上 下
8 / 9
第1章

第1章07 邂逅と脊髄

しおりを挟む
 そして翌日。いよいよ初コラボの時間だ。昨日の配信でも告知したし、楠さんも自身の配信やSNSで告知してくれている。視聴者もいつもより2割くらい増えていた。楠さんのリスナーが覗いてくれてんのかな?
 
 それぞれで配信を始め、こちらの準備はできたので楠さんにチャットを送る。すぐに楠さんからも準備OKと返事があった。

「んじゃ、昨日伝えてたけど今日はVtuberさんと初めてのコラボで~す」
「うぇ~い」
「じゃあ準備はできてるって返事きたし、いつでも入ってもらって大丈夫です~」

 ピコンという通知音とともに、楠さんのアイコンが表示された。

「こんばんは~、楠日和です。聞こえてますか?」
「こんばんは。H4Y4T0です。大丈夫です、聞こえてますよ」
「あ、よかったです。Setoさんもこんばんは、楠です~」
「こんばんは~、Setoで~す」
「声ちっさ!!」

 ダメだ、案の定コミュ障が発動してやがる。普段の半分ほどのボリュームしか出てねぇ。コメントでも同じようなコメントがすごい勢いで流れて行ってる。俺らのリスナーはSetoのコミュ障を知ってるから面白がってるけど、あちらさんのリスナーさんは知らない人も多いだろう。早めに説明しとかないとまずい。

「あ~、すいません。うちのSetoは結構人見知りなんで、しばらくこんな感じだと思います。なんとか頑張って動かすんで」
「いえ、全然大丈夫です。H4Y4T0さんから聞いてましたし。配信見てるときはすごく喋ってるからホントに人見知りなんだってめっちゃびっくりしてます」

「慣れればあんな感じなんですけどね。まぁちょっと泳がせましょう。それより、俺らの配信見てくれてるんですね。日程調整のときにも軽く聞いたんですけど嬉しいです」
「いや~、あの大会見てからSleeping Leoのファンになっちゃって。こうしてコラボしてもらえてすごく嬉しいです」

 俺と楠さんで話を進めていく。楠さんがそんなに人見知りしない性格でほんとに助かった。さすがに人見知り2人を抱えての配信は俺の胃がもたない。

「一応今回のコラボのきっかけというか経緯を軽く説明しとくと、楠さんがコーチングのできるプレイヤーを探してて、弥勒さんからの紹介で俺たちに声がかかったって感じっすね」
「そうですね。あ、弥勒さんも見てるみたい」

 Ragnarok Cupの情報はまだ解禁されていないので、このあたりは事前に楠さんと話を合わせるようにしていた。弥勒さんも顔を出してるみたいだし、そろそろ会話パートは終わってもいい頃かな。ただうちのポンコツがまだ全然会話に混ざってこない。いきなりだがここがタイミングだろう。

「じゃあそろそろコーチングしていこうかなぁと思うんですけど、Setoさ~ん、起きてますか~?」
「んぁ? いるいる」
「いやぁ、楠さんどう思います? うちの火力担当」

 俺が楠さんにパスを出す。昨日の打合せ終わりに送ったメッセで、Setoのコミュ障が発動したときにお願いしておいたことがある。楠さん、察してくれ!

「そうですねぇ。大会とか配信とかでものすごく強い人って思ってたんですけど…なんか弱そうに感じちゃいますね」
「あ? やんの?」

 はい釣れた。Setoはとにかく煽れば脊髄反射で乗ってくる。さっきまであんなに声が小さかったのに、楠さんに煽られた瞬間に普段の声量に戻ってるし。

「いや~、なんか恥ずかしがり屋さんみたいだし、無理しないでいいですよ」
 楠さんが追撃をかます。この人いい性格してるかもしれん。

「やんのかって。俺は全然いいっすよ? やめたほうがいいと思いますけど」
「まぁやめといた方がいいですよね。ダイヤのあたしにもし負けちゃったらSetoさん泣いちゃいそうだし」
「やんのかってだから。ぶち殺すよ?」

 あかん、おもろすぎる。ミュートして聞いてたけど楠さん煽りスキルたっけぇ。Setoが面白いくらいに乗せられてるし。リスナーも大盛り上がりだ。いい感じに空気も温まってきたし、そろそろ会話に混ざるか。。

「よし、じゃあ射撃場で白黒つけよう。楠さんとSetoの1on1ってことで」
「いいですよぉ」
「しゃあ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

AIRIS

フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年 天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた その名はアイリス 法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ラスト・オブ・文豪

相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。

ALIVE NOTE for spin‐off version 改

夜美神威
SF
ごく普通のサラリーマンがふいに出会った天使に 生を司る「ALIVE NOTE」を受け取る 彼はそのノートで最愛の人達を救っていく しかし彼に待ち受けていた者は残酷な運命だった 2008年に出版したショートショート集ALIVE NOTE(アライブノート)のスピンオフ作品 もしあなたがALIVE NOTEを手に入れたらどうしますか? 2021年4月22日に改として改変しました

ジュラシック村

桜小径
SF
ある日、へんな音が村に響いた。 ズシン、ズシン。 巨大なものが村の中を徘徊しているような感じだ。 悲鳴もあちこちから聞こえる。 何が起こった? 引きこもりの私は珍しく部屋の外の様子がとても気になりはじめた。

能力が基本となった世界0

SF
これは、ある場所に向かう道すがら、とある男が子供の頃から組織に入るまでのことを仲間に話す。物語 能力が基本となった世界では語りきれなかった物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...