常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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番外編 その2  竜の娘の、その旅路。

二匹の竜

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 この言葉に、ラキサは不思議に思った。

「それって、どう言うことかしら?」

 その問いを聞き、軽く微笑んだ、テオ。

「言葉通りの意味、さ。僕とこの村の人は、普通の人間じゃ、ないんだ。
 ……今、見せてあげるよ」

 と、彼は瞬間、高台から後ろに倒れるように、下へと落下した。

「テオっ!」

 テオの姿は消え、慌てたラキサは落下した先を、とっさに見に行こうとした。
 すると――



 ブワッ!

 するとそこからいきなり、激しい強風とともに、黒く巨大な影が飛びたった。
 そう、それは――

〈これが、僕の本来の姿さ〉

 空を飛ぶもの。巨大な翼を広げ、宙を浮かぶのは――細身で優美な、漆黒の竜であった。

〈この姿で飛べば旅はアッという間だけど、面白くないしね。それに大きくて目立つし、だから人間の姿をずっとしていたんだ。
 やっぱり、旅はゆっくりと、楽しみたいよね〉

 黒竜はテレパシーのようなもので、ラキサの心に直接、語りかけてくるようだ。

「もしかして……テオくん、なの?」

 彼女の言葉に、竜はその長い首で、頷いた。

〈もちろん。この村のみんなだって、そうなんだ。
 それに……君だって〉


 テオの故郷である、ルインズドラ。そこは竜の一族の、隠れ里であったのだ。


 ようやく彼女は、この言葉で、悟った。

「竜の生き残りは、私だけだって、ずっと思っていたの。
 テオくんと私は、一緒……ふふっ」

 ラキサは、そう――嬉しかった、


「とても、嬉しいな。私、独りなんかじゃ、なかったんだ!」




 ――――

 はるか天高く、雲海を突き抜けて大空を飛ぶ二体の竜。
 漆黒の竜と、それよりいくらか大きな、白銀の竜。
 二体は隣り合いながら、仲睦まじそうに、まるで白と青の空をステージに、舞踏を舞うかのようだ。

〈テオ、……テオ! 私、貴方に会えて、良かった!〉

 ラキサはテオに、そう呼びかけた。

〈僕もだよ! 人間の姿も、その白く輝く竜の君も、とても綺麗だ! ラキサ!〉

 互いにそう呼びあいながら、翼をはためかせて、さらに空へと昇る。
 眼下には、白い雲が広がる、大雲海。
 竜は天空から、それを見下ろす。

〈どうかな? さっきも言ったけど、旅が終わっても、僕は君と一緒にいたいんだ。
 本当に、君が大好きなんだから!〉

 ラキサもまた、喜んでいるようだ。

〈まだまだ先のことかもしれないけど、テオの気持ち、私は受け入れるよ。
 ふふっ、その時は……私のお父さんにも、伝えないとね〉


 出会いは偶然ではあった。が、竜の一族である二人の絆、それは確かに本物だった。
 

 それから数年後、ラキサとテオの二人はさらに絆を深め、この竜の里へと戻り、ついに結ばれることになる。
 ……しかし、これはまだ先の、別の話となるだろう。
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