常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

文字の大きさ
上 下
61 / 63
番外編 その4 それから……

再会 その2

しおりを挟む
 ――――

 するとルーフェはこんな事を話す。

「それにしてもトリウスさんから、こうして会いたいと聞いたときには、嬉しいと思ったけど、驚いたな。
 だって、あれから三年も経ってから、だったから」

 彼のそんな言葉に、トリウスはふっと微笑む。

「私も、役目が忙しかったからな。
 ラキサの代わりに、私は私なりに冥界の番を果たすための準備に、時間をかけてしまってな
 だからこうして会うのに、こうもな」

「ふーん。トリウスさんも、大変だったのですね」
 
 エディアもそう、彼に言う。

「まぁ、な。あれからこっちも、大変ではあったのだ」

「……私たちも、子供が出来てから少し大変、でしたから。
 もう四人目だけど、それでも世話は私もルーフェも、一苦労。……でも、村のみんなも面倒を見てくれたりもしますし、助かってます」

 彼女も、ルーフェも、この三年で色々あったのだ。
 もちろん幸せではある。だけど大変なことも、やはりいくらかある。
 それが……人生、と言うものだ。

「子供、か。君たちもどうやら、良い人生を送っているようだ」

 ルーフェは頷いた。

「おかげさまで。……大変なかともありますけれど、僕たちは幸せです」



 ――――

 そんな時に、扉からノックとともに、声が聞こえた。

「遅れてごめんなさい! 今到着しました!」

 ルーフェも、トリウスも、聞き覚えのあった声。

「ようやく来たみたいだな。どれ、私が迎えに行くとしよう」
 
 そうトリウスは、席を立つと、玄関先へと向かい、扉を開けた。
 

 扉の先にいたのは、旅人風の格好をした、二人の少年少女だった。

「ただいま、お父様。三年ぶりの里帰りですね」

 少女はトリウスの娘、ラキサである。

「おお! ようやくこうして、直接会う事ができたな。私は嬉しい」

 久しぶりの再会に、トリウスは自分の愛娘を、抱擁する。

「お父様も……お変わりのないようで、良かったです」

「ははは、そうだな。……そして」

 今度は、娘の隣にいる青年に、目を向けるトリウス。

「君がテオくん、だね? 娘とともに旅をしてくれている、想い人と聞いたよ」

「あはは。お恥ずかしながら、娘さんとは仲良くさせて頂いてます」

「テオとの仲は、お父様もよく知っているでしょ? とても優しい、人なの」 

 ラキサもまた、テオの事を紹介する。

「もちろん、よく知っているとも。
 ……正直娘の一人旅は、心配ではあったが、君のような相手と一緒で良かった、
 これからも娘の事を、よろしく頼むよ」

 どうやらトリウスも、彼を信頼していた。
 ――もちろん。そう言うかのように、テオは頷く。

「はい! だって僕にとっても、ラキサはとても大切な、人ですから!」

「……テオっ」

 テオとラキサ、二人もまた、とても仲睦まじい感じだ。

「それは、それは。
 ……さて、では二人もそろそろ、家に入るとしようか。ルーフェ達も、待っているからな」

 そう、トリウスはラキサとテオを、家の中へと案内する。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...