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第十一章 束の間の安寧と、そして――
乱入者
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倒れた男の傍に、立っている人影。
暗闇から自ら歩み出て、現れたその正体は――ジョセフ・クレッセンである。
「さてと、やっぱり俺たちは、腐れ縁だな……カイル」
相変わらず抜けた表情で、ジョセフは苦笑いを浮かべて、カイルに言った。
カイルもカイルで、正直うんざりしたように、頭を抱える。
「ほんとだよ。まぁ、身分を偽ってレースに参加したは良いけど、そこにジョセフまでレーサーとして参加したと分かった時から、嫌な予感はしてたけど」
この会話……どうやら二人は、面識があるようだ。
そしてジョセフは、フウマの横に来ると、軽く肩を叩く。
「よう? 惑星サファイア以来だな。あの時は、楽しかったぜ、フウマ」
「……ジョセフさん、どうしてここに」
「言っただろ? このカイルとは、腐れ縁だってな。
何があるかと思い、狙いを探るために泳がせていたが……ようやく、動きを見せたな」
「……くっ!」
その言葉に、カイルはたじろぐ。
対して、彼を見据える、ジョセフ。
「さてと、んじゃいたずら小僧には、オジサンがお仕置きしないとな!」
ジョセフはカイルの元へと、向かおうとするが、今度は大男のディアスが立ちふさがる。
「よくも! キャプテンの邪魔はさせないぞ!」
これには、ため息をつくジョセフ。
「はぁ、ディアスも相変わらずだな。
……だが、この俺の相手になると思うなよ、若造?」
「ほざけ!」
そう叫び、ディアスの巨体が、ジョセフへと向かって来る!
まるで大型トラックのような、その迫力。
目の前のジョセフに、掴みかかろうとするディアス。
だが……。
「よっと!」
ジョセフは跳躍し、ディアスの頭に飛び乗り、それを足場にしてさらに飛んだ。
「俺を、踏み台に使うとは!」
「だから言ったろう? 相手になると思うな、って」
この二段ジャンプで、ジョセフは一気に、ブラッククラッカーの上に飛び乗った。
下には思いっきり悔しがるディアス。
「……ぐぬぬ」
「礼を言うさ、ディアス。おかげでこっちも楽が出来たよ」
彼にそう言い残すと、ようやく近くまで来たカイルへと、顔を向ける。
今度は互いに、すぐ目の前の距離――。
「キャプテン!」
すると内部で作業中の、女性が心配する様子を見せた。
「――心配しなくても、ジョセフの相手は僕一人で十分さ」
カイルは彼女にそう声をかけた後、彼もまたジョセフに向かい合う。
「さてと、よく分かったね。……と言いたいけど、ジョセフなら、もしかしたらと予感してたよ」
このカイルの言葉に、ジョセフはククッと笑う。
「上はで騒ぎがあったらしいが、あれは注意を引くための陽動……しかも、ご丁寧に全員に避難指示を出させて、都市の大部分を空にしていると来た。
他に狙いがあるとすればと考えれば、一番に考えられるのは――――このブラッククラッカーだと思ってな」
「……」
その言葉に、カイルは僅かに沈黙する。
……しかし、不敵な笑みを浮かべて彼は答えた。
「ああ。だってこの機体は、このレースの場に、あってはならないものだからね。
そして……この世の中にも」
ブラッククラッカーは、レースにあってはならない存在。
――どう言うこと、カイルは……何を知っているんだ?――
それを聞いたフウマは、その事に疑問を持ったが、今口を挟める状態ではない。
ブラッククラッカーの真上では、なおも二人が話を続ける。
「ほう? やはりこの機体には、何かあるらしいな。……で、一体何があるって言うのかな?」
「さぁ。それはご想像に、お任せするよ」
だがジョセフの問いに、カイルは首を振る。
どうやら答える気は、ないようだ。
ジョセフは軽い溜息をつき、こう言葉を続けた。
「教えるつもりなら、まぁいいか。
……だが、これ以上変な真似を、させるわけにはいかない」
そう、彼はカイルの前に、立ちふさがる。
カイルもカイルで、これには仕方がないと言った様子だが、彼の瞳は鋭い光を見せた。
「やっぱり、ジョセフなら、僕の邪魔をすると思ったよ。――なら!」
途端、カイルは光線銃を構える
それは先ほども見せた、早撃ちの動き。この動作は殆ど一瞬の出来事だった。
――しかし、ジョセフも同等か、それ以上の動きで銃を構え、カイルに突きつける。
両者銃口を突き付けられ、互いに身動きが取れない状況……
下ではフウマとディアス、そしてようやく意識を取り戻した男たちが、その様子を見ていた。
「キャプテン!」
ディアス、そして男たちは下からジョセフに向けて、銃を構える。
複数から銃を向けられるも、当の本人は余裕な様子。
「おっと! 悪いがこっちは、殺傷可能な程まで光線銃の出力を高くしているんだぜ。つまり、下手に手を出せば……大切なキャプテンはどうなるか」
おそらく、カイルも含めて全員、出力は相手が気絶する程度に抑えているのだろう。
だが……このジョセフは、どうだか。
マリンに銃を向けられた時には、彼女が人を傷つける真似が難しい事は、分かっていた。
しかし彼の場合は、それさえも怪しい。
ハッタリかもしれないが、本当の可能性も十分高い。
「……くっ」
下のディアス達は、仕方なく銃を下す。
暗闇から自ら歩み出て、現れたその正体は――ジョセフ・クレッセンである。
「さてと、やっぱり俺たちは、腐れ縁だな……カイル」
相変わらず抜けた表情で、ジョセフは苦笑いを浮かべて、カイルに言った。
カイルもカイルで、正直うんざりしたように、頭を抱える。
「ほんとだよ。まぁ、身分を偽ってレースに参加したは良いけど、そこにジョセフまでレーサーとして参加したと分かった時から、嫌な予感はしてたけど」
この会話……どうやら二人は、面識があるようだ。
そしてジョセフは、フウマの横に来ると、軽く肩を叩く。
「よう? 惑星サファイア以来だな。あの時は、楽しかったぜ、フウマ」
「……ジョセフさん、どうしてここに」
「言っただろ? このカイルとは、腐れ縁だってな。
何があるかと思い、狙いを探るために泳がせていたが……ようやく、動きを見せたな」
「……くっ!」
その言葉に、カイルはたじろぐ。
対して、彼を見据える、ジョセフ。
「さてと、んじゃいたずら小僧には、オジサンがお仕置きしないとな!」
ジョセフはカイルの元へと、向かおうとするが、今度は大男のディアスが立ちふさがる。
「よくも! キャプテンの邪魔はさせないぞ!」
これには、ため息をつくジョセフ。
「はぁ、ディアスも相変わらずだな。
……だが、この俺の相手になると思うなよ、若造?」
「ほざけ!」
そう叫び、ディアスの巨体が、ジョセフへと向かって来る!
まるで大型トラックのような、その迫力。
目の前のジョセフに、掴みかかろうとするディアス。
だが……。
「よっと!」
ジョセフは跳躍し、ディアスの頭に飛び乗り、それを足場にしてさらに飛んだ。
「俺を、踏み台に使うとは!」
「だから言ったろう? 相手になると思うな、って」
この二段ジャンプで、ジョセフは一気に、ブラッククラッカーの上に飛び乗った。
下には思いっきり悔しがるディアス。
「……ぐぬぬ」
「礼を言うさ、ディアス。おかげでこっちも楽が出来たよ」
彼にそう言い残すと、ようやく近くまで来たカイルへと、顔を向ける。
今度は互いに、すぐ目の前の距離――。
「キャプテン!」
すると内部で作業中の、女性が心配する様子を見せた。
「――心配しなくても、ジョセフの相手は僕一人で十分さ」
カイルは彼女にそう声をかけた後、彼もまたジョセフに向かい合う。
「さてと、よく分かったね。……と言いたいけど、ジョセフなら、もしかしたらと予感してたよ」
このカイルの言葉に、ジョセフはククッと笑う。
「上はで騒ぎがあったらしいが、あれは注意を引くための陽動……しかも、ご丁寧に全員に避難指示を出させて、都市の大部分を空にしていると来た。
他に狙いがあるとすればと考えれば、一番に考えられるのは――――このブラッククラッカーだと思ってな」
「……」
その言葉に、カイルは僅かに沈黙する。
……しかし、不敵な笑みを浮かべて彼は答えた。
「ああ。だってこの機体は、このレースの場に、あってはならないものだからね。
そして……この世の中にも」
ブラッククラッカーは、レースにあってはならない存在。
――どう言うこと、カイルは……何を知っているんだ?――
それを聞いたフウマは、その事に疑問を持ったが、今口を挟める状態ではない。
ブラッククラッカーの真上では、なおも二人が話を続ける。
「ほう? やはりこの機体には、何かあるらしいな。……で、一体何があるって言うのかな?」
「さぁ。それはご想像に、お任せするよ」
だがジョセフの問いに、カイルは首を振る。
どうやら答える気は、ないようだ。
ジョセフは軽い溜息をつき、こう言葉を続けた。
「教えるつもりなら、まぁいいか。
……だが、これ以上変な真似を、させるわけにはいかない」
そう、彼はカイルの前に、立ちふさがる。
カイルもカイルで、これには仕方がないと言った様子だが、彼の瞳は鋭い光を見せた。
「やっぱり、ジョセフなら、僕の邪魔をすると思ったよ。――なら!」
途端、カイルは光線銃を構える
それは先ほども見せた、早撃ちの動き。この動作は殆ど一瞬の出来事だった。
――しかし、ジョセフも同等か、それ以上の動きで銃を構え、カイルに突きつける。
両者銃口を突き付けられ、互いに身動きが取れない状況……
下ではフウマとディアス、そしてようやく意識を取り戻した男たちが、その様子を見ていた。
「キャプテン!」
ディアス、そして男たちは下からジョセフに向けて、銃を構える。
複数から銃を向けられるも、当の本人は余裕な様子。
「おっと! 悪いがこっちは、殺傷可能な程まで光線銃の出力を高くしているんだぜ。つまり、下手に手を出せば……大切なキャプテンはどうなるか」
おそらく、カイルも含めて全員、出力は相手が気絶する程度に抑えているのだろう。
だが……このジョセフは、どうだか。
マリンに銃を向けられた時には、彼女が人を傷つける真似が難しい事は、分かっていた。
しかし彼の場合は、それさえも怪しい。
ハッタリかもしれないが、本当の可能性も十分高い。
「……くっ」
下のディアス達は、仕方なく銃を下す。
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