常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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 番外編 その3  ささやかな幸せの、物語。

父親として

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 ――――

 それから、また日にちが経ち。
 
「それじゃあね、エディア」

 仕事の支度をしたルーフェは、家のベッドで横になっているエディアへと声をかけた。

「行ってらっしゃい、ルーフェ。今日もお仕事、頑張ってくださいね」

「ミリナも、ありがとう。僕が出かけている間、エディアの事をよろしく頼むよ」

 彼は今家にいる少女、ミリナにもそう言う。
 彼女も最近、この家で色々と世話を焼いてくれる。なぜならば……



「ふふふ、私からもありがとうね。
 ……もう、こんなに大きくなって。一人で何かするのも、出来ないから」

 そう。エディアのお腹の子は、さらに大きくなって、ベッドの毛布からはそれが、大きく膨らんでいるのが見える。

「それに、分かるの。
 きっともうすぐ産まれそうだって。名前だって、もう決めているのよ」

「へぇ! ねぇねぇ、どんな名前なの? 教えてくれないかしら?」

「いいわよ、ミリナちゃん。えっとね……」


 
 しかし、ルーフェにはゆっくりしている、時間はなかった。

「そろそろ、僕は行かないと。今日は少し遠い牧草地での仕事だから、帰りは遅くなると思うけど……早く帰るように、するから」

 そう言ってはエディアの傍に来て、口付けを交わした。

「……んっ。ありがとう、ルーフェ」

 エディアとルーフェ、二人は笑い合ってそして、彼は家を後にした。


 
 ――――

 羊の群れの、放牧。
 群れは村の牧場から、いくらか離れた小高い山の中腹に位置する、青々とした牧草地にて。


 何十頭もの羊が、牧草地の草を食んだりなどして過ごす中、ルーフェは近くの岩に腰掛け、少し考えにふけっていた。

 ―ー本当に、良かったな。色々あったけど……ここまで来れて、さ――

 彼が思い浮かべるのは、村での日々と、そしてエディアのこと。
 何もかも、本当に……。

 ――それにしても、この僕が父親、か。
 旅をしていた頃はずっと、エディアを取り戻すことばかり、だったからな――

 まさか自分が子を持つとは、今でも信じられない。だけど……

「まぁ、なるからには良い父親に……ならないと」

 彼がそう一人呟いた、時だった。



「ルーフェさん! ルーフェさん」

 すると遠くから、誰かの声が聞こえた。
 見ると草地の向こうから、ケインが手を振りながら、こちらに走って向かって来ていた。

「ケイン、じゃないか。こんなに遠くまで、どうしたんだい?」

 ケインは彼のもとに来ると、息を切らしていたのを整え、こう言った。

「大変なんだ、急いで家に戻って来て!
 エディアさんが――!」
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