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第4章
解決の道筋
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「確かに、あれは美味しいよね。朝ごはんにしようと思って、帰りにもう1個追加で買っちゃったもん」
あの歌に偽りなしだよね! 柊真くんと笑い合っていると、マリさんが何かを考えるかの様にすっと目を伏せた。
「メロンパンの移動販売……音楽……」
「マリさん?」
呟くマリさんに私達は視線を向ける。
「どうかしたんですか?」
柊真君が問いかける。
どれだけマリさんはそうしていただろう。そんなに長くない。恐らく1分とちょっとくらいだ。
再び視線を上げたマリさんは「分かったかもしれません」と私の方を向いて言った。
その言葉に、思わず「え?」と聞き返してしまう。
「チロルがお散歩に行かなくなった訳が」
私と柊真君は顔を見合し、それからもう1度マリさんを見た。
「本当ですか?」
「ええ。今までのお話を聞いてみて、なんとなくだった答えが今の島田さんと柊真くんのメロンパンの話ではっきり輪郭を持ち始めました」
「お、教えてください!」
思わず身を乗り出した私に、マリさんは頷く。
「今週の土曜日、宇都さんをここへ連れてくる事は出来ますか?」
「宇都さんを?」
「この謎を解く為にあと1つ確信を得たい事項があります。もちろん、ここで私の考えをお話する事は可能です。ただ、島田さんがそれを宇都さんに伝えて、彼女が聞く耳を持ってくれるか……。当人同士で話すと余計にこじれないか心配です。第3者が入った方が人は冷静になるものです。どうでしょう? 土曜日の朝、開店前に、ここで宇都さんに話を聞いて頂くというのは?」
「それって実質ここ、ロビンソンを貸し切る様なものですよね。準備で忙しい時にそんな事お願いしてもいいんでしょうか」
もう随分と迷惑をかけている上に、これ以上は……と遠慮する私にマリさんは人好きする優しい笑顔を返した。
「もちろん、大丈夫ですよ。乗り掛かった舟です。最後まで付き合わせて下さい」
「開店準備は俺が早めに来て、済ませておくので安心して下さい!」
横から頼もしい事を言ってくれる柊真くん。
ありがとう、と私は2人に頭を下げた。
ロビンソンの人達には感謝してもし切れない。
「明日、頑張って宇都さんに話しかけてみます。チロルの事でどうしても話したい事があるって。断られても、諦めずにお願いしてみます」
「少し頼みづらいかもしれないけれど、お願いします。それからあと1人……」
「あと1人?」
「あともう1人、宇都さんに連れて来てもらいたい人がいるんです」
私は首を捻る。
マリさんはやっぱりにっこり笑って、その人の名を口にしたー……。
あの歌に偽りなしだよね! 柊真くんと笑い合っていると、マリさんが何かを考えるかの様にすっと目を伏せた。
「メロンパンの移動販売……音楽……」
「マリさん?」
呟くマリさんに私達は視線を向ける。
「どうかしたんですか?」
柊真君が問いかける。
どれだけマリさんはそうしていただろう。そんなに長くない。恐らく1分とちょっとくらいだ。
再び視線を上げたマリさんは「分かったかもしれません」と私の方を向いて言った。
その言葉に、思わず「え?」と聞き返してしまう。
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「お、教えてください!」
思わず身を乗り出した私に、マリさんは頷く。
「今週の土曜日、宇都さんをここへ連れてくる事は出来ますか?」
「宇都さんを?」
「この謎を解く為にあと1つ確信を得たい事項があります。もちろん、ここで私の考えをお話する事は可能です。ただ、島田さんがそれを宇都さんに伝えて、彼女が聞く耳を持ってくれるか……。当人同士で話すと余計にこじれないか心配です。第3者が入った方が人は冷静になるものです。どうでしょう? 土曜日の朝、開店前に、ここで宇都さんに話を聞いて頂くというのは?」
「それって実質ここ、ロビンソンを貸し切る様なものですよね。準備で忙しい時にそんな事お願いしてもいいんでしょうか」
もう随分と迷惑をかけている上に、これ以上は……と遠慮する私にマリさんは人好きする優しい笑顔を返した。
「もちろん、大丈夫ですよ。乗り掛かった舟です。最後まで付き合わせて下さい」
「開店準備は俺が早めに来て、済ませておくので安心して下さい!」
横から頼もしい事を言ってくれる柊真くん。
ありがとう、と私は2人に頭を下げた。
ロビンソンの人達には感謝してもし切れない。
「明日、頑張って宇都さんに話しかけてみます。チロルの事でどうしても話したい事があるって。断られても、諦めずにお願いしてみます」
「少し頼みづらいかもしれないけれど、お願いします。それからあと1人……」
「あと1人?」
「あともう1人、宇都さんに連れて来てもらいたい人がいるんです」
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マリさんはやっぱりにっこり笑って、その人の名を口にしたー……。
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