れる事になった。


もちろん、加藤もそれで
終わるとも思っていなかったけれど


時間を作って会うと言う習慣が無かったので
少女は、創造、加藤は研究と
それぞれのことに忙しくなって

以降、10年

偶然路上で出会う、とか
そのくらいになってしまう。


でも、加藤は思う。
もし、あの時の自分に

お金や、時間があったら

ひょっとしたら、月並みな幸せが得られたのかもしれない、などと。

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