常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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番外編 その2  竜の娘の、その旅路。

大海原に馳せる思い

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 ――――

 あれからいくつかの町や村、そして森や川、山を抜けて、旅を続けた。

 
 今二人は、青い海が横に広がる、海岸沿いの道を歩いていた。
 海には大型の船が一隻見え、帆に風を受けながら大海原を進み。遥か向こうに見える巨大な港町
へと向かっていた。
 

 かなり離れている岬に位置する、港町。そこには他に同じくらいの規模を持つ、何隻もの船が停泊している。

「あそこの港町、クレトーリェは世界有数の大港町なんだ。
 僕のまだ知らない場所からも、見たことない物や人が集まって、面白い所だよ。ここの海でとれた魚介類を使った海鮮料理も、すごく美味しいのさ」

 テオを隣を歩くラキサに、そう楽しそうに話す。

「それにしても、この海もとても綺麗だね。とても青くて、キラキラしてさ。
 あの海の向こうには、まだまだ僕も、ラキサさんも知らない世界が、広がっているんだろうな。」

「海、かぁ。私は海に、見慣れてなくて……見とれちゃう。
 私はずっと山の奥に住んでいたから、縁がなかったの。……やっぱり、素敵かな」

 海に見とれていたのは、ラキサもまた同じだった。

「ラキサさんも、海には慣れていないんだね。
 僕も、旅する前はずっと山奥の里に住んでいてさ、君と同じ思いなんだ」

 そしてテオは、港町クレトーリェを遠く見据えて、続ける。

「この調子だと、夕方にはあそこに着きそうだね。
 街について、落ち着いたら君のこと……もっと知りたいな」

 二人で旅をして、もう十日以上は経った。
 はじめは少し慣れていなかったが、その間で、二人の距離は確実に縮んでいたのだ。
 ……けど、まだまだ彼女とは、仲を深められたらと……。テオはそう、思っているようにも見えた。
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