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番外編 その2 竜の娘の、その旅路。
そして、最後の場所へと
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――――
あれから一晩経ち、そして朝……。
早めに宿屋を出た二人は、朝日に照らされ、白く輝くクレトーリェの街並みを、散策していた。
白い石造りの家々の間、その通り道を歩く、ラキサとテオ。
「……やっぱりここは、美しい街だね。潮の香も心地いいし、景色ももちろん綺麗だ!」
先を歩くテオは、スキップして先を歩き、くるりと一回転して体を回す。
見てわかるとおり、とても明るい感じの彼だ。
――でもテオくんの気持ち、分かるかしら。だって、とても綺麗ですもの――
ラキサも街並み、そして朝日に輝く海を、眺めている。
やっぱり、とても綺麗な所だ。
――確かにテオくんのこと、不思議だけど、こうして見ると普通の男の子って、感じかしら――
実際は普通の男の子など、あまり知っているわけでは、決してない。
あくまでイメージではあるものの、そんな考えを……ラキサは抱いた。
――――
旅は、相も変わらず続く。
クレトーリェを出てからも、再び様々な場所を巡り歩いた。
テオとの旅、それは彼の巡って来た、旅路を再び訪れる旅。
しかし、それも間もなく……。
小高い山々の連なる、山脈を歩く二人。
そこはどこも標高は低く、山頂付近にさえ新緑色の草木が生い茂っていた。
視界に広がるのは、一面の山々と、そして緑。
晴れた空には小鳥が、何匹も飛んでいるのさえ見える。
ここもまた、とても魅力的な、そんな場所だった。
ラキサも、そしてテオも、山の景色を眺めていた。そんな時……
「……それにしても、テオくん」
「ん?」
彼女の呼びかけに、前を歩くテオは振り返り、ラキサを見た。
「私たちの旅、始めてからもう……結構経つ感じかしら。
思い返したら、本当に色々な、素敵な場所ばかりだったな」
この意見には、テオも同じだった。
「それは、ね! 平和で、美しくて、そしてどこも僕が大好きな……そんな所、ばかりだよ。
……やっぱり旅って、いいよね」
これまで見てきた、様々な場所。
ラキサも、そしてテオも、その思い出はかけがえのないものであった。
「……でも、やっぱり世界は広いな。数か月旅し続けても。多分まだ、ほんの一部しかまだ知らないんだ。
だから、まだ旅は、これからだね。
けど……」
と、彼はさらに、あることを続ける。
「そろそろ、僕たちの旅は……ひと段落しそうだ。
だって、次に向かう場所が、僕のこれまで行って来た場所をめぐる、最後の場所なんだから」
「最後、って?」
思いもよらない言葉。それに、ラキサはきょとんとする。
「別に驚くことはないさ。どんな旅にも、終わりは来るんだから。
ま、終わりって言うか、さっきも言ったとおり、あくまでひと段落なんだけどさ」
「でも、もうそこまで来たんだね。ちょっと、早い感じかも」
「そうかも、しれないね」
過ぎてみれば、あっという間と言う、気もしないではなかった。
そしてラキサは、テオに一つたずねる。
「でも、最後の目的地、一体どこに向かうのかしら。
私……少し、気になるな」
最後の場所、そう言われるとラキサは、気になってしまう。
それにテオは、ふふっと悪戯っぽい笑みを、見せる。
「それは、行ってのお楽しみ、さ。
唯一言えることといえば、そこは僕の旅の、始まりの場所、くらいだよ」
あれから一晩経ち、そして朝……。
早めに宿屋を出た二人は、朝日に照らされ、白く輝くクレトーリェの街並みを、散策していた。
白い石造りの家々の間、その通り道を歩く、ラキサとテオ。
「……やっぱりここは、美しい街だね。潮の香も心地いいし、景色ももちろん綺麗だ!」
先を歩くテオは、スキップして先を歩き、くるりと一回転して体を回す。
見てわかるとおり、とても明るい感じの彼だ。
――でもテオくんの気持ち、分かるかしら。だって、とても綺麗ですもの――
ラキサも街並み、そして朝日に輝く海を、眺めている。
やっぱり、とても綺麗な所だ。
――確かにテオくんのこと、不思議だけど、こうして見ると普通の男の子って、感じかしら――
実際は普通の男の子など、あまり知っているわけでは、決してない。
あくまでイメージではあるものの、そんな考えを……ラキサは抱いた。
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旅は、相も変わらず続く。
クレトーリェを出てからも、再び様々な場所を巡り歩いた。
テオとの旅、それは彼の巡って来た、旅路を再び訪れる旅。
しかし、それも間もなく……。
小高い山々の連なる、山脈を歩く二人。
そこはどこも標高は低く、山頂付近にさえ新緑色の草木が生い茂っていた。
視界に広がるのは、一面の山々と、そして緑。
晴れた空には小鳥が、何匹も飛んでいるのさえ見える。
ここもまた、とても魅力的な、そんな場所だった。
ラキサも、そしてテオも、山の景色を眺めていた。そんな時……
「……それにしても、テオくん」
「ん?」
彼女の呼びかけに、前を歩くテオは振り返り、ラキサを見た。
「私たちの旅、始めてからもう……結構経つ感じかしら。
思い返したら、本当に色々な、素敵な場所ばかりだったな」
この意見には、テオも同じだった。
「それは、ね! 平和で、美しくて、そしてどこも僕が大好きな……そんな所、ばかりだよ。
……やっぱり旅って、いいよね」
これまで見てきた、様々な場所。
ラキサも、そしてテオも、その思い出はかけがえのないものであった。
「……でも、やっぱり世界は広いな。数か月旅し続けても。多分まだ、ほんの一部しかまだ知らないんだ。
だから、まだ旅は、これからだね。
けど……」
と、彼はさらに、あることを続ける。
「そろそろ、僕たちの旅は……ひと段落しそうだ。
だって、次に向かう場所が、僕のこれまで行って来た場所をめぐる、最後の場所なんだから」
「最後、って?」
思いもよらない言葉。それに、ラキサはきょとんとする。
「別に驚くことはないさ。どんな旅にも、終わりは来るんだから。
ま、終わりって言うか、さっきも言ったとおり、あくまでひと段落なんだけどさ」
「でも、もうそこまで来たんだね。ちょっと、早い感じかも」
「そうかも、しれないね」
過ぎてみれば、あっという間と言う、気もしないではなかった。
そしてラキサは、テオに一つたずねる。
「でも、最後の目的地、一体どこに向かうのかしら。
私……少し、気になるな」
最後の場所、そう言われるとラキサは、気になってしまう。
それにテオは、ふふっと悪戯っぽい笑みを、見せる。
「それは、行ってのお楽しみ、さ。
唯一言えることといえば、そこは僕の旅の、始まりの場所、くらいだよ」
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