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11.首絞め※

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 オリヴァは非情な欲求に身を任せ、魔女の膣にずんっと己を収める。ブチン、と何かが切れる音がした。やはりなかは濡れておらず腰を動かすたびに、アクセリアは歯を食いしばって痛みに耐えている。オリヴァは欲の解消にかこつけて、アクセリアを苦しめた。微かな鉄の匂いが鼻孔をくすぐり、その正体に気が付いたオリヴァの顔に残忍な笑みが広がった。

「俺が受けた屈辱は、こんなものじゃなかった」
「わたしは、……あんたにこれが屈辱だと思われていることのほうが、屈辱だね、……くぅ……っ!」
「わからんことを」
「あ……ふっ、うぅ……っ」

 魔女が苦しそうなのは、最初だけだった。オリヴァが二、三回突くと膣奥から愛液がにじみ出て、出し入れがしやすくなる。アクセリアの固まっていた足の指から、力が抜ける。

「あぁ……っ、はぁ、はあ……、ああっ――……!」

 声にも艶が出て、吐息が甘くなってきた。膣の締め付けに強弱がつき、愛液の温みと潤いを伴って絡んでくる。
 
「あああ……っ! ああぁぁっ――」

 最奥まで一気に突くと、アクセリアの背中がのけぞった。ふと視線を追えば、彼女の視線は白髪の老人の肖像画に向けられている。この視線を自分にだけ向けさせたい。オリヴァはアクセリアの黒いドレスのストラップを両方外す。白く輝く豊かな乳房がぷるんっと震えた。オリヴァにとって生まれて初めて見る女性の胸だった。
 
 ――卑猥だ。実に卑猥だ。

 また一突きすると、双丘がバウンドした。オリヴァは取りもとりあえずそれを掴みたくなった。白くて、柔らかくて、温かい。寝ても垂れない乳房は手に吸い付くようにきめ細やかで、揉むと指がめり込む。
 ピンク色の乳輪の先が勃っていて、オリヴァには悪魔の誘惑のように感じた。たわわな胸を掴んで先端を際立たせると、しゃぶりつく。何も出ないことはわかっているのにちゅうっと吸いあげると、なぜか心が満たされた。

「あんっ、あぁ……っ、オリ、ヴァ……ッ! まって、はげし……っ」

 アクセリアの焦った声が小気味よくて乳房にかじりつくと、ぎゅううと膣襞が絞り込んでくる。

「やっ、んっ、痛いのに……気持ちぃっ……――、オリヴァ……ッ」

 オリヴァは女の悦ばせ方など知らない。相手を悦ばせようという気が一切なく、知っている体位は正常位だけだった。性欲に身を任せ白い肌を噛み、双丘を蹂躙しがむしゃらに腰を振るう。なのに、この魔女はまるでオリヴァの蛮行を正当化し、称えるかのように恍惚とした表情を見せる。
 アクセリアの美しい脚が自分の武骨な上半身を包み込む。その感触だけでオリヴァは果てそうになった。局部からぞくぞくとした甘い震えが全身に広がる。
 
「あ……んっ、オリヴァ、なかまで、……あんたが、くる……よっ」
「くぅ……っ!」

 アクセリアはもう、歓喜にまみれた顔しか見せない。ふと、目の前の細い首が目に入った。
 この女はオリヴァに女淫の罪を犯させ、男の尊厳を破壊して恥辱を与え、挙句の果てに彼が固く閉ざして鍵をかけておいた心の闇を暴き出した。だというのに、彼女は自分を放置した。憎い女だ。挙句に四百年も違う男のことを思っている。

 ――グットルム二世を優しい目で見るな。恋焦がれる乙女のような顔をするな。

 確信があった。ここで首を絞めれば、彼女は死ぬだろう。力を入れようものなら、魔女は絶命するだろう。親指で気管を絞めれば、窒息死する。オリヴァは自分にやれと命じた。
 濡れたアクアマリンの瞳が、こちらを凝視していた。オリヴァは確信を持った。魔女はオリヴァの気持ちを理解したうえで、それを甘んじて受けようとしている。バカな女だ。自分に殺されてもいいなんて、どうして思えるのだ。

 ――殺せない。

 オリヴァは喉をつぶす代わりに、アクセリアの朱唇を奪った。首に腕が回され、引き寄せられる。舌を入れると、すぐに絡み取られる。

「んん、……んっ、はぁっ」

 至近距離でお互いを確認する。魔女のアクアマリンの瞳には星のような輝きと自分の惚けた顔が映っていた。
 
「まだ、したいかい?」
「……ああ」
「じゃあ、手はこっちだよ。そう」

 オリヴァの手が、アクセリアの頸動脈に導かれる。

「ゆっくり絞めて?」

 言われるままに押す。親指は力が入りすぎるので、使わなかった。ゆっくり圧を強めてくると、魔女は苦しそうな顔をする。

「ふぅん……、はぁ……っ」

 まかり間違えば、死んでしまうというのに。アクセリアはこんなにオリヴァのことを信用している。訳が分からなかった。やがて陶酔状態に入ると、魔女の双眸は潤いを帯び、頬は赤く色づき、唇はオリヴァを求めるかのように半開きになっていた。
 オリヴァはその美しさに見とれた。

「く……ぅ」

 膣が急激に締まって、オリヴァの萎えかけていた男根が再び固くなる。獣になりきり、女を貪る。魔女の頸動脈を押しながら、命が途絶えるぎりぎりのところになったら、指を放す。その度にペニスを蜜襞が締め上げてきて、オリヴァは生きながら天国を見た。

「はぁ……っ!」
「オリヴァ……、……ああああん……――っ!」

 営みが終わり手を放した途端、アクセリアは体を丸めゴホッゴホッとむせた。気が付けばその背中をさすっている自分がいる。
 オリヴァは虚脱感に襲われ、何もする気にならなかった。ぐったりと横たわるアクセリアを金色の髪をかき上げ、自分の腕のなかに閉じ込める。

 ――眠い。
 
 眠る直前、懐から女が顔をのぞかせる。

「わたしを殺すんじゃなかったのかい?」
「……知らん」

 オリヴァは自分のなかのあらゆる感情に名前を付けることを放棄して、目を閉じた。
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