6 / 14
連葬魔響
しおりを挟む
「蓮葬魔響―六式・解放」
男が言いながら銃を抜き、すぐさま引き金を引いた。銃口から弾丸が放たれた途端、信じられないほどの衝撃が発生した。男の周りにあった店は吹き飛んだし、弾丸は延々と衝撃を放ち続け地面を抉った。
勇者は勇敢に立ち向かった。全身に稲妻を纏い……。
衝突した。飛び散る稲妻。ハリケーンがそこにあるような衝撃……。
まさか人間が起こしているなんて思えないような光景だ。何もかもを飲み込んで、塵灰に化す力が、そこにはあった。触れてはいけない、これ以上近づいてはいけない。その場にいた誰もがそう感じた。
男は楽し気な笑みを浮かべたまま、自身の放った弾丸と勇者の衝突を眺めていた。やがて衝撃波が消え、稲妻だけがそこに残ると、男はゆっくりと歩みを始め、勇者に言った。
「長かったな? まぁ、新しい技で少し少々張り切りすぎたが……。それにしたって時間をかけすぎだぞ?」
「……持続力と耐久力が自慢なんでね」
「ほう……。そうか、そうだな」
男はにやにやと勇者の強がりにも思える発言に頷く。そして再び歩き始めたかと思えば、瞬きする間もなく勇者の眼前に迫った。
「ならどこまで耐えられるか、測らせてもらおうか」
目にもとまらぬ速さで近づいた男は、息する間隙など与えることなく勇者の顔面に拳を叩き込んだ。同時に勇者を護るように稲妻が発生し、爆発した。勇者はやすやすと体を飛ばされるが、勇者もやられぱなしでは済まない。
「うぁあああ!」
すぐに復帰した勇者は、その大人一人ぐらいの大きさの剣を大きく振りあげ男に向けて振り下ろす。男はそれを躱したり、弾き返したりして防いだ。
そんな攻防は街を巻き込み兵を巻き込み、空気を揺らしていく。私の視界に映る街はもはや原型をとどめていなかった。建物は崩壊し、砂埃が舞い、比較的にぎやかで穏やかだった大通りは阿鼻叫喚の渦に飲み込まれていた。
「あの男は一体何なんだぁ!」「悪魔……いや、魔王。魔王が復活したんじゃないか……⁉」
そんな声が聞こえてくる。でも、あの光景をまざまざと見せつけられればそう思うのも仕方のないことだ。何せ勇者を圧倒し、銃弾一つで石造りの道を抉り、あたり一帯を吹き飛ばすほどの威力を出したあの男を、魔王と思うのは当然だろう。
それにしても、ここまでとは……。収容所での虐殺では分からなかったあの人の力が明らかにされた。
「おい! 何でこんなところに獣人がいる⁉」「あの男が連れていた獣人だ! 今すぐ殺せ!」
やばいやばいやばい!! 私まで狙われ始めちゃった……。早く逃げないと……。
私がその場から逃げ出そうとあたりを見渡したが、どこを見ても私を敵視する人たちがいて、とても逃げ出せそうになかった。
……一方そのころ。
「確かに、耐久力はなかなかのものだな?」
確かな手ごたえを感じるが、どうしてか全く効いていないように起き上がってくる……。表面の硬さではなく、体力が果てしなく多いのか?
長期戦になれば魔力がそこを尽きる。それを狙った能力か。いや、勇者の素質か……。
なるほど、なんとなく分かった。勇者は持久力で長期戦に、英雄は恐らく攻撃力か援護、聖騎士もどちらかだろう。この三人が一斉に魔王に立ち向かうことで魔王を撃破することができるということか……。
と、すれば今殺すのがいいが……。
三人一斉にかかってきたときに倒した方が、れっきとした魔王と言えるだろう。
男はそう考え、攻撃を休めた。それをいいことに勇者が畳みかける。
何か計画があるのか、一撃一撃力の方向も、その大きさも異なる。そして最後の一撃、全力で剣を振るった。男は寸でのところでガードし何とか死なずに済んだが、男は一直線に建物に突っ込んでいった。
あたりには粉末が舞い、霧のように視界を妨げていた。
「……なるほど。少しでも反応を遅らせる算段か。だが、あたり一帯に魔力を漂わせば、簡単に……」
「今更その程度の算段で、わざわざ絶好のチャンスを逃しはしないさ」
「何?」
勇者が霧のない場所から俺を見ていることは簡単に分かった。俺のいる方に指をさしていることも……。
「たっぷり喰らえ!」
堂々と声を張った割には小さな稲妻だった。この程度で俺を殺そうなどとは……と、油断していた。
放たれた稲妻が霧の中へと侵入した途端、小さな稲妻は一瞬にして大きな爆発に変わった。俺は勇者の目論見通り、爆発に巻き込まれてしまった。
爆発が終わると、その中心地には男の姿があった。男は肩を上下に揺らし、相当なダメージを負っているようだった。勇者はこの機を逃さなかった。
確実にかなりの量の魔力を使ったはずだと、勇者は考えた。
そこからは一方的な攻勢状態だった。勇者はコンマ一秒のチャンスを逃さぬように、男に連撃を喰らわせる。しかし、それでも男は倒れない。しかし、先ほどまでとは比べ物にならないぐらいの手ごたえがあった。
いける! 勝てる! これなら、あの三大魔王にも……!!
「これが勇者の力だああああああ!!」
最後の最後、全力で稲妻を発生させ、そのすべてを腕にまとい一撃に全てをぶつけた———。
男の顔面は歪み、身体はまる焦げになった。地面は大きくへこみ、ところどころに赤い光がちりばめられていた。
「勝った……。うおおぉぉぉぉぉ! 勝ったぞぉぉぉ! 恐らく三大魔王……、下手したらそれ以上の化け物に勝った! やった……。みたかクラレス! 俺だってやったぞ!」
勇者は腕を天に突きあげ喜びの雄たけびを上げた。
男が言いながら銃を抜き、すぐさま引き金を引いた。銃口から弾丸が放たれた途端、信じられないほどの衝撃が発生した。男の周りにあった店は吹き飛んだし、弾丸は延々と衝撃を放ち続け地面を抉った。
勇者は勇敢に立ち向かった。全身に稲妻を纏い……。
衝突した。飛び散る稲妻。ハリケーンがそこにあるような衝撃……。
まさか人間が起こしているなんて思えないような光景だ。何もかもを飲み込んで、塵灰に化す力が、そこにはあった。触れてはいけない、これ以上近づいてはいけない。その場にいた誰もがそう感じた。
男は楽し気な笑みを浮かべたまま、自身の放った弾丸と勇者の衝突を眺めていた。やがて衝撃波が消え、稲妻だけがそこに残ると、男はゆっくりと歩みを始め、勇者に言った。
「長かったな? まぁ、新しい技で少し少々張り切りすぎたが……。それにしたって時間をかけすぎだぞ?」
「……持続力と耐久力が自慢なんでね」
「ほう……。そうか、そうだな」
男はにやにやと勇者の強がりにも思える発言に頷く。そして再び歩き始めたかと思えば、瞬きする間もなく勇者の眼前に迫った。
「ならどこまで耐えられるか、測らせてもらおうか」
目にもとまらぬ速さで近づいた男は、息する間隙など与えることなく勇者の顔面に拳を叩き込んだ。同時に勇者を護るように稲妻が発生し、爆発した。勇者はやすやすと体を飛ばされるが、勇者もやられぱなしでは済まない。
「うぁあああ!」
すぐに復帰した勇者は、その大人一人ぐらいの大きさの剣を大きく振りあげ男に向けて振り下ろす。男はそれを躱したり、弾き返したりして防いだ。
そんな攻防は街を巻き込み兵を巻き込み、空気を揺らしていく。私の視界に映る街はもはや原型をとどめていなかった。建物は崩壊し、砂埃が舞い、比較的にぎやかで穏やかだった大通りは阿鼻叫喚の渦に飲み込まれていた。
「あの男は一体何なんだぁ!」「悪魔……いや、魔王。魔王が復活したんじゃないか……⁉」
そんな声が聞こえてくる。でも、あの光景をまざまざと見せつけられればそう思うのも仕方のないことだ。何せ勇者を圧倒し、銃弾一つで石造りの道を抉り、あたり一帯を吹き飛ばすほどの威力を出したあの男を、魔王と思うのは当然だろう。
それにしても、ここまでとは……。収容所での虐殺では分からなかったあの人の力が明らかにされた。
「おい! 何でこんなところに獣人がいる⁉」「あの男が連れていた獣人だ! 今すぐ殺せ!」
やばいやばいやばい!! 私まで狙われ始めちゃった……。早く逃げないと……。
私がその場から逃げ出そうとあたりを見渡したが、どこを見ても私を敵視する人たちがいて、とても逃げ出せそうになかった。
……一方そのころ。
「確かに、耐久力はなかなかのものだな?」
確かな手ごたえを感じるが、どうしてか全く効いていないように起き上がってくる……。表面の硬さではなく、体力が果てしなく多いのか?
長期戦になれば魔力がそこを尽きる。それを狙った能力か。いや、勇者の素質か……。
なるほど、なんとなく分かった。勇者は持久力で長期戦に、英雄は恐らく攻撃力か援護、聖騎士もどちらかだろう。この三人が一斉に魔王に立ち向かうことで魔王を撃破することができるということか……。
と、すれば今殺すのがいいが……。
三人一斉にかかってきたときに倒した方が、れっきとした魔王と言えるだろう。
男はそう考え、攻撃を休めた。それをいいことに勇者が畳みかける。
何か計画があるのか、一撃一撃力の方向も、その大きさも異なる。そして最後の一撃、全力で剣を振るった。男は寸でのところでガードし何とか死なずに済んだが、男は一直線に建物に突っ込んでいった。
あたりには粉末が舞い、霧のように視界を妨げていた。
「……なるほど。少しでも反応を遅らせる算段か。だが、あたり一帯に魔力を漂わせば、簡単に……」
「今更その程度の算段で、わざわざ絶好のチャンスを逃しはしないさ」
「何?」
勇者が霧のない場所から俺を見ていることは簡単に分かった。俺のいる方に指をさしていることも……。
「たっぷり喰らえ!」
堂々と声を張った割には小さな稲妻だった。この程度で俺を殺そうなどとは……と、油断していた。
放たれた稲妻が霧の中へと侵入した途端、小さな稲妻は一瞬にして大きな爆発に変わった。俺は勇者の目論見通り、爆発に巻き込まれてしまった。
爆発が終わると、その中心地には男の姿があった。男は肩を上下に揺らし、相当なダメージを負っているようだった。勇者はこの機を逃さなかった。
確実にかなりの量の魔力を使ったはずだと、勇者は考えた。
そこからは一方的な攻勢状態だった。勇者はコンマ一秒のチャンスを逃さぬように、男に連撃を喰らわせる。しかし、それでも男は倒れない。しかし、先ほどまでとは比べ物にならないぐらいの手ごたえがあった。
いける! 勝てる! これなら、あの三大魔王にも……!!
「これが勇者の力だああああああ!!」
最後の最後、全力で稲妻を発生させ、そのすべてを腕にまとい一撃に全てをぶつけた———。
男の顔面は歪み、身体はまる焦げになった。地面は大きくへこみ、ところどころに赤い光がちりばめられていた。
「勝った……。うおおぉぉぉぉぉ! 勝ったぞぉぉぉ! 恐らく三大魔王……、下手したらそれ以上の化け物に勝った! やった……。みたかクラレス! 俺だってやったぞ!」
勇者は腕を天に突きあげ喜びの雄たけびを上げた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
鈴蘭の魔女の代替り
拝詩ルルー
ファンタジー
⭐︎旧タイトル:レイの異世界管理者生活 〜チート魔女になったので、この世界を思いっきり堪能する所存です〜
「あなたには私の世界に来て、私の代わりに管理者をやってもらいたいの」
鈴蘭の魔女リリスに誘われ、レイが召喚された異世界は、不思議で美しい世界だった。
大樹ユグドラを世界の中心に抱き、人間だけでなく、エルフやドワーフ、妖精や精霊、魔物など不思議な生き物たちが生きる世界。
この世界は、個人が人生を思い思いに自由に過ごして全うする「プレイヤー」と、愛をもって世界システムを管理・運営していく「管理者」の二つに分かれた世界だった。
リリスに子供の姿に戻されたレイは、管理者の一員となって、世界の運営に携わっていく。
おとぎ話のような世界の中で、時に旅しては世界の美しさに感動し、世界の不思議に触れては驚かされ、時に任務や管理者の不条理に悩み、周りの優しさに助けられる……レイと仲間達が少しずつ成長してく物語。
※ストーリーはコツコツ、マイペース進行です。
※主人公成長中のため、恋愛パートは気長にお待ちくださいm(_ _)m
逃げるが価値
maruko
恋愛
侯爵家の次女として生まれたが、両親の愛は全て姉に向いていた。
姉に来た最悪の縁談の生贄にされた私は前世を思い出し家出を決行。
逃げる事に価値を見い出した私は無事に逃げ切りたい!
自分の人生のために!
★長編に変更しました★
※作者の妄想の産物です
コピー&ペーストで成り上がる! 底辺講師の異世界英雄譚
猫太郎
ファンタジー
※タイトルを戻しました。
Fラン大学の文学部講師、張本エイジは怒っていた。
学生たちの出してきたレポートが、どれもこれもコピペだらけだったためである。
怒りに駆られて本棚を蹴りつけたエイジは、倒壊した本の下敷きになり、異世界の地獄へと召喚される。
召喚されたエイジを前に、地獄を司る〈復讐の女神アルザード〉が言う。
「お前の憎しみを力に変えてしんぜよう。その力で、世界を救済せよ!」
こうして、エイジはユニークスキル〈コピー&ペースト〉を手に入れた。
他人の能力値やスキルをコピーする能力を得たエイジは、異世界で新たな一歩を踏み出す。
異世界で美しい少女リリアと出会ったエイジは、彼女の身に秘められた呪いの正体を解き明かそうと考える。
だが、リリアの身体には呪い以上の秘密があって……。
※カクヨムで先行公開した作品(https://kakuyomu.jp/works/1177354054892405349)を改題し、加筆・修正を加えたものです。ストーリーの大筋は変わりませんが、表現に少しだけ違いがあります。
※本編は全93話、本編終了後のあとがきやおまけを合わせて、116話まで更新する予定。
※カクヨム版は第一部まで完結。第二部は気が向いたら書きます。
外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいです。〜戦闘でも使えるとわかったのでチーム医療でざまぁすることになりました〜
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
使い方がわからないスキルは外れスキルと言われているこの世界で、俺はスキルのせいで家族に売られて奴隷となった。
そんな奴隷生活でも俺の面倒を見てくれる第二の父親と言える男に出会った。
やっと家族と思える人と出会ったのにその男も俺が住んでいる街の領主に殺されてしまう。
領主に復讐心を抱きながらも、徐々に体力が落ち、気づいた頃に俺は十歳という若さで亡くなった。
しかし、偶然にも外れスキルを知っている男が俺の体に転生したのだ。
これでやっと復讐ができる……。
そう思った矢先、転生者はまさかのスローライフを望んでいた。
外れスキル【理学療法】で本職の理学療法士がスローライフを目指すと、いつのまにか俺の周りには外れスキルが集まっていた。
あれ?
外れスキルって意外にも戦闘で使えちゃう?
スローライフを望んでいる俺が外れスキルの集まり(チーム医療)でざまぁしていく物語だ。
※ダークファンタジー要素あり
※わずかに医療の話あり
※ 【side:〇〇】は三人称になります
手軽に読めるように1話が短めになっています。
コメント、誤字報告を頂けるととても嬉しいです!
更新時間 8:10頃
奪われし者の強き刃
ゆうさん
ファンタジー
ある科学者によって人ならざるものに世界の大半を侵食された現代
魔物に対抗するために[ギフト]と呼ばれる異能力を手にした師団長たちと団員たちが領土防衛と奪還にために立ち向かう
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
使い魔さんは危ない人でした!
ぺす
ファンタジー
『リベラルファンタジア』
自由な冒険を標榜する通り幅広い遊びのできるVRMMORPG。
そんなゲームに、圧倒的な強さを持ったプレイヤーがいた。彼の名前はゼクト。自他共に認める廃ゲーマーである。そんな彼がゲーム内イベントからホームタウンへ帰ろうとしたその時。
彼は気付いたら異世界にいて目の前には美女が。
「……えっと……貴方が使い魔でよろしいんです……か?」
彼の異世界使い魔ライフが幕を開ける。
※Twitterを始めてみました(*つ´・∀・)つ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる