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第三章
66.消毒(2)※
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桜色の蕾を強調するように押しだされ、指先でその周りに円を描かれる。男の手は乳房全体を包みこむほど大きかったが、決して彼女の敏感な処に触れなかった。鈍い快感にシーツを蹴りながらも、決定的な刺激を与えられなくて、乳房の先が痛いほど主張する。
――……なにかが足りない。すごく、もどかしいの……っ
「浩海、さん、あの……」
「なあに? 溪蓀」
浩海の晴れやかな笑顔は、彼女の言わんとすることを確信していた。
――こっちは恥ずかしくて、言えるわけがないのに。……意地悪な人、わたしの反応をみて愉しんでいるの。
彼の方が年上で経験豊富だからといって、悔しい。涙目でねめつけると、浩海は相好をくずした。
「その顔だけで、イケそう」
「ああん……っ」
茱萸のように硬くなった先を吸われて、腰が跳ねる。彼の愛撫は執拗だった。片方の乳頭を舐めまわして吸いあげ、唾液で淫靡に潤わせる。もう片方は長い指で摘まんで延ばしたりひねったり、爪の先で弾いたりといじくり、愛する女性の官能を急速に高めようとしていた。彼女が身をよじらせて、切なく息を吐くと、男は嬉しそうに口角を上げる。
彼女は仕上げとばかりに乳首を強く吸われ、ピリリとした甘い痛みに腰を跳ねさせる。
「あ……っ、はぁ……っ、んっ」
喘ぐ声が止まらない。溪蓀は初めて感じる快感から逃れようと、浩海のこめかみにすがった。こげ茶色の長い髪が指を滑って、流れていく。その手触りが気持ち良くて無意識に撫でていると、浩海のどこを刺激したのだろうか、動きがにわかに激しくなった。
「あんっ!」
浩海は大きく乳房をくわえ、音を立てるほど吸った。手はゆるやかに胸を離れ、腰の細くなったところを堪能し、ついには下帯のなかへと侵入する。
溪蓀の頭のなかはぐちゃぐちゃで、何が何だか分からない。だから、浩海が彼女の下帯を解いて蝋燭の灯りにさらしても、ろくに抵抗できなかった。布と秘所が合わさった箇所が愛液でぐちゃっと濡れているのが、まるで粗相をしたよう。恥ずかしくてたまらない。自分の秘所など覗き見たことがなく、今彼が目にしているものがどんな状態かも分からないのだ。
彼は、感慨深げに息をもらした。
「やっと『触れられぬ花』にさわれるね」
女性器を花に見立てる生々しい発言に、溪蓀はかっと顔を赤らめて夫から視線を外す。
「はぁ……、い、いやらしい人ね、信じられないわ」
「夫が妻に欲情するのは、自然なことだよ。溪蓀の秘密の場所、桃色で初々しい。夢にまで見るほど欲したよ。――やっと、僕が手折ることができるんだね」
熱に浮かされた恍惚とした表情。待たすにも待たされるにも五年は長すぎて、少なからぬ狂気をお互いに産んでいる。浩海は潤みきった秘所に指を這わせ、こり固まった花芯を摘まんだ。すっかり過敏になった秘処への刺激は、急速に彼女を快楽の高みに引き上げる。
「あっ……、やめてっ、そこ、変だから……っ」
「可愛いね。腰が動いているよ」
彼の、身を焼くような情熱が甘苦しくて、逃れられない。何度も秘裂をこすられると、潤滑油みたいに愛液が湧いてくる。浩海は出てきたものを指に絡め、しとどに濡れた蜜壺にゆっくりとうずめる。
「ひんっ! ……やぁ……っ」
ぐちゃぐちゃと聞くに耐えない水音が耳を打つ。はしたないと思いつつ、溪蓀は喘ぎ声をおさえられない。
「締まりがきつくなってきたね。イキそう?」
熱を帯びた浩海の声が、束の間彼女を正気に戻す。快楽に溺れた頭は熱くてもやがかかったようにおぼろ気だ。男は指一本で彼女の膣壁をなぞり、円を描き、彼女の身体も頭も蕩けさせる。
――いきそう? どこへ? ああ、でもなにか、きちゃう‥‥‥っ。
「やぁ……、ああぁっ!」
快感の極みにビクビクと腰が跳ね、しなやかな足が反り返る。生まれて初めて味わう絶頂。
「はぁ、はぁ」
打ち寄せていた波が引くように、だんだんと意識が鮮明になってくる。口の端に接吻され、ぼんやりと目を開いた。
「いまの何?」
「イったんだよ。気持ち良かった? 溪蓀」
秀麗な顔でにこにこと尋ねられて、恥ずかしさで枕に顔を伏せる。
返事もしないでしばらく頭を伏せていると、浩海が彼女の髪を撫でてきた。その手は優しさに満ちていて、溪蓀が機嫌を直して顔を見せてくれることをずっと待っている。彼がどんなに溪蓀を愛しているのか、伝わってくるのだ。
――わたしのために、名前を変えて仕官して。それから、わたしの家族の面倒をみてくれた人。
一度も会えなくとも五年間、想い続けた。今日という日を迎えて、それが正しかったことも証明された。彼に身を捧げるのに、何を不安に思うことがあるだろう。
「好きよ、世界中で一番、あなたが好き」
――……なにかが足りない。すごく、もどかしいの……っ
「浩海、さん、あの……」
「なあに? 溪蓀」
浩海の晴れやかな笑顔は、彼女の言わんとすることを確信していた。
――こっちは恥ずかしくて、言えるわけがないのに。……意地悪な人、わたしの反応をみて愉しんでいるの。
彼の方が年上で経験豊富だからといって、悔しい。涙目でねめつけると、浩海は相好をくずした。
「その顔だけで、イケそう」
「ああん……っ」
茱萸のように硬くなった先を吸われて、腰が跳ねる。彼の愛撫は執拗だった。片方の乳頭を舐めまわして吸いあげ、唾液で淫靡に潤わせる。もう片方は長い指で摘まんで延ばしたりひねったり、爪の先で弾いたりといじくり、愛する女性の官能を急速に高めようとしていた。彼女が身をよじらせて、切なく息を吐くと、男は嬉しそうに口角を上げる。
彼女は仕上げとばかりに乳首を強く吸われ、ピリリとした甘い痛みに腰を跳ねさせる。
「あ……っ、はぁ……っ、んっ」
喘ぐ声が止まらない。溪蓀は初めて感じる快感から逃れようと、浩海のこめかみにすがった。こげ茶色の長い髪が指を滑って、流れていく。その手触りが気持ち良くて無意識に撫でていると、浩海のどこを刺激したのだろうか、動きがにわかに激しくなった。
「あんっ!」
浩海は大きく乳房をくわえ、音を立てるほど吸った。手はゆるやかに胸を離れ、腰の細くなったところを堪能し、ついには下帯のなかへと侵入する。
溪蓀の頭のなかはぐちゃぐちゃで、何が何だか分からない。だから、浩海が彼女の下帯を解いて蝋燭の灯りにさらしても、ろくに抵抗できなかった。布と秘所が合わさった箇所が愛液でぐちゃっと濡れているのが、まるで粗相をしたよう。恥ずかしくてたまらない。自分の秘所など覗き見たことがなく、今彼が目にしているものがどんな状態かも分からないのだ。
彼は、感慨深げに息をもらした。
「やっと『触れられぬ花』にさわれるね」
女性器を花に見立てる生々しい発言に、溪蓀はかっと顔を赤らめて夫から視線を外す。
「はぁ……、い、いやらしい人ね、信じられないわ」
「夫が妻に欲情するのは、自然なことだよ。溪蓀の秘密の場所、桃色で初々しい。夢にまで見るほど欲したよ。――やっと、僕が手折ることができるんだね」
熱に浮かされた恍惚とした表情。待たすにも待たされるにも五年は長すぎて、少なからぬ狂気をお互いに産んでいる。浩海は潤みきった秘所に指を這わせ、こり固まった花芯を摘まんだ。すっかり過敏になった秘処への刺激は、急速に彼女を快楽の高みに引き上げる。
「あっ……、やめてっ、そこ、変だから……っ」
「可愛いね。腰が動いているよ」
彼の、身を焼くような情熱が甘苦しくて、逃れられない。何度も秘裂をこすられると、潤滑油みたいに愛液が湧いてくる。浩海は出てきたものを指に絡め、しとどに濡れた蜜壺にゆっくりとうずめる。
「ひんっ! ……やぁ……っ」
ぐちゃぐちゃと聞くに耐えない水音が耳を打つ。はしたないと思いつつ、溪蓀は喘ぎ声をおさえられない。
「締まりがきつくなってきたね。イキそう?」
熱を帯びた浩海の声が、束の間彼女を正気に戻す。快楽に溺れた頭は熱くてもやがかかったようにおぼろ気だ。男は指一本で彼女の膣壁をなぞり、円を描き、彼女の身体も頭も蕩けさせる。
――いきそう? どこへ? ああ、でもなにか、きちゃう‥‥‥っ。
「やぁ……、ああぁっ!」
快感の極みにビクビクと腰が跳ね、しなやかな足が反り返る。生まれて初めて味わう絶頂。
「はぁ、はぁ」
打ち寄せていた波が引くように、だんだんと意識が鮮明になってくる。口の端に接吻され、ぼんやりと目を開いた。
「いまの何?」
「イったんだよ。気持ち良かった? 溪蓀」
秀麗な顔でにこにこと尋ねられて、恥ずかしさで枕に顔を伏せる。
返事もしないでしばらく頭を伏せていると、浩海が彼女の髪を撫でてきた。その手は優しさに満ちていて、溪蓀が機嫌を直して顔を見せてくれることをずっと待っている。彼がどんなに溪蓀を愛しているのか、伝わってくるのだ。
――わたしのために、名前を変えて仕官して。それから、わたしの家族の面倒をみてくれた人。
一度も会えなくとも五年間、想い続けた。今日という日を迎えて、それが正しかったことも証明された。彼に身を捧げるのに、何を不安に思うことがあるだろう。
「好きよ、世界中で一番、あなたが好き」
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