カフェ・ロビンソン

夏目知佳

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第3章

あらゆる仮定

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「じゃあ、これはどうです? 実は娘さんとチロルは一緒に住んでいた時から犬猿の仲でお互い良く思っていなかった!」
「それなら、わざわざ宇都さんの家で宇都さんの帰りを待ったりしないと思うわよ。チロルがいるんだから」
「じゃあ、じゃあ、これは? 実は宇都さんのお母さんは娘である宇都さんと親子だけど上手くいっていなかった。出来れば実家にも遊びに来ないで欲しい。それで、遠回しにチロルに嫌がらせをする事でうっぷんを晴らしていた!」
「不仲説が多いわねぇ。まぁ、でも想像力豊かなのはいい事だわ」
苦笑するマリさん。
私は素直に凄いと思った。よく、そんなに次から次へとアイディアが浮かぶものだ。
今度こそ、「えー、じゃあ何だろ?」考え込んだ柊真君に対して、今度は花梨ちゃんが発言する。
「これってそもそも仮定の話ですよね。実際に誰が合鍵を持っていたかを調べた方が皆で推理しやすいと思います」
カフェの接客ではまだ初々しくて柊真くんにフォローしてもらう事の多い花梨ちゃんだけれど、こういう発言を聞くともしかしたら根はすごく冷静な子なんじゃないかと思う。
マリさんも同意見だったようだ。
「そうね。花梨ちゃんの言う通り。これはあくまで仮定の話。実際の所は分からないわ。そこで、島田さん」
「はい」
何を言われるかは大体想像が出来た。
「私達が島田さんの会社に行って、こっそり探れればいいんですけどそれはちょっと難しいし、出来たとしてとても怪しまれます。宇都さんとの仲がこじれてしまった今、島田さんでも中々簡単な事ではないかもしれないけれど、調べる事、出来ますか? 誰が宇都さんの家の合鍵を持っているか」
私はすぐさま頷いた。
「分かりました。上手くいくかは分からないし、保証は出来ないけれどやってみます。皆さんに話を聞いてもらって意見を言ってもらって少し頭がすっきりしました」
このままでは私は宇都さんに疑われたままだ。少しだけ見えた光。それを掴まない手はない。
来週の木曜日、私はまたここへ来る事になった。
問題は山積みだけど、やるしかない。
お待ちしています。マリさん達がそう言ってくれるのが救いだった。
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