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第2章
やっぱり美味しい!
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昨晩、薬を飲んでも止まらなかった頭痛が少しだけ和らぐ。
絶妙なタイミングで柊真くんがオーダーを聞いてくれた。
「大人げない人達は放っておいて。パンケーキっておっしゃっていましたよね。今回はどのパンケーキにします?」
ちらりと柊真くんは横にいた花梨ちゃんへ視線を投げる。
気付いた花梨ちゃんははっとした顔をしてから、
「ロ、ロビンソンオリジナルフルーツまみれパンケーキ、ロビンソンオリジナルチョコレートまみれパンケーキ、ロビンソンオリジナルチーズまみれパンケーキ……えっと」
「新商品、新商品」
柊真くんのアシストに花梨ちゃんは、「そうだった!」と目を見開いた。
「ロビンソンオリジナル和風仕立てあんこ乗せパンケーキ! ……があります」
「おー、すげぇ。言えたね。花梨ちゃん」
「はい!」
嬉しそうな様子の花梨ちゃんが微笑ましくて、口元が緩む。
「うーん。どれも美味しそう。……そうだな。ちょっと甘いもので栄養補給したいから、ロビンソンオリジナルチョコレートまみれパンケーキにしようかな」
「お飲み物はいかがされますか?」
チョコレートまみれパンケーキにはスぺシャルブレンドを合わせたい。
でも。
「セットだとコーヒー、お安くなりますよ」
と言う柊真君に私はゆるゆる首を横に振った。
「美味しそうだよね。スペシャルブレンド、飲んでみたいんだけど、今、胃が悪くて……」
「あら。そういえば、少し顔色が悪いような……」
マリさんが心配げに声をかけてくれる。
「大丈夫ですか? うちはカフェインの入ってないチョコレートをパンケーキには使用してますけど、胃が荒れているならコーヒーはやめておいた方が……」
「そうですよね。うーん。どうしよう。……飲み物はやっぱりホットミルクにします。チョコレートとも相性良さそう」
マリさんは私の注文に優しく微笑むと、「かしこまりました」と言った。
柊真くんもカウンターに入るところを見ると、調理補助をする様だ。
私はミニトートからスマホを取り出して、時計を見る。
月曜日が来る前に、もう1度宇都さんと話すべきだろうか。
伝えるべきだろうか。
私は何もしていません、と。
結局決心がつかず、私はスマホをバッグへ戻した。
鼻腔をくすぐる良い香りが漂ってくる。
「花梨ちゃん、お願い」
「はい!」
マリさんに呼ばれた花梨ちゃんは出来上がったそれをそうっと私の所まで運んできた。
スクエアの木製皿に重ねられた二枚のパンケーキ。
たっぷりかけられたチョコレートシロップに、バナナ、砕かれたマカダミアナッツがデコレーションされている。
小さいこのキューブ型のものは何だろう?
上が白、下がブラウンになっている。それがバランス良く、パンケーキの上に配置されていた。
続いて運ばれてくる絶妙な温かさのホットミルク。
立ち昇る湯気にほっと癒される。
私はフォークを握り、まずはパンケーキをひと口。
しゅわっと口の中で溶けて、チョコレートシロップとの相性が抜群だ。
「この生地どうやって……。あ、企業秘密ですよね」
マリさんが私の言葉に優しく微笑む。
ホットミルクのまろやかでくせのない美味しさを味わった後、例の小さなキューブにフォークを刺した。
期待でわくわくしながら口に含む。
「え……」
にこにこしながらお皿を拭いている柊真君はどこか得意顔だ。
「これ、何? すごく美味しい!」
今までに味わった事のない風味が口全体に広がる。
白とブラウン。これは……。
絶妙なタイミングで柊真くんがオーダーを聞いてくれた。
「大人げない人達は放っておいて。パンケーキっておっしゃっていましたよね。今回はどのパンケーキにします?」
ちらりと柊真くんは横にいた花梨ちゃんへ視線を投げる。
気付いた花梨ちゃんははっとした顔をしてから、
「ロ、ロビンソンオリジナルフルーツまみれパンケーキ、ロビンソンオリジナルチョコレートまみれパンケーキ、ロビンソンオリジナルチーズまみれパンケーキ……えっと」
「新商品、新商品」
柊真くんのアシストに花梨ちゃんは、「そうだった!」と目を見開いた。
「ロビンソンオリジナル和風仕立てあんこ乗せパンケーキ! ……があります」
「おー、すげぇ。言えたね。花梨ちゃん」
「はい!」
嬉しそうな様子の花梨ちゃんが微笑ましくて、口元が緩む。
「うーん。どれも美味しそう。……そうだな。ちょっと甘いもので栄養補給したいから、ロビンソンオリジナルチョコレートまみれパンケーキにしようかな」
「お飲み物はいかがされますか?」
チョコレートまみれパンケーキにはスぺシャルブレンドを合わせたい。
でも。
「セットだとコーヒー、お安くなりますよ」
と言う柊真君に私はゆるゆる首を横に振った。
「美味しそうだよね。スペシャルブレンド、飲んでみたいんだけど、今、胃が悪くて……」
「あら。そういえば、少し顔色が悪いような……」
マリさんが心配げに声をかけてくれる。
「大丈夫ですか? うちはカフェインの入ってないチョコレートをパンケーキには使用してますけど、胃が荒れているならコーヒーはやめておいた方が……」
「そうですよね。うーん。どうしよう。……飲み物はやっぱりホットミルクにします。チョコレートとも相性良さそう」
マリさんは私の注文に優しく微笑むと、「かしこまりました」と言った。
柊真くんもカウンターに入るところを見ると、調理補助をする様だ。
私はミニトートからスマホを取り出して、時計を見る。
月曜日が来る前に、もう1度宇都さんと話すべきだろうか。
伝えるべきだろうか。
私は何もしていません、と。
結局決心がつかず、私はスマホをバッグへ戻した。
鼻腔をくすぐる良い香りが漂ってくる。
「花梨ちゃん、お願い」
「はい!」
マリさんに呼ばれた花梨ちゃんは出来上がったそれをそうっと私の所まで運んできた。
スクエアの木製皿に重ねられた二枚のパンケーキ。
たっぷりかけられたチョコレートシロップに、バナナ、砕かれたマカダミアナッツがデコレーションされている。
小さいこのキューブ型のものは何だろう?
上が白、下がブラウンになっている。それがバランス良く、パンケーキの上に配置されていた。
続いて運ばれてくる絶妙な温かさのホットミルク。
立ち昇る湯気にほっと癒される。
私はフォークを握り、まずはパンケーキをひと口。
しゅわっと口の中で溶けて、チョコレートシロップとの相性が抜群だ。
「この生地どうやって……。あ、企業秘密ですよね」
マリさんが私の言葉に優しく微笑む。
ホットミルクのまろやかでくせのない美味しさを味わった後、例の小さなキューブにフォークを刺した。
期待でわくわくしながら口に含む。
「え……」
にこにこしながらお皿を拭いている柊真君はどこか得意顔だ。
「これ、何? すごく美味しい!」
今までに味わった事のない風味が口全体に広がる。
白とブラウン。これは……。
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