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一章 魔女学園入学篇
第11話 寝る時は着けない派
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肩を震わせるリッカの背中をコレットがそっとさすってくれている。
僕はと言えば、どうしたらいいんだ?と視線を中空に彷徨わせるばかりでなんの役にも立っていないな。
「とりあえず学園の先生に相談してみたら?」
コレットがリッカにそう伝えると、ようやくリッカは多少の落ち着きを得た。
「ありがと、そうしてみる」
リッカはそういうとすでに冷たくなっているであろうミネストローネを一匙舐めた。
「しょっぱ……」
どうやら今のリッカには少し塩が効きすぎていたようだ。
「あー今日も美味しかった。でもリッカのお友達……ハルトくんだっけ? その子のこと、心配だね」
部屋に戻るとコレットは僕にそう声を掛けてくる。
ハルトの行方が気になって美味しいはずの料理が上手く喉を通らず、あまり手が進んでいなかった僕を見てくれていたのだろう。
「うん、でも先生に相談して探してくれたりするものなのかな?」
「探すのは難しいかもしれないけど……魔女って騎士とか、あと冒険者とかと連携するものだからそういった各ギルドに聞くことはしてくれるんじゃないかなって」
「そうなんだ。ギルドっていうのは?」
コレットは僕にギルドというのは何かを教えてくれた。
この国には魔女ギルド、騎士ギルド、冒険者ギルドという3つのギルドがあって、それらのギルドが連携してモンスターの討伐や、未踏破区域の探索などを行っている、という事だった。
僕の村にはそういったギルドがなくて知らなかったけど、小さな街にも冒険者ギルドくらいあるでしょ?と不思議そうな目をしながら言われてしまった。
そういえば街から来た事になっているのを思い出した僕は、慌てて「ああ、そのギルドかぁ」などとワケの分からない誤魔化し方をした。
もっと慎重にならないとバレるのも時間の問題だよ。
「他に何か探してあげられる方法はないのかな?」
学校の先生からギルド、そしてその担当者……となると探しはじめるまでにも時間がかかるかもしれない。
そう思った僕はコレットにそれとなく尋ねてみる。
コレットは唇に指をあてて少し考えるとこういった。
「そうだ、治安官に聞いてみたらいいかも」
「治安官?」
僕の村にそういった人は居なかったのだけど、どうやら街の安全を守るために犯罪者などを捕まえるなどの役割を持った人のことらしい。
村でいえばブロスさんが似たような事をしてたっけな。
裁判をして罪を裁く権利も持っているようだから、もし僕がこの学園に潜入していることがバレたらきっと、治安官に捕まるのだろう。
「この街に来てから居なくなったなら何かの情報はあるかもしれないよ。でもこの街に来る前に居なくなってしまってたとしたら……難しいかなぁ」
難しい、という事は見つからないという事だよね。
ハルトの事だから、と少しは楽観的に考えていた僕だったけどその言葉を聞くとさすがに焦りが強くなってきてしまった。
「……コレット、治安官って街にいるんだよね?」
「うん、街の中に詰め所があるからそこに行けばいるはずだよ」
その言葉を聞いて僕は明日になったら行ってみよう、そう決心した。
「そういえば、魔女学園の外って勝手に出ていってもいいのかな?」
ここは全寮制だし、門の所では騎士が出入りを管理しているようなので勝手な外出は出来ないのではないかと思ったのだ。
「2日後までは新入生の受け入れ期間で授業はないし、外出規制も緩いと思うよ。私もこの前一回家に帰ったしね。あ、もしかしてリッカを手伝ってあげるの?」
「……うん、出来ることならそうしたいなって」
僕はそういいながら顔を隠しながら肩を震わせるリッカを思い出していた。
ハルトの奴、リッカを泣かせちゃダメじゃないか。
見つかったらちょっとくらい怒ってあげないとね。
だから早く見つけてやるんだ。
「分かった! じゃあ私も協力するよ」
「えっ?」
「だって私も話を聞いちゃったんだし、一緒に聞いてたイニスが協力するなら私も手伝わなきゃ。じゃない?」
コレットは笑顔でそういってくれた。
「それに、この街のことを知っている私が着いていった方がいいかな、って。邪魔かな?」
「まさか! 邪魔なんかじゃないよ!」
僕はつづけてコレットにありがとう、と感謝を伝える。
「それじゃ明日に備えてシャワーを浴びて早めに寝ましょ!」
「あ……う、うん」
先に入る?と言われたので「あ、後にしておくよ」と上擦った声で答えてしまった。
変に思われていないといいんだけど。
ちなみにシャワーというのはさっき見た筒からお湯が出てくる魔導具の名称なんだって。
僕はコレットが湯浴み……シャワーを浴びに行ったので荷物の整理をする事にした。
村から持ってきた布製の袋の中にはワンピースタイプの服が数着入っていたので、まずはそれを自分専用の棚にしまう事にする。
ちなみにこの部屋はちょうど半分を境にして対称の作りとなっていて、一番壁際にはベッド、その隣に小物をしまうような棚、それから机が置いてあった。
衣服を入れる衣装棚はベッドの足元にあったのでそこへ母さんお手製のワンピースを掛けておいた。
自分が使えるスペースとしては村の自室よりわずかに狭いかな?といった程度だし、生活するには問題なさそうだね。
それから袋に入っていた懐鏡や、櫛、髪を結ぶためのリボンなどを棚に詰め込むと、残ったのは僕が王都でリッカやハルトと会う時に着ようと思っていた男物の服だ。
これは見られてしまうとまずいので布の袋の中に残して衣装棚の隅にそっと隠すように置いた。
「ふぅ、これで僕の荷物は整理されたかな」
そう口に出しながら部屋を見渡すと……うん、すごく汚れている。
きっとコレットは片付けるのが苦手な人なんだ、と思える程だ。
さっき先輩に迫られてつまづいたのは当然だったのかもしれない。
もしコレットが嫌がらないなら、髪を結ってくれたお返しとして僕が片付けてあげるのもいいかもしれないね。
まだコレットが戻って来ないのを確認した僕は、さっき小物をしまった棚の中からリッカ人形を取り出して軽く握った。
「ハルトは必ず見つけるから——」
そんな僕の決意にリッカ人形はこくり、と頷いたように見えたけど気の所為だったかな?
そんな事を思っていたら「おまたせー」と言いながらコレットが戻ってきたので、僕は慌ててリッカ人形を棚にしまい直した。
「着替えとタオルは脱衣所——服を脱ぐ所ね? そこの棚に入ってるよ……って聞いてる?」
「う、うん。ありがとう。じゃあ入ってくるね」
シャワーから戻ったコレットは体の上にタオルを一枚巻いただけの姿だった。
さすがに直視出来なかった僕は顔を背けながら答えることになってしまった。
脱衣所へ行き、服を脱ごうとすると衝撃的な事に気がついてしまった。
なんと鍵が……鍵がないのだ。
女子しかいないからそれでいいってことなのだろうか。
まぁないものは仕方がない、ささっと脱いでささっと入ってしまおう。
「えっと、確かここのボタンを押すんだよね……ひ、ひゃあっ!」
僕はボタンを間違えたのかとんでもない冷たさの水を全身に浴びる事になった。
そんな僕の声が聞こえたのか背後にある脱衣所へ続く扉がもの凄い勢いで開いた。
「大丈夫!? なんか叫び声が聞こえたんだけど」
「え、ええっ!?……あ、ボ、ボタンを間違えたみたいで……み、水を浴びちゃっただけだからだ、大丈夫だよ」
僕はコレットに裸を見られた焦りから、上手く言葉が出てこない。
つっかえつっかえしながらなんとか言葉を紡いだ。
「そうだったんだ。ちゃんと教えなくてごめんね。そんなに震えちゃって……ちゃんと暖かくして出てきてね」
コレットは僕の動揺を冷えによる震えだと誤解してくれたようで、すぐに部屋へ戻って行ってくれた。
見られたのが背中側で良かったけど、こんなのが続いたら……。
「僕もう、無理」
なんとかシャワーを浴びると用意されていたすべすべの肌触りをした寝間着に着替えて部屋に戻った。
コレットはさすがにもう服を着ていてくれてるね、良かった。
「さっきは変な声を出して驚かせちゃってごめんね」
「ううん、私こそ急に入っちゃってごめんね」
僕が声をかけるとコレットは髪を棒に巻き付けながらそう答えて、僕の方を向いた。
あれ、寝間着になったコレットは凄く大人びていて……あっ。
「ね、ねぇコレットって……寝る時は着けない派、なの?」
「うん、だって寝苦しいんだもん」
確かに大きめに作ってあるはずの寝間着が窮屈そうなほどの……。
ちなみに僕は布をたくさん詰めた特別製のものを着けている。
そうすると少しは胸があるように見えるんだよね。
コレットはそんな僕の胸をちらりと見て、話を終わらせるようにこういった。
「さ、さぁ明日は忙しくなるから早く寝よっ!」
うん、どうやら気を使わせてしまったみたいだね。
僕はと言えば、どうしたらいいんだ?と視線を中空に彷徨わせるばかりでなんの役にも立っていないな。
「とりあえず学園の先生に相談してみたら?」
コレットがリッカにそう伝えると、ようやくリッカは多少の落ち着きを得た。
「ありがと、そうしてみる」
リッカはそういうとすでに冷たくなっているであろうミネストローネを一匙舐めた。
「しょっぱ……」
どうやら今のリッカには少し塩が効きすぎていたようだ。
「あー今日も美味しかった。でもリッカのお友達……ハルトくんだっけ? その子のこと、心配だね」
部屋に戻るとコレットは僕にそう声を掛けてくる。
ハルトの行方が気になって美味しいはずの料理が上手く喉を通らず、あまり手が進んでいなかった僕を見てくれていたのだろう。
「うん、でも先生に相談して探してくれたりするものなのかな?」
「探すのは難しいかもしれないけど……魔女って騎士とか、あと冒険者とかと連携するものだからそういった各ギルドに聞くことはしてくれるんじゃないかなって」
「そうなんだ。ギルドっていうのは?」
コレットは僕にギルドというのは何かを教えてくれた。
この国には魔女ギルド、騎士ギルド、冒険者ギルドという3つのギルドがあって、それらのギルドが連携してモンスターの討伐や、未踏破区域の探索などを行っている、という事だった。
僕の村にはそういったギルドがなくて知らなかったけど、小さな街にも冒険者ギルドくらいあるでしょ?と不思議そうな目をしながら言われてしまった。
そういえば街から来た事になっているのを思い出した僕は、慌てて「ああ、そのギルドかぁ」などとワケの分からない誤魔化し方をした。
もっと慎重にならないとバレるのも時間の問題だよ。
「他に何か探してあげられる方法はないのかな?」
学校の先生からギルド、そしてその担当者……となると探しはじめるまでにも時間がかかるかもしれない。
そう思った僕はコレットにそれとなく尋ねてみる。
コレットは唇に指をあてて少し考えるとこういった。
「そうだ、治安官に聞いてみたらいいかも」
「治安官?」
僕の村にそういった人は居なかったのだけど、どうやら街の安全を守るために犯罪者などを捕まえるなどの役割を持った人のことらしい。
村でいえばブロスさんが似たような事をしてたっけな。
裁判をして罪を裁く権利も持っているようだから、もし僕がこの学園に潜入していることがバレたらきっと、治安官に捕まるのだろう。
「この街に来てから居なくなったなら何かの情報はあるかもしれないよ。でもこの街に来る前に居なくなってしまってたとしたら……難しいかなぁ」
難しい、という事は見つからないという事だよね。
ハルトの事だから、と少しは楽観的に考えていた僕だったけどその言葉を聞くとさすがに焦りが強くなってきてしまった。
「……コレット、治安官って街にいるんだよね?」
「うん、街の中に詰め所があるからそこに行けばいるはずだよ」
その言葉を聞いて僕は明日になったら行ってみよう、そう決心した。
「そういえば、魔女学園の外って勝手に出ていってもいいのかな?」
ここは全寮制だし、門の所では騎士が出入りを管理しているようなので勝手な外出は出来ないのではないかと思ったのだ。
「2日後までは新入生の受け入れ期間で授業はないし、外出規制も緩いと思うよ。私もこの前一回家に帰ったしね。あ、もしかしてリッカを手伝ってあげるの?」
「……うん、出来ることならそうしたいなって」
僕はそういいながら顔を隠しながら肩を震わせるリッカを思い出していた。
ハルトの奴、リッカを泣かせちゃダメじゃないか。
見つかったらちょっとくらい怒ってあげないとね。
だから早く見つけてやるんだ。
「分かった! じゃあ私も協力するよ」
「えっ?」
「だって私も話を聞いちゃったんだし、一緒に聞いてたイニスが協力するなら私も手伝わなきゃ。じゃない?」
コレットは笑顔でそういってくれた。
「それに、この街のことを知っている私が着いていった方がいいかな、って。邪魔かな?」
「まさか! 邪魔なんかじゃないよ!」
僕はつづけてコレットにありがとう、と感謝を伝える。
「それじゃ明日に備えてシャワーを浴びて早めに寝ましょ!」
「あ……う、うん」
先に入る?と言われたので「あ、後にしておくよ」と上擦った声で答えてしまった。
変に思われていないといいんだけど。
ちなみにシャワーというのはさっき見た筒からお湯が出てくる魔導具の名称なんだって。
僕はコレットが湯浴み……シャワーを浴びに行ったので荷物の整理をする事にした。
村から持ってきた布製の袋の中にはワンピースタイプの服が数着入っていたので、まずはそれを自分専用の棚にしまう事にする。
ちなみにこの部屋はちょうど半分を境にして対称の作りとなっていて、一番壁際にはベッド、その隣に小物をしまうような棚、それから机が置いてあった。
衣服を入れる衣装棚はベッドの足元にあったのでそこへ母さんお手製のワンピースを掛けておいた。
自分が使えるスペースとしては村の自室よりわずかに狭いかな?といった程度だし、生活するには問題なさそうだね。
それから袋に入っていた懐鏡や、櫛、髪を結ぶためのリボンなどを棚に詰め込むと、残ったのは僕が王都でリッカやハルトと会う時に着ようと思っていた男物の服だ。
これは見られてしまうとまずいので布の袋の中に残して衣装棚の隅にそっと隠すように置いた。
「ふぅ、これで僕の荷物は整理されたかな」
そう口に出しながら部屋を見渡すと……うん、すごく汚れている。
きっとコレットは片付けるのが苦手な人なんだ、と思える程だ。
さっき先輩に迫られてつまづいたのは当然だったのかもしれない。
もしコレットが嫌がらないなら、髪を結ってくれたお返しとして僕が片付けてあげるのもいいかもしれないね。
まだコレットが戻って来ないのを確認した僕は、さっき小物をしまった棚の中からリッカ人形を取り出して軽く握った。
「ハルトは必ず見つけるから——」
そんな僕の決意にリッカ人形はこくり、と頷いたように見えたけど気の所為だったかな?
そんな事を思っていたら「おまたせー」と言いながらコレットが戻ってきたので、僕は慌ててリッカ人形を棚にしまい直した。
「着替えとタオルは脱衣所——服を脱ぐ所ね? そこの棚に入ってるよ……って聞いてる?」
「う、うん。ありがとう。じゃあ入ってくるね」
シャワーから戻ったコレットは体の上にタオルを一枚巻いただけの姿だった。
さすがに直視出来なかった僕は顔を背けながら答えることになってしまった。
脱衣所へ行き、服を脱ごうとすると衝撃的な事に気がついてしまった。
なんと鍵が……鍵がないのだ。
女子しかいないからそれでいいってことなのだろうか。
まぁないものは仕方がない、ささっと脱いでささっと入ってしまおう。
「えっと、確かここのボタンを押すんだよね……ひ、ひゃあっ!」
僕はボタンを間違えたのかとんでもない冷たさの水を全身に浴びる事になった。
そんな僕の声が聞こえたのか背後にある脱衣所へ続く扉がもの凄い勢いで開いた。
「大丈夫!? なんか叫び声が聞こえたんだけど」
「え、ええっ!?……あ、ボ、ボタンを間違えたみたいで……み、水を浴びちゃっただけだからだ、大丈夫だよ」
僕はコレットに裸を見られた焦りから、上手く言葉が出てこない。
つっかえつっかえしながらなんとか言葉を紡いだ。
「そうだったんだ。ちゃんと教えなくてごめんね。そんなに震えちゃって……ちゃんと暖かくして出てきてね」
コレットは僕の動揺を冷えによる震えだと誤解してくれたようで、すぐに部屋へ戻って行ってくれた。
見られたのが背中側で良かったけど、こんなのが続いたら……。
「僕もう、無理」
なんとかシャワーを浴びると用意されていたすべすべの肌触りをした寝間着に着替えて部屋に戻った。
コレットはさすがにもう服を着ていてくれてるね、良かった。
「さっきは変な声を出して驚かせちゃってごめんね」
「ううん、私こそ急に入っちゃってごめんね」
僕が声をかけるとコレットは髪を棒に巻き付けながらそう答えて、僕の方を向いた。
あれ、寝間着になったコレットは凄く大人びていて……あっ。
「ね、ねぇコレットって……寝る時は着けない派、なの?」
「うん、だって寝苦しいんだもん」
確かに大きめに作ってあるはずの寝間着が窮屈そうなほどの……。
ちなみに僕は布をたくさん詰めた特別製のものを着けている。
そうすると少しは胸があるように見えるんだよね。
コレットはそんな僕の胸をちらりと見て、話を終わらせるようにこういった。
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