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第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕
フウマの想い
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――――
それは傍から見ているジョセフにも、感じられた。
――へぇ? マシになったじゃないか。偉い偉い、褒めてあげよう。だが――
後ろのテイルウィンドは、再度追い抜こうと試みる。
鳴り響く雷にも、動じる様子もない。しかしそれでも、風に阻まれる事には変わりない。
――この付近で一番、有利な流れはとっくに俺が抑えた。つまり、地の利を得ているのこちらって訳。そうして後ろから追い抜こうと、考えている限りはな、先を越すのは難しいぜ――
ジョセフは、そう考えながらも、次第にレースに対し熱くなっているのを感じた。
ただ純粋に、どちらの機体がより先に行けるかを競う……操縦技術や頭も使いもするが、様々な仕事が入って来る探偵と違い、目的はたったそれだけだ。
それでも……いざこうして競ってみると、この高揚感は何だ? ジョセフもそれを感じていた。
――ふっ、いい年したオジサンが、柄でもないんだけどね。ククッ――
彼は自身に苦笑いするも、その笑いは何処となく、心底楽しんでいるようにも見える。
――さてと、あの坊主はどう出るか? せっかくワクワクしているんだから、もっと楽しませてくれよ――
そんな時だった、テイルウィンドが新たな動きを見せたのは。
テイルウィンドは玄武号から距離を離し、別の気流へと移った。
後ろから追い抜くのは難しい、なら、別の気流の流れへと乗り移り、そこから先を越せばいいと考えたらしい。
……もちろん、他の流れへと移るにはその分、相手に差をつけられもする。
だが少なくとも、これで相手に阻まれることはない。チャンスは出てくるはずだ。
最も、その分玄武号にはまた幾らか、差がつけられてしまったが、それでも今とれる手段としては上々である。
――ふっ、仕切り直しって訳ね。良いじゃない、それでは第二ラウンド開始と行こうか――
まだまだこの少年は、楽しませてくれそうだ。
ジョセフもそれに応えるべく、今この時は探偵であることを忘れ、一レーサーとして、フウマとテイルウィンドに挑むと決めた。
――――
嵐の中、玄武号、そしてテイルウィンドが飛ぶ。
第三陣、そして遅れていた第二陣も何機か飛行していたが、やはりここまで追いついて来たジョセフ、フウマの方が、上手だった。
それぞれ別の気流に乗りながら、他のレース機を難なく越して二機は互いに競い合う。
フウマの取った方法は、今回は正しかった。
先ほど差をつけられた分も、次第に取り戻しつつあり、テイルウィンドは玄武号と並びつつあった。
今までの人生経験はともかく、単にレーサーとしてならフウマに分がある。
一度立て直したテイルウィンドは、見違える程に精度が高い飛行を見せる。
だが、玄武号も負けていない。
あと一歩で先を行けるほどにまでリードを縮めたテイルウィンドだが、対する玄武号も、その一歩を許さない勢いで飛行を行う。
――くっ! あんなにヘラヘラしていたくせに、やるじゃないか。でも僕だって、プロのレーサーなんだ!――
玄武号とテイルウィンドが乗るそれぞれの気流は、ほぼ同じ強さ。後は機体とパイロットの実力次第、と言うわけだが……
気圧、温度、気体の流量のセンサー感知により、周囲の気象状況まで判断出来る。
モニターに表示される図式により、大まかだが気流の流れも示される。
それによると、テイルウィンドと玄武号が飛行する、それぞれの流れは、あと少し先で合流する。
……それまでには、せめてその一歩を、どうにか埋めたい所だ。
フウマはそう考えたが、時間が足りるかどうか……。
先を越そうとするフウマと、逃げ切ろうとするジョセフ。
互いに奮闘するも、気流は合流をはじめ、横幅が次第に狭まって行く。
――少しは、同順位に近いくらいに、持ち込めてはいるかな? でも、それでも――
確かに善戦しているが、それでもまだ厳しい。
このままでは、先ほどの状態へと逆戻りに、なりかねない。
此処で足止めなんて、されている場合じゃない。
先にはシロノを含めた上のプロレーサー、それに……あのジンジャーブレッドもいる。
今相手にしているジョセフに叶わないようなら、この先だって、きっと――。
加えて、ミオに下手な所は、見せられない。
このレースは……彼女の為にも。
『――頑張ってね、フウマ』
別れ際の、ミオの姿と声が、頭をよぎる。
フウマは、覚悟を決めた様子を見せた。
――少し、手荒い手段になるけど、悪いねおじさん。でも僕だって…………負けられないんだ!――
あと僅かで合流する気流、テイルウィンド、そして玄武号は接近し、そして――
それは傍から見ているジョセフにも、感じられた。
――へぇ? マシになったじゃないか。偉い偉い、褒めてあげよう。だが――
後ろのテイルウィンドは、再度追い抜こうと試みる。
鳴り響く雷にも、動じる様子もない。しかしそれでも、風に阻まれる事には変わりない。
――この付近で一番、有利な流れはとっくに俺が抑えた。つまり、地の利を得ているのこちらって訳。そうして後ろから追い抜こうと、考えている限りはな、先を越すのは難しいぜ――
ジョセフは、そう考えながらも、次第にレースに対し熱くなっているのを感じた。
ただ純粋に、どちらの機体がより先に行けるかを競う……操縦技術や頭も使いもするが、様々な仕事が入って来る探偵と違い、目的はたったそれだけだ。
それでも……いざこうして競ってみると、この高揚感は何だ? ジョセフもそれを感じていた。
――ふっ、いい年したオジサンが、柄でもないんだけどね。ククッ――
彼は自身に苦笑いするも、その笑いは何処となく、心底楽しんでいるようにも見える。
――さてと、あの坊主はどう出るか? せっかくワクワクしているんだから、もっと楽しませてくれよ――
そんな時だった、テイルウィンドが新たな動きを見せたのは。
テイルウィンドは玄武号から距離を離し、別の気流へと移った。
後ろから追い抜くのは難しい、なら、別の気流の流れへと乗り移り、そこから先を越せばいいと考えたらしい。
……もちろん、他の流れへと移るにはその分、相手に差をつけられもする。
だが少なくとも、これで相手に阻まれることはない。チャンスは出てくるはずだ。
最も、その分玄武号にはまた幾らか、差がつけられてしまったが、それでも今とれる手段としては上々である。
――ふっ、仕切り直しって訳ね。良いじゃない、それでは第二ラウンド開始と行こうか――
まだまだこの少年は、楽しませてくれそうだ。
ジョセフもそれに応えるべく、今この時は探偵であることを忘れ、一レーサーとして、フウマとテイルウィンドに挑むと決めた。
――――
嵐の中、玄武号、そしてテイルウィンドが飛ぶ。
第三陣、そして遅れていた第二陣も何機か飛行していたが、やはりここまで追いついて来たジョセフ、フウマの方が、上手だった。
それぞれ別の気流に乗りながら、他のレース機を難なく越して二機は互いに競い合う。
フウマの取った方法は、今回は正しかった。
先ほど差をつけられた分も、次第に取り戻しつつあり、テイルウィンドは玄武号と並びつつあった。
今までの人生経験はともかく、単にレーサーとしてならフウマに分がある。
一度立て直したテイルウィンドは、見違える程に精度が高い飛行を見せる。
だが、玄武号も負けていない。
あと一歩で先を行けるほどにまでリードを縮めたテイルウィンドだが、対する玄武号も、その一歩を許さない勢いで飛行を行う。
――くっ! あんなにヘラヘラしていたくせに、やるじゃないか。でも僕だって、プロのレーサーなんだ!――
玄武号とテイルウィンドが乗るそれぞれの気流は、ほぼ同じ強さ。後は機体とパイロットの実力次第、と言うわけだが……
気圧、温度、気体の流量のセンサー感知により、周囲の気象状況まで判断出来る。
モニターに表示される図式により、大まかだが気流の流れも示される。
それによると、テイルウィンドと玄武号が飛行する、それぞれの流れは、あと少し先で合流する。
……それまでには、せめてその一歩を、どうにか埋めたい所だ。
フウマはそう考えたが、時間が足りるかどうか……。
先を越そうとするフウマと、逃げ切ろうとするジョセフ。
互いに奮闘するも、気流は合流をはじめ、横幅が次第に狭まって行く。
――少しは、同順位に近いくらいに、持ち込めてはいるかな? でも、それでも――
確かに善戦しているが、それでもまだ厳しい。
このままでは、先ほどの状態へと逆戻りに、なりかねない。
此処で足止めなんて、されている場合じゃない。
先にはシロノを含めた上のプロレーサー、それに……あのジンジャーブレッドもいる。
今相手にしているジョセフに叶わないようなら、この先だって、きっと――。
加えて、ミオに下手な所は、見せられない。
このレースは……彼女の為にも。
『――頑張ってね、フウマ』
別れ際の、ミオの姿と声が、頭をよぎる。
フウマは、覚悟を決めた様子を見せた。
――少し、手荒い手段になるけど、悪いねおじさん。でも僕だって…………負けられないんだ!――
あと僅かで合流する気流、テイルウィンド、そして玄武号は接近し、そして――
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