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第二章 ティーブレイク・タイム
レクリエーション・タイム(4)
しおりを挟む新緑色の草が生い茂る草原で、フウマはひしゃげたボードを片手にふてくされていた。
「よしっ! 私の勝ちだね!」
その一方でミリィは、自分の勝利にはしゃいでいた。
一度は機転によって逆転したフウマだったが、その後、鳥の群れに襲われ、その内一羽がヘルメットをしていない彼の顔に衝突した。
衝突したショックで一瞬気を失い、その間にボードは鳥の群れに翻弄されて姿勢が崩れた。そしてフウマが気が付いた時には、ゴールである草原に辿り着く寸前で墜落した後。
結局、トップでゴールしたのはミリィとなった。
戻って来た他のメンバーはと言うと、そんな対比的な二人の様子を面白そうに眺めていた。
「ううっ……。今日はたまたま調子が悪かっただけさ」
「って言うか、自業自得ね。鳥さん達を驚かせたりするから」
二人の会話に、同じくひしゃげたボードを持ったキースが口を挟む。
「鳥の群れが巻き起こす突風を利用して、ボードの速度を上げる……。アイデア自体は良かったが、詰めが甘かったな」
「そっちだって、後ろに気を取られて木に当たったじゃないか。偉そうに人の事を言えないだろ」
「ああ、そう言えば確かにそうだったな。……ん? あれは……」
そんな時、キースは何かに気が付いたらしい。彼はニヤリと笑ってフウマに言った。
「ほら、見てみろよ。どうやら迎えが来たようだぜ」
そう言いながら指差す草原の空には、一台のエアカーがこちらに飛んで来るのが見えた。外見はタイヤが存在しない事を除けば、普通の車とほぼ変わらない形である。
「ん? 何でまたこんな所に? …………まさか!」
フウマはすっかり忘れてたある事を思い出して、顔色が変わった。
「あーあ、約束をすっぽかしたりするから……」
エアカーは、フウマ達のすぐ近くに着陸する。
そして後部ドアが開くと、誰かが二人降りて来た。
「やっぱりここにいたのね。追いつくのに大変だったんだから」
「全く、約束を無視するなんて、何を考えているのですか」
エアカーから降りたのは、ミオとリアンだった。二人とも、多少なりに腹を立てているらしい。
「そんな、どうしてここに!」
「何年私がフウマの幼馴染をしていると思うの? こうして何か約束をすっぽかす時は、大体どこかで友達と一緒に、ウィンドボードで遊んでいるでしょ? そして、久しぶりにウィンドボードをするなら、多分ここじゃないかなって思ったの。それで私はリアンに頼んで、ここに迎えに来たって訳」
「だから勉強なら、自分でもやっているさ。勉強会なんて要らないってば!」
フウマは、まるで子供のような言い訳をしてみせた。
「それが駄目だから、こうして勉強会を開いたんでしょ? ほら、だからそう言っていないで、とりあえず行きましょう」
「だから無理! 勉強会みたいに厳しい勉強なんて、僕は苦手なんだよ!」
「はぁ……宇宙レースで幾ら活躍しているか知らないけれど、まるでお子様ね。良いわ、本当ならミオの頼み通りやさしく教えるつもりだったけど、その根性からみっちり教育してあげないとね。いいわね? ミオ?」
「ええ。でも、あまり厳しくしないでね?」
そう言うとミオとリアンは、駄々をこねるフウマの両腕を掴むと、ずるずるとエアカーに引っ張っていった。
「だーかーらー、やだってばー」
相変わらずそう言い続けるフウマを無理やり乗せて、エアカーは飛び立った。
それを見送ったミリィは隣のキースにこう言った。
「ねぇ、キース?」
「ん?」
「やっぱりフウマってさ、実年齢以外は、本当に子どもだよね?」
「…………ああ」
その意見は、二人とも同感だった。
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