常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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導入

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 深く暗い、密林に閉ざされた遺跡の奥……。

 キシャアア!

 闇の中、剣を持ち、構えを見せる人影の姿。
 そしてその周囲を取り囲むのは、人間より一回りも大きい、四足の化け狼あった。


 遺跡の中には、無数の生物の骨。……中には人骨も、いくつか混じっていた。
 ここはもはや、この化け狼の巣窟。
 何故此処に来たかは定かでないが、たった一人で乗り込んできたのだ。狼にとってはまさに、活きの良い獲物だ。
 


 開いた口からは鋭く輝く、白い牙と、そして零れる唾液。
 数は全てで七体程。
 狼は獲物の品定めをするかのように、人影を取り囲み、唸り声を上げながらその周囲を回る。
 

 そして、一匹の化け狼が、ついに我慢を切らして……飛び掛かった!


  だが――

 ズッ! ――ザバッ!

 人影は剣を一閃。 
 化け狼は一瞬、その横を何もなく通り過ごした……かに見えたが。
 狼は白目を向き、そして首と胴体が、おかしな方向にズレた。
 瞬間、首は下に落下し、首を失った胴体からは、噴水のように血液を吹き出し、倒れる。


 ……仲間が倒され、思わず固まる、残りの化け狼。
 だが、とうの相手は、剣を持ったまま涼しい顔だ。全然、余裕だとでも言いたいようだ。


 化け狼は、確かに一瞬怯えた。
 だが、数はこちらが上、そう考えたのか……今度は一気に、襲い掛かって来る。
 

 そして――




 ――――

 それから、間もなくして。
 辺りに転がるのは、切り刻まれた、先ほどの化け狼の亡骸だ。


 死屍累々のこの場を、歩む人影――。
 それはまだ若い、青年だろうか。
 彼の全身は返り血で、ひどいものだが、当の本人は全く気にする様子もない。



 青年はそのまま、遺跡の最深部へと。
 ランプで照らし、辺りを見回すとそこには……。
 最深部は広く、中央には――石造りの、大きな円形の何か、その痕跡があった。

「……」

 と言うのも、その物体は半壊された状態にあり、かつては完全な円形のものだったと思われるが、いまは半分も残っていない。
 

 青年はそれに、失望したように、呟く。


「ここも、違うか。……だが、あと少しの所まで来ている、
 ――もう少しだ」
 

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