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二章 討伐戦
第23話 実践的授業
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自習が終わって次の時間になると、僕らは実習室へ移動した。
その移動時間も僕の話題で持ちきりだったからちょっとむず痒かったな。
「ん、みんな揃ってる?」
「はい、先生。全員揃っています」
みんなの移動が済んでしばらくすると、気怠そうにロイゼ先生がやってきてそう聞いた。
答えたのは確かセイラとかいう名前の生徒だったかな?
「じゃあ実践的授業を、始める」
僕らはその宣言を聞いて少しだけ緊張をした。
「——前に、準備体操をします」
そして、その緊張はたちどころにほぐされたのだった。
へい、おいっちにーさんっしーという気の抜けるようなロイゼ先生の掛け声に合わせて僕らは準備体操をする。
足を曲げたり伸ばしたり、肩を回したり……そのあと、二人組で背中を伸ばしっこする時はマルグリッドさんとペアになった。
そっと触れた体は柔らかくて、時折ふわっと感じる良い香りがやっぱり女の子だなぁってなんて思ってたら危うく落としそうになっちゃったよ。
「じゃあ横一列に、並んで」
ロイゼ先生が言うと、僕らはそれぞれ少しずつの間隔を開けて横に広がった。
と、いってもこのクラスは八人しかいないから広がったところでこじんまりとしているんだけど。
ちなみにここへ来る時他のクラスの様子を覗いたら各部屋に三十人くらいは居たからビックリしちゃったよ。
やっぱりこのFクラスが特別な落ちこぼれ、なんだろうね。
「始める前に言っておく、けど。Fクラスは落ちこぼれじゃ、ない」
そんな僕の考えを見透かしたかのように先生はそう言った。
それでもクラスの空気が戸惑いを含んでいるのは、きっとさっき部屋を荒らして行った赤い髪の悪魔のような子のせいだな。
「このクラスには属性と魔力傾向に癖がある子が、多い。あとは魔力が少ない子、だね。そんなのは使い方次第でなんとでも、なる。それを覚えておいて。じゃ、実践」
そういって先生は一番端にいた生徒の手を取る。ピュリエさんだったかな?
すると突然、ピュリエさんは「あんっ……」という艶かしい声を出した。
出してしまってからそれに気付いたのか、真っ赤になっていた。
それでもやがて何かを掴んだのか、真面目な顔に戻った。
「ん、それが魔力の流れ。他のクラスでは座学からやるんだろう、けど。こっちの方が早い、よね?」
そういって先生は次々と生徒の手を掴んでは魔力の流れを実践で教え込んでいく。
「あぁっ……」
「うんっ……」
「くぅっ!」
などと、その度に嬌声を響かせるのはやめて欲しいけど、みんな順調に魔力の流れとやらを感じ取れているようだ。
そんな光景をドキドキしながら見ていたら、ついに僕の番になった。
周りの女の子たちも評価が最低、不明、不可という特殊な僕の場合どうなるのだろうか?と緊張したような面持ちで見守ってくれている。
ちょっと気恥ずかしいから変な声は出さないように気をつけないとね。
「次はイニスねー。うーん?…………お、重い……」
「お、おおっ!?」
なんだか体の中、臓腑をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているみたいだ。
「ん、ぐぐぐっ……ああっ!」
先生がそういって手を離すと同時に、僕は自分の中にドロドロとした何がが流れているのを感じた。
それはまるで血の流れを感じ取れるようになったようだ。
その感覚がくすぐったいようなむず痒いような……。
「あっ。…………ふぅ」
よし、変な声を出さずに済んだ、はず。
「イニスの魔力、重すぎ。だからチビリチビリとしか漏れなくて魔力が最低って出た、と思う。本当は多分かなり、多い」
「え、そうなんですか?」
「多分っていった。でも結局それを使えなきゃ、意味ない。はぁ……疲れた。じゃ次はアイヴィね」
先生は疲れを顕にしながらも、なんとか全員に魔力の流れを感じ取らせることができたようだ。
「魔法を使う時はその魔法の流れが重要になる、から。毎日回して」
毎日回しての意味がわからないけど、流れを感じて自在に動かせるようにしろっていうことかもね。
「じゃあ次は実践つー、やる。あそこの端にある的に魔法を、当てる」
先生のそんな言葉にみんなは口々に無理だよーなどと言い合っている。
いや、放出不可の僕は特に無理だからね?
「この中で魔法使えたことある人、いる?」
先生のその言葉に僕は手をあげるかあげまいか悩んで……結局あげた。
僕の他はルコラといっていたちょっとおどおどしていた生徒だけだった。
「ルコラはどんな時にどうやって、使った?」
そんな先生の質問にルコラは恥ずかしそうに顔を俯かせながら喋る。
「あ、あの……えっと、お兄様と兄弟喧嘩をしていまして……その、えいって」
兄弟喧嘩で魔法とはなかなか怖いこともあったもんだね。まぁでもじゃれあっていたような感じなのかな?
「ん。ルコラは風、放出だね。魔力が弱いから、良かったかも。死ななかったでしょ?」
「あ……お兄様ですか? えっと、骨が二本で済みました」
全然じゃれあいじゃなかったみたいだ。
「なんか嫌な予感がする、からあんまり聞きたくないけど。イニスは?」
「僕は目の前にモンスターが出てきたので……咄嗟に」
僕がそういうとロイゼ先生は眉をピクッと動かした。
クラスメイトの女の子たちもちょっぴりざわざわしはじめちゃったね。
「どんな? スライム?」
「えーっと、カエルでしたね。僕より少し大きいくらいの」
「模様は?」
「黄色っぽくて黒の線が何本かって感じでしたかね? 一撃で倒しちゃったのであまり覚えてないのですが……」
「それは、フロッガー……。それも、ベス。ありえる?」
「ええっとそれはどういう……?」
「ん、まぁいい。じゃあ二人には先に実践してもらう。ルコラとイニスは前へ、出て」
僕は放出不可なんだけど……先生、忘れてないかな?
ルコラちゃんが遠くに見える的の前へ歩いていくのに続いて、仕方なく僕も横に並んだのだった。
どう考えても恥をかくじゃないか……なんて内心で焦りながら。
その移動時間も僕の話題で持ちきりだったからちょっとむず痒かったな。
「ん、みんな揃ってる?」
「はい、先生。全員揃っています」
みんなの移動が済んでしばらくすると、気怠そうにロイゼ先生がやってきてそう聞いた。
答えたのは確かセイラとかいう名前の生徒だったかな?
「じゃあ実践的授業を、始める」
僕らはその宣言を聞いて少しだけ緊張をした。
「——前に、準備体操をします」
そして、その緊張はたちどころにほぐされたのだった。
へい、おいっちにーさんっしーという気の抜けるようなロイゼ先生の掛け声に合わせて僕らは準備体操をする。
足を曲げたり伸ばしたり、肩を回したり……そのあと、二人組で背中を伸ばしっこする時はマルグリッドさんとペアになった。
そっと触れた体は柔らかくて、時折ふわっと感じる良い香りがやっぱり女の子だなぁってなんて思ってたら危うく落としそうになっちゃったよ。
「じゃあ横一列に、並んで」
ロイゼ先生が言うと、僕らはそれぞれ少しずつの間隔を開けて横に広がった。
と、いってもこのクラスは八人しかいないから広がったところでこじんまりとしているんだけど。
ちなみにここへ来る時他のクラスの様子を覗いたら各部屋に三十人くらいは居たからビックリしちゃったよ。
やっぱりこのFクラスが特別な落ちこぼれ、なんだろうね。
「始める前に言っておく、けど。Fクラスは落ちこぼれじゃ、ない」
そんな僕の考えを見透かしたかのように先生はそう言った。
それでもクラスの空気が戸惑いを含んでいるのは、きっとさっき部屋を荒らして行った赤い髪の悪魔のような子のせいだな。
「このクラスには属性と魔力傾向に癖がある子が、多い。あとは魔力が少ない子、だね。そんなのは使い方次第でなんとでも、なる。それを覚えておいて。じゃ、実践」
そういって先生は一番端にいた生徒の手を取る。ピュリエさんだったかな?
すると突然、ピュリエさんは「あんっ……」という艶かしい声を出した。
出してしまってからそれに気付いたのか、真っ赤になっていた。
それでもやがて何かを掴んだのか、真面目な顔に戻った。
「ん、それが魔力の流れ。他のクラスでは座学からやるんだろう、けど。こっちの方が早い、よね?」
そういって先生は次々と生徒の手を掴んでは魔力の流れを実践で教え込んでいく。
「あぁっ……」
「うんっ……」
「くぅっ!」
などと、その度に嬌声を響かせるのはやめて欲しいけど、みんな順調に魔力の流れとやらを感じ取れているようだ。
そんな光景をドキドキしながら見ていたら、ついに僕の番になった。
周りの女の子たちも評価が最低、不明、不可という特殊な僕の場合どうなるのだろうか?と緊張したような面持ちで見守ってくれている。
ちょっと気恥ずかしいから変な声は出さないように気をつけないとね。
「次はイニスねー。うーん?…………お、重い……」
「お、おおっ!?」
なんだか体の中、臓腑をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているみたいだ。
「ん、ぐぐぐっ……ああっ!」
先生がそういって手を離すと同時に、僕は自分の中にドロドロとした何がが流れているのを感じた。
それはまるで血の流れを感じ取れるようになったようだ。
その感覚がくすぐったいようなむず痒いような……。
「あっ。…………ふぅ」
よし、変な声を出さずに済んだ、はず。
「イニスの魔力、重すぎ。だからチビリチビリとしか漏れなくて魔力が最低って出た、と思う。本当は多分かなり、多い」
「え、そうなんですか?」
「多分っていった。でも結局それを使えなきゃ、意味ない。はぁ……疲れた。じゃ次はアイヴィね」
先生は疲れを顕にしながらも、なんとか全員に魔力の流れを感じ取らせることができたようだ。
「魔法を使う時はその魔法の流れが重要になる、から。毎日回して」
毎日回しての意味がわからないけど、流れを感じて自在に動かせるようにしろっていうことかもね。
「じゃあ次は実践つー、やる。あそこの端にある的に魔法を、当てる」
先生のそんな言葉にみんなは口々に無理だよーなどと言い合っている。
いや、放出不可の僕は特に無理だからね?
「この中で魔法使えたことある人、いる?」
先生のその言葉に僕は手をあげるかあげまいか悩んで……結局あげた。
僕の他はルコラといっていたちょっとおどおどしていた生徒だけだった。
「ルコラはどんな時にどうやって、使った?」
そんな先生の質問にルコラは恥ずかしそうに顔を俯かせながら喋る。
「あ、あの……えっと、お兄様と兄弟喧嘩をしていまして……その、えいって」
兄弟喧嘩で魔法とはなかなか怖いこともあったもんだね。まぁでもじゃれあっていたような感じなのかな?
「ん。ルコラは風、放出だね。魔力が弱いから、良かったかも。死ななかったでしょ?」
「あ……お兄様ですか? えっと、骨が二本で済みました」
全然じゃれあいじゃなかったみたいだ。
「なんか嫌な予感がする、からあんまり聞きたくないけど。イニスは?」
「僕は目の前にモンスターが出てきたので……咄嗟に」
僕がそういうとロイゼ先生は眉をピクッと動かした。
クラスメイトの女の子たちもちょっぴりざわざわしはじめちゃったね。
「どんな? スライム?」
「えーっと、カエルでしたね。僕より少し大きいくらいの」
「模様は?」
「黄色っぽくて黒の線が何本かって感じでしたかね? 一撃で倒しちゃったのであまり覚えてないのですが……」
「それは、フロッガー……。それも、ベス。ありえる?」
「ええっとそれはどういう……?」
「ん、まぁいい。じゃあ二人には先に実践してもらう。ルコラとイニスは前へ、出て」
僕は放出不可なんだけど……先生、忘れてないかな?
ルコラちゃんが遠くに見える的の前へ歩いていくのに続いて、仕方なく僕も横に並んだのだった。
どう考えても恥をかくじゃないか……なんて内心で焦りながら。
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