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番外編

85.林哲海商会(12)

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 かつて自分で贈った藤色の褙子うわぎを肘まで脱がして、薄墨色という若い女性が着るにはいささか堅苦しい嬬のまえを開く。彼女の唇を丹念に味わいながら、鳥の子色の胸帯をめくりあげた。柔らかな乳房と真っ赤な乳頭が押しだされている様は、ちまたにあふれる春画を凌駕するほど艶めかしい。

「ふぅ……、はぁ……」

 天女の衣をぐ。それが、この世に自分だけが許された行為かと思うと、ぞくぞくする。なかでも一番魅惑的な首筋に舌を這わせては吸いつき、赤い小花をいくつも咲かせた。

「はっ、あぁんっ……あ、あ……っ」

 嬌声をもらすまいと、口に袖を押しつける妻の乳房を甘噛みする。桜色の乳首を舐めるとだんだんと硬くなってきた。舌で転がすと、コリコリとして飴のよう。彼女に見せつけるように、目を合わせたままそれを吸い込む。
 
「いや……っ、それ……っ、恥ずかしいから……っ」

 真っ赤な顔で瞳を潤ませているのが可愛くて、あえてしつこくしゃぶってみせた。形よくきめの細かい乳房は手のなかでたぷんと弾み、彼をどこまでも許し、受け入れてくれる。袴の膝は土にまみれていたが、今の浩海ハオハイにはそんなことはどうでも良かった。
 
浩海ハオハイさん……っ、だめ……っ、声出ちゃう」 
「この時間は夕餉の準備で忙しいから、誰も気づかないよ。お義父さんたちも、日が沈んだら正房の外には滅多に出ないし」
「んん……っ、ふ……、だめ……っ」

 左手で乳房を丹念に揉みながら、縦に伸びるへそを舐めあげ、右手で下穿きをはずす。むしりとってすぐにもハメたいのが本音だが、ガツガツしすぎだと彼女に軽蔑されたくない。太腿のあわいをたどれば、ぬちゅっとした愛液が指に絡みついてきた。

「準備は万端だね」
「んっ、あっ。……あんっ、ちが……っ」
「かわいい」

 浩海ハオハイは、ぬめった人差し指を舌でぬぐった。それを見て言葉を失い、真っ赤な顔を背ける妻の反応が、また彼を熱くさせる。

「さ、さいごまで、ここで……するの?」
「もちろん、一週間も我慢したんだよ」

 溪蓀シースンは寝台で、正常位か後背位で抱かれることしか知らない。そろそろ色々な楽しみ方があることを教えてもいい頃だろう。肌を合わせるたびに感度を高める彼女が今日はどんな媚態を見せてくれるのか、楽しみでたまらない。袴をほどいてから、向かい合わせに溪蓀シースンの両尻を抱き上げると、彼女が慌てて袖をつかんでくる。

「やだっ、何を……、浩海ハオハイさん……っ」
「大丈夫、ちゃんとつかまっていて」
「やぁ……、ああんんんんっ」

 夕闇の厩舎に、甲高い嬌声が広がった。溪蓀シースン自身の重みで浩海ハオハイの男根が彼女の蜜壺を深くえぐる。快楽が浩海ハオハイの脳天まで貫いて、思わず厩舎の天井を仰ぎ見た。

「は……っ、一気に入っちゃったね」
「……これ、おくまで……っ、いやぁ……っ」

 許容しきれない官能の波から逃れようと、彼女の腕が浩海ハオハイの首に回される。細い脚が官服の腰に必死に絡みついてきて、ひどく興奮した。

「いい子だね。しっかりつかまっていて」
「んんんっ、やっ、あん……っ」

 彼女より早く達してしまわないか、正直不安だった。溪蓀シースンは繰り返される上下運動に裸身をしならせ、何度も浩海ハオハイの名前を呼んだ。
 気持ちいい。愛おしい。
 彼が感情のままに腰を振れば、二人の交わっている場所からぐちゅぐちゅといやらしい水音が立った。夢中で彼女の唇に覆いかぶさって、口腔深く舌をからめる。むき出しの乳房が官服に押し付けられ、じかに肌を擦り合わせたい欲求がつのる。浩海ハオハイは代わりに彼女の尻たぶを揉みこみ、その柔らかさに酔いしれた。

溪蓀シースン、……すごく、いいよ。最高」
「……んあ……っ、はぁん……っ、ふ……っ」

 濡れた黒真珠のような瞳がまたたいて、自分を求めてくる。まっすぐで勝気だけど、ときおり脆くなる性格もすべて、浩海のものだ。誰にもやらない。
 眼に掛かる髪の毛を払ってやろうと息を吹きかけたら、ビクンッと膣がしめつけてきた。

「……くぅっ、はぁ……っ」
「あぁん……っ、いやぁ……、あ、あんっ」

――うわっ、感度抜群。しぼりこんでくる……っ。

 問答無用で達かされそうになるのをなんとかこらえて、大きく息を吐く。余裕なんて米粒一つ分もなかった。
 溪蓀シースンの薄い腹が緑色の官服にこすられる。厩舎のひめごとで片付けるには彼女の嬌声は刺激が強すぎるし、二人が何をしているかなんてそれだけでわかってしまう。それでも、止められない。
 
「くぅ……っ」
「……はっ……っ、達っちゃう……っ、あああ……っ!」

 膣奥で熱い欲望が弾けた。愛しい女性におびただしい量の精液を流し込み、浩海ハオハイは深い官能の海に沈み込む。最後に一、二回腰を振ると、それすら搾り取るように蜜壺がうねってきた。溪蓀シースンの身体は想像していた以上に快楽に従順で、天女を堕としたような征服欲に満たされる。

「……はっ……」

 浩海ハオハイは、激しい虚脱感にずるずると地面に座り込んだ。同じくすっかり力の抜けた彼女を強く抱きしめる。簪のずり落ちた髪に接吻しながら手櫛で整えていると、どうしようもないほどの愛しさが浩海ハオハイの胸に広がった。

※※※※※※

 くったりとした溪蓀シースンを抱き上げるとき、巾着袋から何かが滑り落ちた。膝の上で彼女を支えて、それを拾い上げると見慣れぬ布袋、触った感触からかんざしだとわかる。送り主は想像がついたが、深く考えないようにした。

 東廂房に入ってまもなく、侍女の明明メイメイが湯のはったたらいを運んできた。ありがたいことこの上ないが、十三歳の紅顔はこちらに向けられることなく、動きもぎこちない。使用人の誰かが厩舎のひめごとに気がついて、少女に耳打ちしたようだ。

――このこと、溪蓀シースンには黙っておいた方がいいな。

 知ってしまったら最後、屋敷の秩序を乱すからと、もう二度と外でさせてくれない。四合院のなかの厩舎は外なのか微妙だが、天下泰平とはいえ北都ベイドゥもそこまで治安がいいわけではないのだ。
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