常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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番外編 その2  竜の娘の、その旅路。

訪れた町での、出会い

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 ――――


 とある地にて。
 新緑色に広がる草原の中にある、賑やかな雰囲気の、少し大きな町があった。
  
 その立派な町景色を正面に、草原に立つ一つの影。


 旅人風の恰好をし、背中に荷物を背負った、透き通るような水色の髪と瞳を持つ、美しい少女。

 ――うーん! 良い町ね。ここまで長く歩いたから、羽休めにいいかな――

 瞳を輝かせ、新しい場所に期待を胸を膨らませる、彼女。
 少しだけ不思議な、旅人の少女……。これは彼女の、旅路の一部となる。



 ――――

 この町……アリアスレーンは、ガラス工芸品により発展を遂げた町だ。
 
 少女が町に入ると、そこにはあちこちにガラス製の置物や芸術品が、飾られていた。
 外から訪れた観光客も数多く、通りには人で賑わっていた。

 ――まるで、お祭り……かな。嫌いじゃないわ――
 
 周囲を見て回りながら、少女は感心した。
 すると……その時。



「うわっと!」

 向かい側から歩いて来た誰かに、ついぶつかってしまった。
 あまり周りを見ていたせいか、前がついつい疎かになっていた。


 ぶつかった相手は態勢が崩れ、地面に倒れる。

「あっ! ……ごめんなさい! ついうっかりしていて」

 少女はそう謝り、手を差し伸べた。
 さきほど倒れた、その相手は彼女の手を、掴んで起き上がった。

「僕の方こそ。この町に来たばかりで、ちょっと緊張していたんだ。
 こっちも気づかずに、ぶつかったんだ。謝るのは僕さ」



 相手の正体は、少女よりも小柄な、黒髪黒目の少年だった。
 少女と見紛うほどの可憐な姿で、丸く大きな瞳に、髪は羊の毛のようにふわふわだ。
 そして恰好も、彼女も似た感じの……旅人服だ。おそらく彼も、旅人なのだろう。



 この不思議な少年は。少女ににこやかに笑いかける。 

「でも、君のように綺麗な子と、こうして会えて嬉しいよ。
 良ければ……名前を、教えてくれたら嬉しいな」

 少年の問いに、少女はこう答えた。


「私の名前は――ラキサ。世界を旅している、旅人……なんだ」
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