学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

ただ巻き芳賀

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第20話 従妹の真利は本気だす

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 家で預かっている従妹いとこの真利に、俺とカレンの関係が上手くいってないとうっかり話してしまった。
 彼女は恋愛や男に興味ないと言うくせに、なぜか俺の好みをしつこく聞いたり、カレンとの関係を妙に気にしたりする。
 とにかく立ち入った質問が多いのだ。

 だから、俺とカレンに距離ができて別に彼女ができたとなれば、絶対に食いついて面倒臭いことになる。

「別に何でもないよ」
「ちょっとぉ。教えてよ、健太にい!」

 ヤバイヤバいと部屋へ逃げ込む。
 ここ最近のカレンとのゴタゴタなんて、彼女にとって燃料でしかない。
 女子校でネタにされてたまるか。
 真利が部屋の外で話を聞かせろとわめいている。
 俺は部屋の戸を押さえて貝のように閉じ籠っていると、部屋の前にいた真利は「もういい」と憤慨した。

 ホッとしたのもつかの間、今度は戸を開けざる負えない一言を彼女が言い放つ。 

「おばさんに、健太にいがカレンさんとモメてるの教えてあげよーっと」
「わ、馬鹿、おまえ、やめろよ!」

 真利め!
 俺の弱点をよく知っていやがる!
 母さんに話したら、俺が幼馴染みとケンカしたと隣近所に触れて回るじゃないか。

 観念して部屋の戸を開けると、笑顔の真利が部屋に飛び込んで来た。



 お菓子まで用意した真利は、ペタリと部屋の床に女子座りして楽しそうに根掘り葉掘り聞いてきた。
 結局、カレンと距離を置いてるいきさつを話してしまった。
 ただ、何とか菜乃と付き合っていることは伏せた。

 しかしだ。
 なぜ俺の周りには、人を困らして振り回す女性ばかりなんだ。

「カレンさんって、健太にいへの接し方が酷いのね。私にはそんな風に見えなかった」
「女子同士の付き合いは特に気を遣ってるみたいだ。俺とは接し方が違うんだろ」

「逆に本命にこそ優しくすべきなのに分かってないな。幼馴染みだから素直になれないのかしら」
「本命って?」

 聞き返すと、真利は何でもないと首を横に振った。

「そんなことよりも……」

 四つん這いになった真利が、テーブルを迂回して俺との距離をつめる。
 ゴクリと真利の生唾を飲む音が聞こえた。

「な、何?」

「カレンさんと距離を置いてるってことはさ、健太にいは今……フリーってことよね?」
「え、ああ、まあ、そうなるかな……」

 菜乃のことが頭をよぎったが、絶対に言わない方がいいだろう。
 真利は基本おしゃべりだ。
 母さんやカレンにすぐ伝わるだろうから。

 俺が真利の問いにうなずくと、彼女は満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ、私も本気だそうかな?」
「本気って?」

 聞き返すと、真利が俺の横にくっついて座った。

 俺の手首をつかむと、なんと深紅色のプリーツスカートから出た脚に俺の手をのせたのだ。
 彼女のすべすべの脚から体温が伝わる。

「健太にいはさ、私のことってどう思ってるの?」
「ま、真利!? ど、どうって⁉」

「年下がアリかナシで言ったら……どっち?」
「あ、あの、真利さん!?」

 真利が横からもたれかかって密着してくる。
 寄り添われた俺は、慌てて立ち上がった。
 なんかこのまま座っててはイケナイ気がしたから。

「うーん。やっぱ、急に攻略は無理か……」
「え、何!? どういうこと!?」

「まずは先に敵戦力を把握しよ。健太にいの女友達っていつ来るの?」
「? 金曜日だよ」

「その日は私も混じらせてね」
「あ、いや、困るよ。来る人たちもVtuberの関係者で、遊びじゃないんだし」

 慌てて拒否すると真利が目つきを鋭くした。

「そうなんだ。じゃあ、私がVtuberに興味あるなら一緒に居させてくれるのかな?」

 俺の反応を見ながらニマニマしている。

 そういう言い方をされると断りづらい。
 真利が本当にVtuberになりたいんなら、またとないチャンスだからだ。

 なんたって、カワイイ総合研究所の栗原専務と、登録者100万人を超えるルリアの中の人、栗原瑠理が来るんだ。
 真利が本当に将来Vtuberになりたいと考えているなら、親戚として力になってあげたい。

 だが本当に真利は、Vtuberに興味なんてあるんだろうか?
 少し前は俺に「私がファッション誌の読者モデルになったら惹かれる?」なんて意味不明な質問をしてきたくらいなのに。
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