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プロローグ

下調べって大事だよね

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 目が覚めると、とても豪華な部屋に30歳くらいの女性と一緒に居た。

 窓から外を見てみると、真っ暗で結構遅い時間だと分かった。

 そして部屋にあった鏡を見てみると、まるで、中世ヨーロッパの貴族のような格好をしていた。日本にいたころとは全然違う、紺色の髪と目をした10歳くらいの美少年になっていた。

 転生に成功したようだ。

「どうしたんです、ギルバード、そんなに辺りを見回して。何か気になることでもありましたか?」

 椅子に座っていた女性が話しかけてくる。きっと母親なのだろう。

「いいえ、なんでもありません。少し退屈していたものですから」

 そう言って、なんとか誤魔化しておく。そんなにキョロキョロしてたかな、俺。

「明日から魔法学校に行く事になっているのですから、今日は早く寝てしまいなさい」

「分かりました、ではお休みしたいと思います」



 お辞儀をしてその部屋から離れる。幸い、自分の部屋まではメイドさんが連れて行ってくれたおかげで迷わずにすんだ。自分の実家で迷う姿を見られるなんて嫌だからね。

 部屋は、結構簡素な感じだった。全体的に黒でまとめられていてセンスがいい。

 子供らしく星とか恐竜の柄、とかだったらさっそく異世界を嫌いになっていたかもしれない。

「このままお休みになりますか?」

 部屋まで案内してくれたメイドさんが言う。

 明日魔法学校らしいからな。この世界のことについて知っていなければ、不自然だろうしな。知識をつけなければ。

「いや、少し本を読んでから寝るよ」

 そう答えておいた。





 この世界は、『トランティニャン』と呼ばれているらしい。そしてこの王国がマルテル王国。

 俺はヴィンセント公爵家というところの長男で、ギルバートというらしい。

 なんか難しそうだな。

 結構、金も人材もある豊かな国らしい。

 ただ魔物がいるとか。今はダメだろうけど、大人になったら戦ってみたいな~と思うのは、転生小説の読みすぎだろうか。戦闘って危ないもんね。

 とりあえず、今日はこのくらい知れたから満足とする。





 読んでいた書物から目を離すとメイドさんが来た。

「お着替え、手伝いますね」

 そりゃ貴族の衣装だからさ、脱ぎ着が難しいのはわかるけどさ、寝巻きに着替える位は一人でできるよ。

 何せ、中身は普通の成人男性だ。お姉さんの前で着替えをするとか恥ずかしい。

 そう思って、全力で断った。

 なにはともあれ、一番やばそうなのは明日だから、明日に備えて早く寝ようと思います。もう結構遅い時間だけれど。

 おやすみなさい。





 ◇◇◇◇◇





「ついに明日が、魔法学校の入学式なのねぇ。とっても心配だわ」

 伯爵家の自室でヴィンセント夫人は呟く。

 そこに先ほどまでギルバードの世話をしていたメイドが報告に来る。

「坊ちゃまは、明日のために本をお読みされていました。眠そうな顔をしておりましたので、きっとすぐに眠ると思います」

「ご苦労さま。明日が楽しみね。明日は少しだけ早く起こしてくれないかしら、ラファエルが言葉をかけたいと言っていたの」

 メイドは驚いた様子で夫人を見つめる。夫人はにやりと笑う。

「あの仕事、とても難しいものでございましたのに。……まさか、ご成功されたのですか?」

 夫人は何も言わない。ただ、その余裕ありげな笑いのままメイドを見ている。

「私、感動いたしました。これからも、全力で仕事に向き合いたいと思います。ただ、私少し坊ちゃまに違和感を覚えまして」

 夫人の余裕そうな顔が崩れ、目が見開かれる。

「何かあったの?」

「いえ、それほどでもないのですが。読んでいた本の内容が、この国や、公爵家に関する書物でして」

 夫人は考える。

 ギルバードは魔法学校に行く前から、家庭教師により基本的な勉強を進めていた。

 いまさら国や、この家のことを調べなくても大抵のことは知っているはず。

「分かったわ、頭に入れておきましょう。もし、知識の低下が見られるならしっかり教えないと」

 夫人は、少しいつもと違う点があったことを心配したが、すぐに杞憂だと思った。

 きっと復習のつもりなのだろう、と方向転換した。

 メイドが、報告が終わったので、と部屋を出て行く直前

「そういえば、着替えさせられるのに少し抵抗がありました。魔法学校に入るくらいの年齢ですし、自分のことは自分でしたいお年頃なのでしょうか」

と言い、微笑んだ。夫人も微笑み返した。そして、息子の新たな成長を微笑ましく思った。
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