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30・腕輪の効果
しおりを挟む(よし、あのドームはもうだいぶ強度が落ちてるはずだ、ここまでは予想通り、あと一撃…それなりの威力が欲しいよな)
乾燥ドライ凄く優秀!運用次第じゃ生活魔法って戦闘でも凄く便利に使えるのでは?いや、ヨイチョくらい魔力量がないとここまでの事は出来ないか、ヨイチョ優秀!それにしても…
(別件で気になっている事があるんだよなぁ)
ーーー何故、俺は魔法を防ぐ事が出来たのか…
俺のチート能力『魔力特大(仮)』には『魔法無効』って副次的効果がある筈だ。
その効果を考えれば防ぐどころか、その場に突っ立ってるだけで全ての魔法攻撃は俺の目前で消え去る筈なんだ。実際、ウルトの魔法は俺に当たる前に消滅するのは確認済みだ。
ところがさっきの攻防はどうだ?俺の腕にはしっかりとバルト達の攻撃を受けた疲労がある…一体どうなってるんだ?
「あぁ、それはきっとこれのせいだね」
ヨイチョは自分の左手首に嵌めたを腕輪ブレスレット見せる。
「訓練前に説明があっただろう?衰退の腕輪、魔力を一定以下に抑える効果があるんだよ」
「実はまだ難しい言葉は分からなくてさ…でも今ヨイチョが使ってる乾燥ドライなんかはどうなってんの?結構魔力使いそうだけど…」
「あはは、腕輪は魔力の強さの上限が制限されるだけなんだよ。土壁アースウォールの維持とか僕が今使ってる乾燥ドライは魔力を強く込める訳じゃなく、長く放つって感じなんだよね」
魔力とは体内に循環しているだけでなく、人の周りにも滲み出ているらしい。検知魔法や索敵魔法はその滲み出る魔力を検知している。
魔法抵抗レジストは、相手が放った魔法をその滲み出る魔力で相殺させるものらしい。相手の魔法に込められた魔力よりも巨大な魔力を纏ってないと起こらない現象だ。
俺も今は、身体から滲み出る魔力の強さが制限されてるって事なのか?…
「つまり、コイツのせいで俺の纏う魔力量が少なくなったから魔法無効レジスト出来なくなったって事か」
「それにしてもなぁ兄貴…何で両腕に腕輪嵌めてるんだよ、なぁ?」
「あっホントだっ!何で??これじゃあ魔力なんて無いのと変わらないよ!」
「いや、親切な人が…」
「兄貴…騙されたんだなぁ」
何て事だっ!…めっちゃ親切な人だと思ってたのに!
「意外に抜けてるんだなぁ兄貴、そんなんじゃすぐにやられちまうぜ、なぁ?」
「ぐっ…そ、そんな事よりジョルク!」
「何だよ兄貴?」
ーーー戦いは時に人を狂わせる。
『根拠無き自信』
俺は戦況が自分の思い通り進む心地良さに、まるで己が万能になったかの様な錯覚に陥っていた。
トドメの一撃、それはこの筋肉をおいて他に無いのではないか?あの亀裂だらけの壁なら、俺の筋肉の方が絶対に強い!
「お前の魔法で俺をあそこまで飛ばしてくれ!」
◇
・・・・・・・・・はっ?
最初は兄貴の頭がおかしくなったのかと思った。風魔法の多くは敵を吹き飛ばすのが目的だけど、味方に「敵目掛けて吹き飛ばしてくれ!」なんて言われる日が来るなんて普通は思いもしねぇよ…。
しかも、ただ向こうへ飛ばす訳じゃねぇ…兄貴はきっとドームにぶっ込むつもりだ!いくら亀裂が入ってるとは言え土壁に自ら突っ込むなんて普通なら骨折どころじゃ済まない…まさかこれが『自己犠牲』ってやつか?
常人の俺にはとても理解出来きないが、英雄になる為に必要な思考ならば、俺もその領域まで行かなきゃならないッ!
「よ、よしっ、分かったぜ兄貴…俺が、俺がきっちり彼処までぶっ飛ばしてやる!」
◇
迫り来る筋肉、もう一刻の猶予も無い!バルト達に説明してる暇も無いっ!と言うか、アレをどう説明したら良いか分からないっ!
「ア、氷盾アイスシールド!氷盾アイスシールド!氷盾アイスシールドぉ!」
アルマは無我夢中でシールドを張りまくる!咄嗟に氷盾アイスシールドを出せたのは奇跡だ!しかも連続での氷盾アイスシールド3枚もの顕現はアルマの中では自己最多であった。
(凄いっ新記録やん!いや、それどころちゃうわっ!)
頭を両腕で庇い身を守る様に身体を小さく丸めてその場にしゃがみ込んだーー直後ッ!
ーーーズドォンッ!ガシャガシャンッ!!
鈍い低音と鋭い硝子が割れる様な高音がほぼ同時に耳に到達する。衝撃と共にアルマの丸まった身体はゴム毬の如く近くに居たバルトを巻き込み背後の土壁に向かって弾け飛んだ!
「なっ…グエッ!」
ーーードガッ!
アルマとバルトは土壁を突き破ってドームの外へと弾き出された。
「い…痛っ…」
既に亀裂だらけだったドームが最初の衝撃により脆く崩れるのと同時だった事と即席ではあるが咄嗟に張った氷盾アイスシールド3枚、そして後に居たバルトが土壁とのクッションになったお陰で、派手に飛ばされた割にはダメージは思ったよりは少ない。
「グウゥ、お、おいッ!アルマ大丈夫か?一体何が…」
バルトはあの僅かな時間で自分と土壁の間に圧縮した風を作り衝撃を軽減させていた。分隊長に抜擢されたのは伊達じゃ無い。
が、ダメージはアルマより上だ。アルマと違い心構え無く急に挟まれたのだ、骨は兎も角…腹の中が気持ち悪い…
「な、何だ…これは…」
これまでの戦いで数々の攻撃を防いできたサリュの蜃気楼ミラージュとドルニスの土壁アースウォール、『鉄壁のバルト分隊』と呼ばれた難攻不落の壁が、ただの一瞬で砂山と化してる。一体どんな攻撃を受けたらこうなると言うのか…。
「あ、アイツや!アイツが阿呆みたいなスピードで飛んで来たんやッ!」
砂煙がもうもうと立ち込める中、陽炎のようにゆらりと立ち上がる屈強な影。グッタリとしたドルニスの襟首を掴み片手で引き摺り上げると不敵に笑う。
「て、テメェ!その手を離しやがれッ!」
アイツはドルニスを掴んだまま、もう片方の腕をこちらに伸ばして手の平を向ける。そして小声で何かを呟いているっ!?
「あかんっ、詠唱しとるっ!?」
「チッ、伏せろアルマッ!」
クソッ、完全に予想外だっ!あの野郎、魔法使えるのかよっ?
・・・・・・・・?
一向に到達しない攻撃…おかしい、アイツは何か魔法を放とうとしていたはず…
(もしやアイツもジョルクと同じクチか?それならっ)
ーーー慣れぬ詠唱はジョルク並みに遅いってか?
ガバッと地面に伏せた身体を起こし、素早く詠唱を唱えようとしたその時、バルトの顔を大量の砂が襲う!
ーーーザバッザバッザバッ
「うげっ!ペッペッ…野郎っ、俺が顔上げるタイミングを見計らって攻撃を!?」
「きゃあ、目がぁ!目がぁ!」
目を擦り顔に付いた砂を払って見上げた先には、後ろ向きで四つん這いになり両手で砂を掻き分けるアイツの姿があった。
ーーーなっ、魔法…じゃねぇっ!?
あの野郎、まるで犬がトイレを終えた後みたいに俺達に向かって砂をかけてやがったッ!俺達は犬の糞と同じってか!?
「~~~~ッ!ここまで、コケに、されたのは、生まれて初めてだっ!」
も~ういいッ!分隊長?責任?関係あるかッ!
アイツには、魔法なんかじゃ駄目だ!殴ってやるッ!そうだッこの拳が砕けるまで殴り続けてやるッ!
最下位と見下してた奴らに自慢の鉄壁は砕かれ、仲間も倒れた。もうプライドはズタズタな上に犬の糞扱い!元々短気なバルトが怒りに我を忘れるには十分過ぎる屈辱だった。
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