カフェ・ロビンソン

夏目知佳

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第3章

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月曜日、私は会社で別の課の仲の良い子に簡単に事情を話し、協力してもらう事にした。直接話しかけようにも宇都さんは私を見るととてもぴりぴりした空気を出すので、迂闊には近づけない。
胃はまだ少し痛むけれど、希望の光を見出したことは大きかった。八方塞がりで自分にはもうどうにも出来ない、そんな風に思っていたから。
いつも通り、デスクに積まれた書類を処理し仕事に集中する。
宇都さんにさり気なく合鍵の事を聞いて欲しい、私の頼みにその子はタイミングを見計らってなるべく怪しまれない様どうにかしてみると言ってくれた。巻き込まれて大変だね、とも。
ありがとう、そう言った直後、ロビンソンのマリさん達の顔が浮かぶ。落ち込む私に、いろんな角度から助言やアイディアをくれた。あの人達に恥じない為にも、今は仕事を頑張らなければ。
目の前のタスクをこなしていったらあっという間に昼が来た。
第1報告を昼休み、聞く事になっている。
もちろんお礼にお昼ごはんは奢る予定だ。
少し職場から離れた定食屋に私は急いだ。
私が席を確保すると、続く様にしてサラリーマンがぞくぞくとやって来る。
部長に投げられた案件がややこしくて、と連れに愚痴る人。
1人でやって来てさっさと注文を済ませる人。
4人程のグループでやって来て、一気に席を埋めていく人と様々だ。
見た感じ、同じ職場の同じフロアの人はいない。
スマホで時間を確かめる。
顔を上げると、その子が入り口できょろきょろしている所だった。
「あ、こっち」
手を挙げると気づいて、小走りでやって来る。
席に着くと、私はまず、メニューを差し出した。
「来てくれてありがとう。混みそうだからまずは注文済ませちゃおう」
彼女はとり天定食にしようかなと言うので、私も同じものを注文する。
お冷をひと口飲んで、その子は喋り始めた。
「びっくりしたよ。宇都さんと島ちゃんがそんな事になっているなんて。私、課が違うから気づかなかった。大変だったでしょう。災難だったね」
「どうしたらいいか分からなかったけど、朝話したカフェの人達が色々と相談に乗ってくれてね。少し、動き方が見えてきたんだ」
「あまり宇都さんと接点のない私がいきなり質問したら怪しさ満点だと思って、宇都さんと同じ課の先輩に聞いてみたんだ。その人と昔同じ部署だったから仲良くて。そしたら、マリさんっていう人の仮定の話は半分合ってた」
「半分?」
「正確に言うと3分の2かな。宇都さんの家の合鍵を持っていて、尚且つ自由に出入りできる人は2人。娘の杏里ちゃんと恋人の滝田さんだよ。実家のお母さんにも以前は渡してあったらしいんだけど、滝田さんと付き合い始めて、同棲の話が出てからは返してもらったんだって。滝田さんがくつろいでいる所に実家のお母さんがやって来たら滝田さん気を遣うだろうからって」
「そうなんだ。2人か……」
「それから、もう1つあって。最近宇都さん、恋人の滝田さんと喧嘩しちゃったみたいだよ」
「喧嘩?」
「結構派手に。今、会えてないっていうのもあってちょっとイライラしてるみたいだけど」
「そうなの?」
てっきりチロルの事が心配であんな態度を取られていたと思っていたけど、それだけではなかったのか。
「その喧嘩の原因っていうのが……」
「チロル?」
先走って私は尋ねる。
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