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20・「名取り訓練」
しおりを挟む(カイルの野郎、何が『気楽にやりゃいいさ』だよ。めちゃめちゃ本格的じゃねーか!)
聞けば今から森の中を一週間サバイバルするらしい。装備品の確認や作戦会議、他の分隊を見定めたりと皆バタバタ準備を始めている。
さっき隣で色々教えてくれた良い人は残念ながら別のグループだった…実は俺、まだ難しい言葉は理解出来ないので助かった。あっ、こっち見てるな、手でも振っておくか!
俺は何処に行けば?…と周りを見渡すと忙しなく動き回る集団の中、なんだか動きの悪いグループが目に入る。
何やらブツブツ言ってるメガネ君と頼りない笑顔を見せる青年、その後ろに隠れる様におかっぱ頭の女の子が立っている。一分隊五人って言ってたから多分アレが俺の分隊かな?
「よぉ!お前だろ?最近噂になってる奴って、なぁ?」
急に後から肩を叩かれて心臓がドキリと跳ね上がる。肩を叩かれるとドキドキしちゃうのは、肩叩き文化リストラがある日本人特有の反応だよな。
「俺はジョルクだ!同じ分隊って事は凄い残念だけどなっ・・・まぁいいや! 早く行こうぜ!」
・・・・・・何だろう、ナチュラルに侮辱された感があるけど、まぁ安心した。「今から5人グループを作って下さい」とか急に言われたら絶対ボッチになる所だった。最初からメンバー決まってるって最高だな!
「えー、アイツ入れるのぉ?」「悪いけど満員なんだわ」「ムリムリムリ絶対ムリ!」「・・・・せ、先生とやろうか、なっ?」
ーーーはっ! 何か今、悲しい走馬灯が・・・・
感傷に浸る俺の背中を、ジョルクは半ば強引に押しながら分隊へと連れて行く。
(それにしても噂?まぁ確かにこの鍛えられた筋肉なら噂になっても仕方ないか。いや、まさかっ…ツルツルの方じゃ…無いよな…)
クリミアは言わなそうだけど、ウルトは…すげぇ言いそう!いや、アイツは友達居ないから大丈夫か。
と、兎に角、最初は肝心だ、まずは元気に挨拶!ここは俺の営業スキルの出番だな!
「初めまして!訓練自体は初めてですが、チームの潤滑油になれる様頑張ります!」
「・・・・・・最悪だ…」
おいっメガネ!初対面に『最悪』はないだろう?俺は魔法は無効化するけど言葉の暴力までは無効化出来ないんだぞ…。
「あはっ、僕はヨイチョよろしくね。後ろに居る女の子はナル、ちょっと人見知り激しくてさ…ほらっ、ナル?」
「こ、コッコッコッコッ コンコンコンコンチワー」
鶏からキツネに進化した!?そんなに緊張されるとなんだか申し訳無く思えてくるよ。
「よし、メンバー揃ったし速攻で行こうぜ!なぁ!」
「速攻?無謀にも程がありますよ!ちゃんと戦力分析して対策を練ってから…あぁもう、何故私がこんなメンバーの中にいるのですか?ほんと最悪だ…」
「あはは、まぁまぁヘルム。そう言わずに頼むよ、ジョルクは体が先に動くタイプだからさ」
「何が頼むよですか!人に頼む前に少しは自分が動くべきでしょう?こんな事もわからないなんて貴方も最悪ですね!何でもかんでも人に頼るのは…いや貴方に言っても仕方ないですね。やはりここは私が計画を立てて皆を導かなければ…何ボーっとしてるんです?暇なら貴方はそこのデカいのにルールでも教えて下さい!」
あー、メガネ君は全方向に敵を作るタイプだな。昔やってたFPSゲームで良く見たわ、他者の意見は聞かずに自分の意見だけを押し付けて失敗すると周りを無能呼ばわりするヤツね。大抵VCボイスチャットで暴言吐いてブロックされるんだよなこのタイプは。
「あはは、何かゴメンね?えっと…じゃあ、まずは確認するよ?今回の戦闘訓練は僕達の中じゃ『名取り訓練』って言ってるんだけど…えーと、君は多分知らないよね?」
「残念だけど全く知らない」
「そ、そう。じゃあ説明するね、『名取り訓練』はゴール地点にある拠点を占拠するのが目的なんだけど・・・・・」
各分隊毎に森の中へ散開し、合図と共に一斉に拠点を目指す。訓練終了時点で拠点を占拠していた分隊が勝ち。
道中の他の分隊敵の捜索、妨害は自由。他の分隊敵を戦闘不能にした場合は、相手の持っている『名札』を回収する事で後にそれが個人点となるとヨイチョが親切丁寧に教えてくれた。
『名札』を取るから『名取り』なのね。ただ、個人点よりは拠点を占拠して貰える分隊点の方が評価的には重要との事。そりゃそうだ、軍隊ってのはチームプレイが大事だからな。
何も分からない俺にもちゃんと解るように説明してくれるヨイチョ、見た目が頼り無さげなのに今の所一番頼りがいがある!
「戦力把握するのに君の得意な魔法系統とか教えてもらっても良いかな?…あと君の装備が届いてるよ、ちょっと特殊っぽいけど…」
そういや、今回の訓練用にとカイルから俺専用の装備があると言っていたな。単純に俺に合うサイズが無かったので新たに作ったとの事。
どれどれ…ふーん、見習い団員は黒い軽鎧で統一してるんだな。基本的な形は皆と一緒だが、金属部分が多く重厚感がある、見た感じ10kgくらいか。あと装備品としてタワーシールドが支給された。シールドは長方形でしゃがめば体が丸々隠れる大きさだ。
…成る程ね、俺はタンク盾役って事か。
そうだな、俺は大概の魔法は無効化出来るらしいし、体力と力があるのだから重装備で防御力重視にしたんだな。
「あはは、カッコいいね!でも重そうで僕には装備出来そうにないねソレ」
「なんですかその装備は…貴方それ着てちゃんと歩けるんでしょうね?貴方のせいで移動が遅れるのは許容出来ませんよ、折角立てた予定が狂ってしまうんですからね!」
ヘルムは呆れた様に文句を言って来るが、それは君の団長に言ってくれよ。多分、これ考えたのビエル団長だから。
「んで、お前って魔法は何系統よ、なぁ?」
「ジョルクとナルは攻撃、ヨイチョは補助で私は回復なので、バランス的には土か氷が良いですね。移動系魔法だと最高ですが…まぁ貴重ですしそれは期待はしてません。最低でも攻撃系の~」
「あーゴメン!俺まだ魔法使え無いんだよね…」
「・・・・・本当に最悪だ…」
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