テイルウィンド

双子烏丸

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第十二章 Grand Galaxy Grand prix [Restart〕

混戦と、そして―

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 ――――

 ……ブラッククラッカーにも、次第に追いついて来ている。
 ――どうにか、ジンジャーブレッドにも近づいてきたね――
 すると、そのジンジャーブレッドから通信が届く。
〈ほう? さすがはフウマだ。……ここまで来るとはな〉
 彼からの、称賛の言葉。
 ――だが。
「ジンジャーブレッドさん、声の調子が、その」
 通信で聞こえる声には、どこか強く無理をしているような、そんな気がした。
 無理して絞り出すような、ジンジャーブレッドの声。フウマは心配するも……。
〈私は問題ないとも。むしろ、今のこの時を、満足しているのだから〉
 その言葉には偽りは、ないのだろうが。
 ――まさかジンジャーブレッドさん、例の発作が――
 フウマはそれを察し、思わず言葉を発しようとしたが。
〈それよりも……まだまだ、レースを楽しもうじゃないか。フウマがどう、ここから切り抜けるか、楽しみだ〉
 ……だが、この様子では、仕方がない。
「分かった。すぐ向かうから、待っていてくれよ!」
 こうしてフウマも、覚悟を決めることにした。



 次に迫るのはマリンのクリムゾンフレイム。
 この辺りからさらに小惑星の密度が濃く、いくら高出力であったとしても、思うようにスピードを出せないでいた。
 テイルウィンドは一気に接近し、マリンが対処する間もなく先を越した。
 ――マリンさんも追い越して、そして――
 今度は、ホワイトムーンの二位の座を狙う。
〈……やるものですね。本当にフウマは、成長したと言いますか〉
 シロノの言葉に、フウマは答える。
「まあね! でもそう上から目線だと……」
 テイルウィンドとホワイトムーン、二機はすぐに並び、接戦へと持ち込む。
 先ほどマリンをあっと言う間に追い抜き、そしてあのシロノに、すぐに並んだフウマ。
「……足元を掬われるぜ!」
 今の彼は、かなり調子が良かった。
〈やはり……やりますね〉
 これにはシロノも認める、が。
〈でもこの私が、そう簡単に行くとでも!〉
 だがシロノも譲らない。
 二機の勝負は、ほぼ互角に近い、大勝負。
「やっぱりシロノも、すごいじゃないか!」
〈私だって、優勝を目指していますものね。フウマにも……そしてジンジャーブレッドにも、負けないですよ〉



 テイルウィンド、そしてホワイトムーンはともに、先頭のブラッククラッカーへと迫る。
 するとそのブラッククラッカーから、こうした通信が……。
〈ふっ、フウマも、シロノも……他の皆も、さすがだ〉
 ジンジャーブレッドは、そうフウマに話す。
「そうだね! 誰もかれも、凄いレーサーばかりさ。……ジンジャーブレッドさんだって」
〈この私に、そう言ってくれるのか。……嬉しいな〉
 するとシロノも、通信でこんな事を話す。
〈さてと……ようやくここまで来ましたね。あと少しで、このレースも――〉
 シロノの言う通り、小惑星帯はもうすぐ終わりだ。


 ブラッククラッカー、続いてホワイトムーン、テイルウィンドは小惑星帯を突破した。
「……確かにね。惑星サファイアも、もう目の前に迫っているしね」
 G3レース、最後の舞台である、青い星が中央に見える。
 ようやくここまで、来ることが出来た。
 長いようで……短かったかもしれない、このレース。
「シロノも、そしてジンジャーブレッドさんとも、良いレースが出来た気がするよ。
 でも……まだ最後まで、頑張って――」



 ――しかし。
 突如どこからか、機体の通信機能に、強力なジャミングが入る。
 ――これは! 一体どうしたって言うんだよ!?――
 訳の分からないことに、混乱するフウマ。
 シロノたちとの通信も難しくなり、さらに……何者かからの通信が入る。
〈君は、フウマ・オイカゼだな〉
 合成音声で、誰が誰だか分からない声。
「お前は、なんのつもりさ! どう言うつもりで、こんな事を!」 
 驚きを隠せないフウマに、何者かは続ける。
〈単刀直入に言うが、今すぐレースからは手を引け。優勝は、ジンジャーブレッドと言うことに、決まっているのでね〉
「はっ! 何を勝手な事を言うんだよ。そんな事なんて出来るわけないだろ」
 あまりに一方的な命令、当然フウマは反発する。
 だが……。
 次に発せられた続きの言葉に、彼は言葉を、失うことになった。


〈否が応でも、従うしかあるまい。もし君が――大事な彼女の、無事を願うのならな〉
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