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転生〜ロッカの街
第18話 そしてドライエント王国へ・・・
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冒険者ギルドを出た俺たちは、裏路地の奥のさらに奥、ゴンザさんのねぐらへ向かった。
「戻りました」
待っていたゴンザさんとフィズ、リリアにそう声を掛けると、その場に馬車を出現させる。
ベッドの部品が既に完成していたので、中で組み立てをしてもらうのだ。
早速小部屋に設置してもらおうと、馬車に乗り込んで右側の扉を開けると目の前には——廊下があった。
廊下を挟んだ右側に二つ、左側に三つ扉が見える。
「んんっ?」
驚きつつも確認してみると、増えた扉の向こう側は全て前にあった部屋と同じような小部屋になっていた。
急に部屋がなくなったのは驚いたけど、こうやって急に部屋が増えたのは初めてじゃない。
あれはまだ二人の勇者を乗せてた時だったか。
つまりあの時みたいにまた馬車が進化……いや、増築したということだろうか。
「なんだぁこれは!?」
最後にベッドの部品を運び入れてきたゴンザさんが声を失っている。
「部屋が増えてやがるじゃねえか……じゃあこいつぁどこに運べばいいんだぁ?」
「ああ、えっと……じゃあ奥の右側の部屋でお願いします」
そういうとゴンザさんは頷いて、部品を運んでいく。
「とりあえずあそこの部屋を俺の部屋にしようと思う。みんな分の部屋もありそうだけど、どうする?」
「フィズはご主人さまと一緒が……いい」
「私とジャックには必要ありません」
「そうか。ローズとジャックが要らないなら……残りはお客さんの部屋にでもするか。リリアは俺の隣の部屋でいいか?」
俺がそう聞くとリリアは驚いたような顔をした。
「私がお部屋を使わせて貰ってもいいのですか?」
「もちろんだよ、お客さんなんだからさ。ただ、部屋の中には何にも無いんだけど……」
「おお、それならそっちの部屋にも作りゃいいじゃねえか」
ゴンザさんがベッドのマットを運びながらそういった。
「それについてなんですが……」
「なにィ? 今日中には街を出るだって!?」
「ええ。リリアを国まで送っていくことになったので」
「そいつはまたえらく急だなぁ」
正直なところ、ゴンザさんの作業が終わるまでリリアには待っていてもらおうと思っていた。
けど昨日のような魔獣の襲撃があると街に迷惑がかかってしまう。
だからあの襲撃があってから、俺はそうしようと決めていた。
俺たちの予定を聞いたゴンザさんは顎に残った短い髭をジョリジョリと撫で、難しい顔をしている。
そういえば最初に会った時は髭も髪も伸び放題だったけど、どうやら昨日のうちにさっぱりしたようだな。
お願いしていた家具作りは明日いっぱいかかるって話だったし、今日中に完成させるのはさすがに難しいだろう。
「ですので、お願いしていたものは出来たところまでで大丈夫です。もちろんお金は全額支払いますので……」
「いや、そんな中途半端な仕事は出来ねぇ……」
そういってしばらく押し黙って何かを考え、ようやく口を開いた。
「……じゃあ俺も乗せてくれ」
「えっ!?」
「見た所、部屋ぁ余ってんだろ? なら俺も乗って旅の間に全部完成させてやらぁ」
「で、でもすぐにこの街に戻って来れるか分からなくて……」
「んな事ぁ分かってる。そもそも、だ。俺ぁこの街に合わねぇんだよ」
寂しそうな顔をしてゴンザさんはそういった。
確かにここはスラムとまではいかないが、日の当たらない路地の奥のさらに奥だ。
こんな路地に居を構えているからにはそれなりの理由があるのだろう。
そしてそんなゴンザさんの目には確かな決意の光があった。
「……わかりました。ゴンザさんがそれでいいのならそれでお願いします。ただ……」
「ただ?」
「危険な旅になると思いますが……」
「何言ってやがんだ。俺はこう見えてもドワーフの血を半分引いてるんだ。自分の身ぃ守ることくらいならできらぁ」
俺は頷くと、ゴンザさんと握手をかわした。
その手の皮は厚く、そして硬かった。
そうと決まれば早速出発する準備をしなくてはならない。
俺たちは市場のような店が集まっている区画で食料を買い込んだ。
みんなで食事を出来るようになったから、それなりの量が必要だろう。
肉はある程度、現地調達出来るだろうからパンやチーズ、それに調味料などを多めに買い込んだ。
水も樽で五つ購入し、ついでに酒も樽で同じだけ購入した。
そういえばこの世界に来てからまだ一滴も飲んでいなかったな。
前の世界にいたときより少し若くなっているようだから、そこまで欲しがる気持ちがわかなかったのだろうか?
まぁなんにせよ、今日の夜は歓迎会も兼ねてこの酒で一杯やるつもりだ。
あとは食器なども必要だろう、と安めの店で大量購入し、更に安くしてもらった。
それなりにお金はあるけど、安く買えるならそれにこしたことはないからな。
それから毛布や、俺の安眠に必須の枕なども購入してこっちの準備が整った。
ゴンザさんの居る裏路地へ行くと、ゴンザさんも準備を終えて待ち構えていた。
準備といってもそんなに荷物がないのか、かなりの軽装だ。
「ちょっと出発前に寄ってもらいてぇ場所がある」
そんなゴンザさんの先導で着いた場所は木材加工所だった。
「ここで材料の材木を買っていくからよ」
「わかりました。じゃあ多めに買っておきましょう」
「どうしてだ?」
「部屋丸々ひとつを倉庫にするので量は入りますし……それにいつ増築されるか分からないですから」
俺がそういうとゴンザさんは呆れたような顔をして、ニヤリと笑った。
その笑顔は、まるで腕が鳴るなといっているかのようだった。
こうして全ての準備が整った俺たちはロッカの街を出ることにする。
そういえば勇者の二人に挨拶出来ていないけど……まぁ今度来た時でいいか。
「じゃあ出発するぞ、目的地は——ドライエント王国ッ!」
そう口にしてからフィズの可愛らしいお尻を撫でるように叩いた。
フィズは「んっ」と艶めかしい声を出して馬車をひく。
いくつかの街を経由して一ヶ月くらいかかる旅程だから気を引き締めないとな。
なんたってこの馬車には生き餌ともいえる【生贄】の天職をもつリリアが乗っているんだから。
きっとこの前のような襲撃は数多くあるだろう。
でも俺は必ず乗客を、みんなを守ってみせる。
こうしてリリアを国へ送るため、ドライエント王国への旅がはじまった。
————
一章はここまでです。
たくさんのお気に入りありがとうございます!続けられるのは皆さんのおかげです!
「戻りました」
待っていたゴンザさんとフィズ、リリアにそう声を掛けると、その場に馬車を出現させる。
ベッドの部品が既に完成していたので、中で組み立てをしてもらうのだ。
早速小部屋に設置してもらおうと、馬車に乗り込んで右側の扉を開けると目の前には——廊下があった。
廊下を挟んだ右側に二つ、左側に三つ扉が見える。
「んんっ?」
驚きつつも確認してみると、増えた扉の向こう側は全て前にあった部屋と同じような小部屋になっていた。
急に部屋がなくなったのは驚いたけど、こうやって急に部屋が増えたのは初めてじゃない。
あれはまだ二人の勇者を乗せてた時だったか。
つまりあの時みたいにまた馬車が進化……いや、増築したということだろうか。
「なんだぁこれは!?」
最後にベッドの部品を運び入れてきたゴンザさんが声を失っている。
「部屋が増えてやがるじゃねえか……じゃあこいつぁどこに運べばいいんだぁ?」
「ああ、えっと……じゃあ奥の右側の部屋でお願いします」
そういうとゴンザさんは頷いて、部品を運んでいく。
「とりあえずあそこの部屋を俺の部屋にしようと思う。みんな分の部屋もありそうだけど、どうする?」
「フィズはご主人さまと一緒が……いい」
「私とジャックには必要ありません」
「そうか。ローズとジャックが要らないなら……残りはお客さんの部屋にでもするか。リリアは俺の隣の部屋でいいか?」
俺がそう聞くとリリアは驚いたような顔をした。
「私がお部屋を使わせて貰ってもいいのですか?」
「もちろんだよ、お客さんなんだからさ。ただ、部屋の中には何にも無いんだけど……」
「おお、それならそっちの部屋にも作りゃいいじゃねえか」
ゴンザさんがベッドのマットを運びながらそういった。
「それについてなんですが……」
「なにィ? 今日中には街を出るだって!?」
「ええ。リリアを国まで送っていくことになったので」
「そいつはまたえらく急だなぁ」
正直なところ、ゴンザさんの作業が終わるまでリリアには待っていてもらおうと思っていた。
けど昨日のような魔獣の襲撃があると街に迷惑がかかってしまう。
だからあの襲撃があってから、俺はそうしようと決めていた。
俺たちの予定を聞いたゴンザさんは顎に残った短い髭をジョリジョリと撫で、難しい顔をしている。
そういえば最初に会った時は髭も髪も伸び放題だったけど、どうやら昨日のうちにさっぱりしたようだな。
お願いしていた家具作りは明日いっぱいかかるって話だったし、今日中に完成させるのはさすがに難しいだろう。
「ですので、お願いしていたものは出来たところまでで大丈夫です。もちろんお金は全額支払いますので……」
「いや、そんな中途半端な仕事は出来ねぇ……」
そういってしばらく押し黙って何かを考え、ようやく口を開いた。
「……じゃあ俺も乗せてくれ」
「えっ!?」
「見た所、部屋ぁ余ってんだろ? なら俺も乗って旅の間に全部完成させてやらぁ」
「で、でもすぐにこの街に戻って来れるか分からなくて……」
「んな事ぁ分かってる。そもそも、だ。俺ぁこの街に合わねぇんだよ」
寂しそうな顔をしてゴンザさんはそういった。
確かにここはスラムとまではいかないが、日の当たらない路地の奥のさらに奥だ。
こんな路地に居を構えているからにはそれなりの理由があるのだろう。
そしてそんなゴンザさんの目には確かな決意の光があった。
「……わかりました。ゴンザさんがそれでいいのならそれでお願いします。ただ……」
「ただ?」
「危険な旅になると思いますが……」
「何言ってやがんだ。俺はこう見えてもドワーフの血を半分引いてるんだ。自分の身ぃ守ることくらいならできらぁ」
俺は頷くと、ゴンザさんと握手をかわした。
その手の皮は厚く、そして硬かった。
そうと決まれば早速出発する準備をしなくてはならない。
俺たちは市場のような店が集まっている区画で食料を買い込んだ。
みんなで食事を出来るようになったから、それなりの量が必要だろう。
肉はある程度、現地調達出来るだろうからパンやチーズ、それに調味料などを多めに買い込んだ。
水も樽で五つ購入し、ついでに酒も樽で同じだけ購入した。
そういえばこの世界に来てからまだ一滴も飲んでいなかったな。
前の世界にいたときより少し若くなっているようだから、そこまで欲しがる気持ちがわかなかったのだろうか?
まぁなんにせよ、今日の夜は歓迎会も兼ねてこの酒で一杯やるつもりだ。
あとは食器なども必要だろう、と安めの店で大量購入し、更に安くしてもらった。
それなりにお金はあるけど、安く買えるならそれにこしたことはないからな。
それから毛布や、俺の安眠に必須の枕なども購入してこっちの準備が整った。
ゴンザさんの居る裏路地へ行くと、ゴンザさんも準備を終えて待ち構えていた。
準備といってもそんなに荷物がないのか、かなりの軽装だ。
「ちょっと出発前に寄ってもらいてぇ場所がある」
そんなゴンザさんの先導で着いた場所は木材加工所だった。
「ここで材料の材木を買っていくからよ」
「わかりました。じゃあ多めに買っておきましょう」
「どうしてだ?」
「部屋丸々ひとつを倉庫にするので量は入りますし……それにいつ増築されるか分からないですから」
俺がそういうとゴンザさんは呆れたような顔をして、ニヤリと笑った。
その笑顔は、まるで腕が鳴るなといっているかのようだった。
こうして全ての準備が整った俺たちはロッカの街を出ることにする。
そういえば勇者の二人に挨拶出来ていないけど……まぁ今度来た時でいいか。
「じゃあ出発するぞ、目的地は——ドライエント王国ッ!」
そう口にしてからフィズの可愛らしいお尻を撫でるように叩いた。
フィズは「んっ」と艶めかしい声を出して馬車をひく。
いくつかの街を経由して一ヶ月くらいかかる旅程だから気を引き締めないとな。
なんたってこの馬車には生き餌ともいえる【生贄】の天職をもつリリアが乗っているんだから。
きっとこの前のような襲撃は数多くあるだろう。
でも俺は必ず乗客を、みんなを守ってみせる。
こうしてリリアを国へ送るため、ドライエント王国への旅がはじまった。
————
一章はここまでです。
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