桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第13章

武藤生徒会長

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私達は黙っていた。

黙っていたけど、皆同じ気持ちだったと思う。

間山さんが親友についた、最初で最後になるだろう嘘を見守ろうって。 

とびきり素敵で、世界一格好いい女の子の嘘を。

「大好きな結と陽人の恋が叶うなら、私は世界一、幸せなんだから!」

岩切さんが、間山さんの肩口に額を寄せる。

「り、莉理ちゃん」

「なぁに? 結」

大事な宝物をぎゅっと包み込むみたいに岩切さんを抱きしめて間山さんが優しく聞いた。

「莉理ちゃんが嫌いだなんて、嘘だよ。ごめんね。ごめんなさい。大好き、すごく、大好き」

「知ってる! 何年幼なじみしてると思ってんの!」

泣き笑いを浮かべる2人を見て、静先輩が耳打つ。

「ひとまず、一件落着かな」

ジロー先輩が腕時計に視線を落としながら言う。

「そうはいかないみたいだぞ、静」

「なんでさ、ジローちゃん」

「そうですよ、ジロー先輩、どうしてですか?」

「聞こえないか? 廊下を走ってくる音が聞こえる。しかも数名」

 私達は、3人顔を見合わせた。

「そうだった! 武藤の事、忘れてた」

「放送室、ジャックしたんでしたね!」

「到着まで、あと15秒ってとこか?」

わたわたし始める私達を見て、間山さん達がきょとんとする。

そんな2人に私は声をかけた。

「間山さん、岩切さん、逃げて! 武藤生徒会長と先生が来ちゃう」

「そ、それだと御手洗先輩達が……! 元はと言えば、私達が悪いのに」

「いーの、いーの。依頼者の守秘義務は最後まで守り抜きます。女の子達は皆、逃げてね。だから、夏帆ちゃんもだよ」

静先輩がそれに、と付け加える。

「最後くらい俺ら恋研に、少女漫画のヒーローみたいに格好つけさせてよ。ね、ジローちゃん」

「そうだな。今回のペナルティは廊下で正座か? 反省文5枚ずつか?」

「生徒会が作った資料のホチキスどめとかもあったよね~」

「美化清掃活動1週間に1票」

「お、それめちゃくちゃあり得るね。俺も1票。ほら、女の子達は、早く行って!」

静先輩が私達の背中を押す。

間山さんと岩切さんが、お互いの顔を見て、頷き合う。

「白石先輩、谷山先輩、御手洗先輩っ」

「本当にありがとうございました!」

駆け出す、2人の後に私も続く。

「先生、いました!」

「こらーっ! 恋研、なにしとるかーーーーーっ‼」

階段の踊り場を折れた所で、武藤生徒会長と先生の怒声が聞こえた。
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