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第24話 部屋へ入れたのが失敗
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俺の家で待ち構えていたカレンは、いつものように俺へからむのではなく、なんと来てくれた事務所のメンバーと敵対した。
カレンが言いたい放題で最悪の雰囲気になったが、栗原専務が実力を発揮。
カレンに負けを認めさせて、帰らせたのだった。
「みなさん、すいませんでした」
俺はみんなに向き合うと頭を下げた。
「あやまらないで。今のは誰も悪くないよ」
菜乃が首を横に振って、俺の責任を否定した。
瑠理が菜乃の言葉にうなずく。
俺の後ろにいた親戚の真利が、栗原専務の前まで出てきた。
「あ、あの、タレント事務所って本当ですか?」
真利がおずおずと栗原専務に質問している。
「あなたは?」
「あ、私、健太にいの親戚の新島真利です。その、タレント活動に興味がありまして……」
真利が彼女なりに丁寧な態度で接している。
俺を相手にするときとはエライ違いだ。
栗原専務が俺を見るので、丁寧に頭を下げた。
真利が本気ならちゃんと話を聞いた方がいい。
「それなら、お母様とのお話に同席してください。瑠理は中村さんとパソコンの設定を頼むわ。後で見に行くから」
「はーい」
栗原専務は、俺の仕事のことで母さんと真利と話すそうなのでリビングに残ってもらう。
「じゃあ、菜乃と瑠理は俺の部屋に案内するから」
彼女らふたりを2階の俺の部屋へ案内してから、俺だけ必死にパソコンの梱包を運ぶ。
箱が思ったより大きくて階段を上がりにくい。
「あっ! ちょっと! 何してんの!?」
パソコンの箱を持って2階の部屋に入ると、俺のベッドに菜乃と瑠理が寝そべっていた。
ふたりとも制服のまま、うつ伏せで足をバタバタしている。
菜乃と瑠理は仲良く俺の枕に顔をうずめた。
「健太の匂いがするわ」
「これが健ちゃんの匂いかあ」
「おい、やめろよ。頼むからやめてくれ」
パソコンの箱を持ってるので、突っ立ったまま抗議する。
だがふたりは、余計に枕へ顔をうずめて匂いを嗅ぎだした。
「や、やめてくれーー!」
箱を置いて急いでやめさせた。
制服女子がふたり並んで俺のベッドに寝そべるとか目の毒だ。
部屋にいないと何をされる分からないので、大急ぎで荷物を運ぶ。
「ふう。瑠理、全部運んだぞ」
「じゃあ、配線つながったら言って」
俺は汗だくになりながら、瑠理の指示に従って配線をつなぐ。
「じゃあ、瑠理ちゃん。それまで宝探ししよ」
「健ちゃんの嗜好って気になる!」
菜乃、瑠理が寄り集まって悪だくみを始める。
まったく、女子が集まるとこうも大胆で、やりたい放題になるのか……。
ちゃんと処分しといてよかったよ。
「る、瑠理ちゃん、み、見つけた……」
「健ちゃん、ちょっとこれ縛られてるよぉ……」
急に静かになった2人が顔を寄せあって、何かを一生懸命見ている。
「おい、何を見て……うぎゃぁーー!!」
すべて処分したはずなのに、昔、手に入れた拘束系のエロ漫画を発見された。
恋人同士が刺激を求めて、ちょっと過激なプレイをするやつだ。
スマホがまだない小学生のときに、友達の兄貴からもらったエロ漫画じゃないか!
どこにいったのかと思ったら、ベッドの裏に隠してあったかぁ。
って今はそれどころじゃない!
「わぁぁああああーーーー!!!!」
俺は大声をあげてふたりの注意を惹くと、急いでエロ漫画を奪い取った。
「あ、健太、待って! これからなのにー」
「健ちゃんてば、エロい趣味してるんだね」
ふたりに物凄く不満を言われたが、そんなことは知らない。
俺は戸口の筒状ゴミ箱にエロ漫画を投げ入れた。
「はい終わりはい終わりはい終わり!! これはもらいもんなの! でも要らないから捨てる。さ、瑠理! パソコンの設定よろしく!」
「むー。まあいいケド。じゃあ、OSを最新に更新するから待ってて。終わったら健ちゃんにサーバーのログインパスワードとか決めてもらうよ」
瑠理の顔が何だか少し赤い。
そりゃ、あんな本を見た後だもんな。
瑠理みたいな、おこちゃま少女には刺激が強すぎたんだろう。
照れる彼女を見てると、俺まで恥ずかしくなる。
ちょんちょんと肩をつつかれたので横を見ると、菜乃まで顔を赤くして俺を見ていた。
そっと俺に顔を寄せてくると、片手を口に当てて耳元でささやく。
「すぐは無理でも、徐々にならできなくないかも」
物凄く小声でつぶやかれた。
自分の顔が火を噴くほど熱くなる。
狭い俺の部屋に顔を赤らめた女子ふたり。
俺は頭がどうにかなりそうで、それを誤魔化そうと必死になった。
まずはVtuberデビュー当日の流れについて、気になってたことをふたりに質問する。
とっくにデビュー済みで、さんざん配信をしているベテランふたりは相当頼りになった。
エロ漫画のせいで最初は変な雰囲気だったが、仕事の話になると真剣になるあたり、さすがプロと言ったところである。
パソコンの設定もいくつかのパスワードを決めて、配信アプリのダウンロードも終えた。
これで配信機材の準備は万全だ。
ちょうど階段を上がる音が聞こえて、部屋の扉をノックされる。
「健太にいの部屋はここです」
「真利さんありがとう。中村さん、入っていい?」
俺が「どうぞ」と声をかけると、栗原専務が扉を開けた。
「瑠理が設定したなら問題ないと思うけど」
そう言って部屋を見回した彼女は、足元に置かれたゴミ箱に目を止める。
やばい!
あの中にはさっき捨てたエロ漫画が……。
じっとゴミ箱の中を見ていた栗原専務が、横向きにヒザをそろえて屈むと、なんと中に入っているエロ漫画を取り出した。
「これは捨てるの?」
栗原専務がいつもの調子で淡々と聞いてくる。
「え、あ、はい。捨てます」
あまりに事務的に聞かれたので、こちらも普通に答えると、彼女はニッコリと微笑んだ。
「じゃあ、私がいただくわ。中村さんの趣味、悪くないわね」
そのまま、さっさと自分のカバンに仕舞い込んでしまった。
「お姉ちゃんナイス!」
デスクチェアに座った瑠理が親指を立てて喜ぶと、栗原専務は首を横に振った。
「ダメよ、私が使うんだから。あ、いえ。今度、拘束系Vtuberの企画があってね!」
彼女はホントかウソか分からない話をすると、顔を赤くしてコホンと咳ばらいした。
カレンが言いたい放題で最悪の雰囲気になったが、栗原専務が実力を発揮。
カレンに負けを認めさせて、帰らせたのだった。
「みなさん、すいませんでした」
俺はみんなに向き合うと頭を下げた。
「あやまらないで。今のは誰も悪くないよ」
菜乃が首を横に振って、俺の責任を否定した。
瑠理が菜乃の言葉にうなずく。
俺の後ろにいた親戚の真利が、栗原専務の前まで出てきた。
「あ、あの、タレント事務所って本当ですか?」
真利がおずおずと栗原専務に質問している。
「あなたは?」
「あ、私、健太にいの親戚の新島真利です。その、タレント活動に興味がありまして……」
真利が彼女なりに丁寧な態度で接している。
俺を相手にするときとはエライ違いだ。
栗原専務が俺を見るので、丁寧に頭を下げた。
真利が本気ならちゃんと話を聞いた方がいい。
「それなら、お母様とのお話に同席してください。瑠理は中村さんとパソコンの設定を頼むわ。後で見に行くから」
「はーい」
栗原専務は、俺の仕事のことで母さんと真利と話すそうなのでリビングに残ってもらう。
「じゃあ、菜乃と瑠理は俺の部屋に案内するから」
彼女らふたりを2階の俺の部屋へ案内してから、俺だけ必死にパソコンの梱包を運ぶ。
箱が思ったより大きくて階段を上がりにくい。
「あっ! ちょっと! 何してんの!?」
パソコンの箱を持って2階の部屋に入ると、俺のベッドに菜乃と瑠理が寝そべっていた。
ふたりとも制服のまま、うつ伏せで足をバタバタしている。
菜乃と瑠理は仲良く俺の枕に顔をうずめた。
「健太の匂いがするわ」
「これが健ちゃんの匂いかあ」
「おい、やめろよ。頼むからやめてくれ」
パソコンの箱を持ってるので、突っ立ったまま抗議する。
だがふたりは、余計に枕へ顔をうずめて匂いを嗅ぎだした。
「や、やめてくれーー!」
箱を置いて急いでやめさせた。
制服女子がふたり並んで俺のベッドに寝そべるとか目の毒だ。
部屋にいないと何をされる分からないので、大急ぎで荷物を運ぶ。
「ふう。瑠理、全部運んだぞ」
「じゃあ、配線つながったら言って」
俺は汗だくになりながら、瑠理の指示に従って配線をつなぐ。
「じゃあ、瑠理ちゃん。それまで宝探ししよ」
「健ちゃんの嗜好って気になる!」
菜乃、瑠理が寄り集まって悪だくみを始める。
まったく、女子が集まるとこうも大胆で、やりたい放題になるのか……。
ちゃんと処分しといてよかったよ。
「る、瑠理ちゃん、み、見つけた……」
「健ちゃん、ちょっとこれ縛られてるよぉ……」
急に静かになった2人が顔を寄せあって、何かを一生懸命見ている。
「おい、何を見て……うぎゃぁーー!!」
すべて処分したはずなのに、昔、手に入れた拘束系のエロ漫画を発見された。
恋人同士が刺激を求めて、ちょっと過激なプレイをするやつだ。
スマホがまだない小学生のときに、友達の兄貴からもらったエロ漫画じゃないか!
どこにいったのかと思ったら、ベッドの裏に隠してあったかぁ。
って今はそれどころじゃない!
「わぁぁああああーーーー!!!!」
俺は大声をあげてふたりの注意を惹くと、急いでエロ漫画を奪い取った。
「あ、健太、待って! これからなのにー」
「健ちゃんてば、エロい趣味してるんだね」
ふたりに物凄く不満を言われたが、そんなことは知らない。
俺は戸口の筒状ゴミ箱にエロ漫画を投げ入れた。
「はい終わりはい終わりはい終わり!! これはもらいもんなの! でも要らないから捨てる。さ、瑠理! パソコンの設定よろしく!」
「むー。まあいいケド。じゃあ、OSを最新に更新するから待ってて。終わったら健ちゃんにサーバーのログインパスワードとか決めてもらうよ」
瑠理の顔が何だか少し赤い。
そりゃ、あんな本を見た後だもんな。
瑠理みたいな、おこちゃま少女には刺激が強すぎたんだろう。
照れる彼女を見てると、俺まで恥ずかしくなる。
ちょんちょんと肩をつつかれたので横を見ると、菜乃まで顔を赤くして俺を見ていた。
そっと俺に顔を寄せてくると、片手を口に当てて耳元でささやく。
「すぐは無理でも、徐々にならできなくないかも」
物凄く小声でつぶやかれた。
自分の顔が火を噴くほど熱くなる。
狭い俺の部屋に顔を赤らめた女子ふたり。
俺は頭がどうにかなりそうで、それを誤魔化そうと必死になった。
まずはVtuberデビュー当日の流れについて、気になってたことをふたりに質問する。
とっくにデビュー済みで、さんざん配信をしているベテランふたりは相当頼りになった。
エロ漫画のせいで最初は変な雰囲気だったが、仕事の話になると真剣になるあたり、さすがプロと言ったところである。
パソコンの設定もいくつかのパスワードを決めて、配信アプリのダウンロードも終えた。
これで配信機材の準備は万全だ。
ちょうど階段を上がる音が聞こえて、部屋の扉をノックされる。
「健太にいの部屋はここです」
「真利さんありがとう。中村さん、入っていい?」
俺が「どうぞ」と声をかけると、栗原専務が扉を開けた。
「瑠理が設定したなら問題ないと思うけど」
そう言って部屋を見回した彼女は、足元に置かれたゴミ箱に目を止める。
やばい!
あの中にはさっき捨てたエロ漫画が……。
じっとゴミ箱の中を見ていた栗原専務が、横向きにヒザをそろえて屈むと、なんと中に入っているエロ漫画を取り出した。
「これは捨てるの?」
栗原専務がいつもの調子で淡々と聞いてくる。
「え、あ、はい。捨てます」
あまりに事務的に聞かれたので、こちらも普通に答えると、彼女はニッコリと微笑んだ。
「じゃあ、私がいただくわ。中村さんの趣味、悪くないわね」
そのまま、さっさと自分のカバンに仕舞い込んでしまった。
「お姉ちゃんナイス!」
デスクチェアに座った瑠理が親指を立てて喜ぶと、栗原専務は首を横に振った。
「ダメよ、私が使うんだから。あ、いえ。今度、拘束系Vtuberの企画があってね!」
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