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6.魔女セラフィーナ

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 大魔女がシッシッと手で掃く動作をしてみせると、オリヴァの姿態を堪能した彼女たちは笑いながら部屋を出て行った。だが、まだ一人だけ何故か残って、オリヴァの前に立っている。美人ぞろいの魔女たちの中でも、ひときわ目立つ容姿をしていた。いずこかの王女のように気品高く、エメラルドの瞳が好奇心に瞬いている。オリヴァの中で、恐怖が芽生えた。

 彼女の白魚のような指が、あろうことかオリヴァの屹立した亀頭に伸ばされる。最近のオリヴァは女性のように射精を伴わずにイクことが多くなった。イった直後は身体が敏感になって、弱いところを刺激されると連続してなかで達してしまう。女性のようにいくのは気持ちいいけれど、波が引いた時の罪悪感が半端ないのだ。正直、触られたくない。
 声を出して助けを呼ぼうにも、触手に喉を塞がれてしまっている。

 ――アクセリア!

 オリヴァはぎゅっと目をつむって、心の中で叫んだ。

「セラフィーナ、触るんじゃないよ」

 アクセリアはペンで耳の下を搔きながら、注意する。セラフィーナと呼ばれた金髪の魔女は、ぷうっと頬を膨らませた。

「お師匠のケチー! 少しぐらいいいじゃないですか! わたしだって、一度くらいはエド以外のおちんちんを触ってみたいんです。他の魔女みたいに、男をとっかえひっかえする恋多き女になってみたいんですよ!」

 二百年分の愚痴を垂れるセラフィーナの頭をアクセリアは、珍しく撫でる。

「あんたの伴侶は人一倍、嫉妬深いんだ。今、あいつに暴れられでもしたら、この城は消し炭になってしまうよ。第二の故郷を失いたくないなら、あんたも分かっておくれ」

 すると、セラフィーナはふくれっ面から一転、ははーんといたずらっ子のような表情を忍ばせた。

「この触手の動き、そうとう細かいですよね。それに一、ニ、三……五十本はありそうだから、かなりの量の魔力を使うんじゃないですか? 早くこのおじさんとエッチしないと、大魔女のお師匠でも干からびちゃいますよ」

 自分の話が出て、オリヴァはぼんやりとアクセリアを伺った。あれから三週間は経っているが、彼女はオリヴァを触手で犯すだけで自分自身では決して彼に触れようとはしていない。

「昔も今も、一言多い子だね。ぐずぐずしていると、エドヴァルドが迎えに来るよ」
「はぁーい。またね。修道士様! あなたとは、長い付き合いになりそう!」

 勝手知ったる城とばかり、美女は部屋の窓を開けて、嵐のように去って行った。

「あの子たちは見た目こそ若いけれど、あんたより少なくとも二百年は余分に生きている。ドライオーガズムを見られたからってあんまり落ち込むんじゃないよ」

 口から触手を抜いたあと、アクセリアは今日も今日とてぜーぜーと息を吐く男に声をかける。

「おまえが解放すればいいだけじゃないかっ! 気持ち悪い慰め方をするな!」
「それだけ口が元気なら、問題ないね」
 
 呆れて言葉も出ない。この女には何を言っても無駄だ。ただ、屈辱的な生活の中でも見えてくることがある。

 ――この城では、男より女の方が立場は強いようだ。

 オリヴァの中にあった女性蔑視の考えは、跡形もなく消えてしまった。人間は置かれた環境に左右されるだけであって、男女の優劣は存在しないのだ。少なくとも、この城の中では男より女の方に力があり、はるかに優遇されている。
 オリヴァの身に振り返って、自分を捨てた母の気持ちはよくわからない。ただ、母が自分を捨てたのは、彼女が弱い女性だったからではない。
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