27 / 49
第27話 応接室で、女経営者と
しおりを挟む
カルロスである俺の初配信は、真利の勘違い発言「健太にいとキスしたい」が放送されてしまった。
いきなりのピンチだが、コラボ相手のルリアが機転を利かす。
なんとネタにして、俺をシスコン扱いしたのだ。
そこで急遽、カルロスは重度のシスコン設定でいくと方向転換。
視聴者からは変態扱いされたが、なんとか初配信での放送事故を乗り切ることができた。
「やってくれたな?」
目の前で栗原専務が腕組みして立っている。
だが、言葉の割には口調が優しい。
というか少し嬉しそうだ。
「すみませんでした」
デビュー配信を打ち合わせ通りにできず、放送事故になったことを詫びる。
俺はあの放送の直後、マネージャーでもある栗原専務に事務所へ呼び出された。
ここは事務所の応接室。
デビュー後の初出社は放送事故の謝罪になった。
「何を言っている。謝ることはないぞ。まあ座って話そう」
応接用の横長ソファに座った俺は、栗原専務の言葉の意味が分からず謝罪を続ける。
「でも完璧な放送どころか、予定にない真利の声まで放送されてしまって」
再び頭を下げると、栗原専務は首を横に振った。
「いいか、中村さん。あなたはもうタレントなんだ。配信で視聴者を楽しませるのが仕事。今回はむしろ成功だ」
「そうですか! それならよかった……」
「この前教えたように、他人を傷つける言葉や、放送で不適切な言葉を使わなければ何も問題ない。しかし――」
栗原専務は言葉を止めると、脚を組み替えてから笑みを浮かべた。
黒いストッキングを穿いた脚線美と、黒いヒールの組み合わせが色っぽい。
「しかし、カルロスはシスコンになってしまったな」
「ま、まずかったですか?」
「いや。むしろ面白い。カルロスが聖天使ナノンをフッた、それは重度のシスコンだから。うむ、いい味付けだ」
怒られると思ったシスコンキャラは、むしろいい方向に判断された。
「でもVtuberなのにシスコンですよ? 頭おかしくないですか?」
「シスコン系Vtuberは前から世の中にいる。だから別に異常ではない。むしろ事務所的には好都合だ」
「好都合なんですか?」
「ウチの所属Vは、中村さん以外全員女性だ。多くの男性ファンに支えられていると言っていい。カルロスが重度のシスコンなら、ほかのVに手をだす構図にはならない。だから、彼女たちのファンがあなたを敵視しないですむ」
なるほど、よく考えた上でのOKなんだな。
そこまで説明した栗原専務は、俺の目を見ると笑みを浮かべた。
「中村さん。今回のデビュー配信で分かったよ。瑠理や姫川さんがあなたを特別だという理由が」
対面で話していた栗原専務が話しながら立ち上がると、横長のソファに座る俺の横に移動した。
え? 何で横に座るの?
少し距離が近い気がする。
「特別ですか? 俺が?」
「ああ。普通に見えて瞬間の振れ幅が凄い。まるで異常事態の対応に慣れているように思える」
「あ、物心ついてずっと、主張の強い幼馴染みに振り回されてきたからですかね」
「振れ幅は魅力を生み出す。中村さんならウチの事務所の起爆剤になれる! 私の悲願であった業界ナンバー1を奪取できるかもしれない!」
いつも冷静な栗原専務が、こぶしを握って語気を強めた。
彼女は興奮で暑くなったのかスーツの上着を脱ぐ。
「奪取って、まさかあの事務所を超えるってことですか?」
「そうだ! 業界最大手のVtuber事務所『テラくろっく』よりも、我々『カワイイ総合研究所』が上に立つ!! だから協力して欲しい!」
彼女の俺を見る目は真剣で、距離もちょっと近い。
身を乗り出して話す姿から、仕事への情熱をヒシヒシと感じた。
「そ、そりゃなるべくは……」
「中村さんには期待している。会社のために、私の頼みをアレコレ聞いてくれるよな?」
前のめりになって熱く語る栗原専務のテンションに驚いていると、応接室の扉がノックされる。
「失礼します」
なんと菜乃が入ってきた。
菜乃は見せキャミソールの上から、スケる素材の薄手ブラウスを羽織って、薄水色のスカート姿。
本当に俺の彼女は何を着ても可愛い。
いつも思うが、なんでこんなに美人のVtuberが俺の彼女なんだろう。
「栗原専務、お待たせしました。……って一体何をされてたんですかっ!!」
どうした?
菜乃は何を驚いてるのか?
栗原専務はスーツの上着を脱いだブラウス姿で、俺と同じソファに並んで座り、前のめりで俺の肩に手を掛けていた。
しかも、話に興奮して頬を染めている。
俺は状況のあやしさに気づいて栗原専務と顔を見合わせると、急いで互いの距離をとった。
これ、誤解された?
眉を上げた菜乃がつかつか歩いてくると、俺の腕をつかんで立たせる。
「もうお話、終りましたよね? それじゃ、中村さんと打ち合わせするんで失礼します!」
「……あ、ああ、よろしく頼む」
栗原専務が苦笑いで答えた。
菜乃は俺を横目でにらんでから、腕を引っ張って応接室の外へ連れ出した。
「あの、菜乃? どこへ?」
「会議室!!」
俺の腕を引っ張る菜乃は、いつも以上に横顔が凛々しくて少し怖い。
そのまま彼女に会議室の前まで連れてこられた。
扉を開けると小さな会議室で椅子4つとテーブルがある。
先に入るようにうながされた
「菜乃? 今日はどうしたの?」
「健太と打ち合わせしろって言われたから来たの!」
彼女は機嫌悪く答えると、あとから会議室へ入って扉を背にする。
直後、ガチャリと音が聞こえた。
え? 今の音は何?
もしかしてカギを閉めた?
「ちょっと? 何を?」
「もうね。このままじゃ、誰かに先を越されかねないから!」
菜乃はそう言って口を尖らせると、俺の腕を引っ張った。
互いの距離がいつもより近くなる。
驚いて目を見開くと、彼女は頬を染めて俺を見つめた。
菜乃の瞳は黒々して可愛くて、そしていつもよりも潤んでいた。
※次回はエロ展開なので、苦手な方注意です。
いきなりのピンチだが、コラボ相手のルリアが機転を利かす。
なんとネタにして、俺をシスコン扱いしたのだ。
そこで急遽、カルロスは重度のシスコン設定でいくと方向転換。
視聴者からは変態扱いされたが、なんとか初配信での放送事故を乗り切ることができた。
「やってくれたな?」
目の前で栗原専務が腕組みして立っている。
だが、言葉の割には口調が優しい。
というか少し嬉しそうだ。
「すみませんでした」
デビュー配信を打ち合わせ通りにできず、放送事故になったことを詫びる。
俺はあの放送の直後、マネージャーでもある栗原専務に事務所へ呼び出された。
ここは事務所の応接室。
デビュー後の初出社は放送事故の謝罪になった。
「何を言っている。謝ることはないぞ。まあ座って話そう」
応接用の横長ソファに座った俺は、栗原専務の言葉の意味が分からず謝罪を続ける。
「でも完璧な放送どころか、予定にない真利の声まで放送されてしまって」
再び頭を下げると、栗原専務は首を横に振った。
「いいか、中村さん。あなたはもうタレントなんだ。配信で視聴者を楽しませるのが仕事。今回はむしろ成功だ」
「そうですか! それならよかった……」
「この前教えたように、他人を傷つける言葉や、放送で不適切な言葉を使わなければ何も問題ない。しかし――」
栗原専務は言葉を止めると、脚を組み替えてから笑みを浮かべた。
黒いストッキングを穿いた脚線美と、黒いヒールの組み合わせが色っぽい。
「しかし、カルロスはシスコンになってしまったな」
「ま、まずかったですか?」
「いや。むしろ面白い。カルロスが聖天使ナノンをフッた、それは重度のシスコンだから。うむ、いい味付けだ」
怒られると思ったシスコンキャラは、むしろいい方向に判断された。
「でもVtuberなのにシスコンですよ? 頭おかしくないですか?」
「シスコン系Vtuberは前から世の中にいる。だから別に異常ではない。むしろ事務所的には好都合だ」
「好都合なんですか?」
「ウチの所属Vは、中村さん以外全員女性だ。多くの男性ファンに支えられていると言っていい。カルロスが重度のシスコンなら、ほかのVに手をだす構図にはならない。だから、彼女たちのファンがあなたを敵視しないですむ」
なるほど、よく考えた上でのOKなんだな。
そこまで説明した栗原専務は、俺の目を見ると笑みを浮かべた。
「中村さん。今回のデビュー配信で分かったよ。瑠理や姫川さんがあなたを特別だという理由が」
対面で話していた栗原専務が話しながら立ち上がると、横長のソファに座る俺の横に移動した。
え? 何で横に座るの?
少し距離が近い気がする。
「特別ですか? 俺が?」
「ああ。普通に見えて瞬間の振れ幅が凄い。まるで異常事態の対応に慣れているように思える」
「あ、物心ついてずっと、主張の強い幼馴染みに振り回されてきたからですかね」
「振れ幅は魅力を生み出す。中村さんならウチの事務所の起爆剤になれる! 私の悲願であった業界ナンバー1を奪取できるかもしれない!」
いつも冷静な栗原専務が、こぶしを握って語気を強めた。
彼女は興奮で暑くなったのかスーツの上着を脱ぐ。
「奪取って、まさかあの事務所を超えるってことですか?」
「そうだ! 業界最大手のVtuber事務所『テラくろっく』よりも、我々『カワイイ総合研究所』が上に立つ!! だから協力して欲しい!」
彼女の俺を見る目は真剣で、距離もちょっと近い。
身を乗り出して話す姿から、仕事への情熱をヒシヒシと感じた。
「そ、そりゃなるべくは……」
「中村さんには期待している。会社のために、私の頼みをアレコレ聞いてくれるよな?」
前のめりになって熱く語る栗原専務のテンションに驚いていると、応接室の扉がノックされる。
「失礼します」
なんと菜乃が入ってきた。
菜乃は見せキャミソールの上から、スケる素材の薄手ブラウスを羽織って、薄水色のスカート姿。
本当に俺の彼女は何を着ても可愛い。
いつも思うが、なんでこんなに美人のVtuberが俺の彼女なんだろう。
「栗原専務、お待たせしました。……って一体何をされてたんですかっ!!」
どうした?
菜乃は何を驚いてるのか?
栗原専務はスーツの上着を脱いだブラウス姿で、俺と同じソファに並んで座り、前のめりで俺の肩に手を掛けていた。
しかも、話に興奮して頬を染めている。
俺は状況のあやしさに気づいて栗原専務と顔を見合わせると、急いで互いの距離をとった。
これ、誤解された?
眉を上げた菜乃がつかつか歩いてくると、俺の腕をつかんで立たせる。
「もうお話、終りましたよね? それじゃ、中村さんと打ち合わせするんで失礼します!」
「……あ、ああ、よろしく頼む」
栗原専務が苦笑いで答えた。
菜乃は俺を横目でにらんでから、腕を引っ張って応接室の外へ連れ出した。
「あの、菜乃? どこへ?」
「会議室!!」
俺の腕を引っ張る菜乃は、いつも以上に横顔が凛々しくて少し怖い。
そのまま彼女に会議室の前まで連れてこられた。
扉を開けると小さな会議室で椅子4つとテーブルがある。
先に入るようにうながされた
「菜乃? 今日はどうしたの?」
「健太と打ち合わせしろって言われたから来たの!」
彼女は機嫌悪く答えると、あとから会議室へ入って扉を背にする。
直後、ガチャリと音が聞こえた。
え? 今の音は何?
もしかしてカギを閉めた?
「ちょっと? 何を?」
「もうね。このままじゃ、誰かに先を越されかねないから!」
菜乃はそう言って口を尖らせると、俺の腕を引っ張った。
互いの距離がいつもより近くなる。
驚いて目を見開くと、彼女は頬を染めて俺を見つめた。
菜乃の瞳は黒々して可愛くて、そしていつもよりも潤んでいた。
※次回はエロ展開なので、苦手な方注意です。
34
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。



大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる