53 / 63
番外編 その3 ささやかな幸せの、物語。
幸せへの路
しおりを挟む
―――――
こうしてルーフェとエディア、それにミリナとケインの四人は、テーブルを囲んでお茶をしていた。
紅茶とケーキをたしなみながら、楽しく話をしていた。
そして今話しているのは、ルーフェとエディア、二人の思い出話であった。
今でこそ、この村で幸せな二人。
しかし、そこまでの道のりは決して平坦ではない。
元々ルーフェとエディアは、ずっと、ずっと遠い町で暮らす、良家の貴族とその召使だった。
幼いころから共にいた二人、育まれた友情は、いつしか恋心へと変わった。
だが、それは同じく貴族であるルーフェの両親はもちろん、周囲は決して許さない身分違いの恋だ。
恋する二人は、町から駆け落ちしようとしたが、その時エディアはルーフェの両親に捕らえられそして、あらぬ罪を着せられてその生命を奪われた。
唯一の大切な人を喪い、悲しみに沈んだルーフェ。
そして彼が選んだ道が……死んだ人間を、取り戻すといったものだった。
この世界には現世とそして、亡くなった人間の魂が行くとされる冥界、二つを行き来する手段があると言う伝承があった。
――冥界に行き、失ったエディアをそこから連れ戻す。
その願いのためにルーフェは家も財産も、そして己の心さえ捨てて、長い間旅を続けた。
しかし、彼は旅の最後、霊峰ハイテルペストにて魔術師のトリウスと、一人の少女ラキサと出会い、彼は変わる。
ずっとただ、エディアを復活させることしか考えていなかった。
しかし二人との交流で、人間らしさを取り戻し、本当の願いを知る。
それは、『エディアとともに、少しでも長く共に、幸せに歩む』こと。
本当の願いに気づいたルーフェは、冥界へと向かい……ついにその願いを果たした。
冥界から連れ戻したエディアとともに、ルーフェはこの村に移り住み、平和に暮らしていた。
それはそれは、本当に幸せな日々だった。
――――
「それじゃ、おそくなったから私達、これで失礼するわね。
紅茶とケーキ、ありがと!」
「エディアさんも元気そうで、良かった。また時々、様子を見に来てもいいかな」
玄関先で、ミリナとケインは別れを伝える。
「こちらこそ。おかげでとっても、助かりましたよ」
「ミリナも、ケインも、いつだって大歓迎だとも。手伝ってくれるのも嬉しいけど、ただ遊びに来るだけでも、構わないからさ」
ルーフェ、エディアも、二人にそう言葉をかけた。
「二人とも、とても優しいのね。
……それじゃ、また! エディアさんのお腹の子、元気に生まれるといいわね!」
そうミリナは言うと、ケインを連れて家から去った。
こうしてルーフェとエディア、それにミリナとケインの四人は、テーブルを囲んでお茶をしていた。
紅茶とケーキをたしなみながら、楽しく話をしていた。
そして今話しているのは、ルーフェとエディア、二人の思い出話であった。
今でこそ、この村で幸せな二人。
しかし、そこまでの道のりは決して平坦ではない。
元々ルーフェとエディアは、ずっと、ずっと遠い町で暮らす、良家の貴族とその召使だった。
幼いころから共にいた二人、育まれた友情は、いつしか恋心へと変わった。
だが、それは同じく貴族であるルーフェの両親はもちろん、周囲は決して許さない身分違いの恋だ。
恋する二人は、町から駆け落ちしようとしたが、その時エディアはルーフェの両親に捕らえられそして、あらぬ罪を着せられてその生命を奪われた。
唯一の大切な人を喪い、悲しみに沈んだルーフェ。
そして彼が選んだ道が……死んだ人間を、取り戻すといったものだった。
この世界には現世とそして、亡くなった人間の魂が行くとされる冥界、二つを行き来する手段があると言う伝承があった。
――冥界に行き、失ったエディアをそこから連れ戻す。
その願いのためにルーフェは家も財産も、そして己の心さえ捨てて、長い間旅を続けた。
しかし、彼は旅の最後、霊峰ハイテルペストにて魔術師のトリウスと、一人の少女ラキサと出会い、彼は変わる。
ずっとただ、エディアを復活させることしか考えていなかった。
しかし二人との交流で、人間らしさを取り戻し、本当の願いを知る。
それは、『エディアとともに、少しでも長く共に、幸せに歩む』こと。
本当の願いに気づいたルーフェは、冥界へと向かい……ついにその願いを果たした。
冥界から連れ戻したエディアとともに、ルーフェはこの村に移り住み、平和に暮らしていた。
それはそれは、本当に幸せな日々だった。
――――
「それじゃ、おそくなったから私達、これで失礼するわね。
紅茶とケーキ、ありがと!」
「エディアさんも元気そうで、良かった。また時々、様子を見に来てもいいかな」
玄関先で、ミリナとケインは別れを伝える。
「こちらこそ。おかげでとっても、助かりましたよ」
「ミリナも、ケインも、いつだって大歓迎だとも。手伝ってくれるのも嬉しいけど、ただ遊びに来るだけでも、構わないからさ」
ルーフェ、エディアも、二人にそう言葉をかけた。
「二人とも、とても優しいのね。
……それじゃ、また! エディアさんのお腹の子、元気に生まれるといいわね!」
そうミリナは言うと、ケインを連れて家から去った。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる