常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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 番外編 その3  ささやかな幸せの、物語。

幸せへの路

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 ―――――

 こうしてルーフェとエディア、それにミリナとケインの四人は、テーブルを囲んでお茶をしていた。
 紅茶とケーキをたしなみながら、楽しく話をしていた。
 

 そして今話しているのは、ルーフェとエディア、二人の思い出話であった。
 今でこそ、この村で幸せな二人。
 しかし、そこまでの道のりは決して平坦ではない。


 元々ルーフェとエディアは、ずっと、ずっと遠い町で暮らす、良家の貴族とその召使だった。
 幼いころから共にいた二人、育まれた友情は、いつしか恋心へと変わった。
 だが、それは同じく貴族であるルーフェの両親はもちろん、周囲は決して許さない身分違いの恋だ。
 恋する二人は、町から駆け落ちしようとしたが、その時エディアはルーフェの両親に捕らえられそして、あらぬ罪を着せられてその生命を奪われた。
 

 唯一の大切な人を喪い、悲しみに沈んだルーフェ。
 そして彼が選んだ道が……死んだ人間を、取り戻すといったものだった。
 この世界には現世とそして、亡くなった人間の魂が行くとされる冥界、二つを行き来する手段があると言う伝承があった。


 ――冥界に行き、失ったエディアをそこから連れ戻す。
 その願いのためにルーフェは家も財産も、そして己の心さえ捨てて、長い間旅を続けた。


 しかし、彼は旅の最後、霊峰ハイテルペストにて魔術師のトリウスと、一人の少女ラキサと出会い、彼は変わる。
 

 ずっとただ、エディアを復活させることしか考えていなかった。
 しかし二人との交流で、人間らしさを取り戻し、本当の願いを知る。
 それは、『エディアとともに、少しでも長く共に、幸せに歩む』こと。
 本当の願いに気づいたルーフェは、冥界へと向かい……ついにその願いを果たした。 



 冥界から連れ戻したエディアとともに、ルーフェはこの村に移り住み、平和に暮らしていた。
 それはそれは、本当に幸せな日々だった。


 ――――

「それじゃ、おそくなったから私達、これで失礼するわね。
 紅茶とケーキ、ありがと!」

「エディアさんも元気そうで、良かった。また時々、様子を見に来てもいいかな」

 玄関先で、ミリナとケインは別れを伝える。

「こちらこそ。おかげでとっても、助かりましたよ」

「ミリナも、ケインも、いつだって大歓迎だとも。手伝ってくれるのも嬉しいけど、ただ遊びに来るだけでも、構わないからさ」

 ルーフェ、エディアも、二人にそう言葉をかけた。

「二人とも、とても優しいのね。
 ……それじゃ、また! エディアさんのお腹の子、元気に生まれるといいわね!」

 そうミリナは言うと、ケインを連れて家から去った。

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