桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第11章

力になりたい

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廊下で私が泣きべそかきながら静先輩の名前を連呼したせいで、余計に目立ってしまい、騒動を聞きつけたジロー先輩が駆けつけてくれて、とにかくその場から離れようとここまでやって来たんだけど。

ちなみに、意外にも2人はクラスが違って、静先輩はB組、ジロー先輩はD組なんだって。

「っていうか。静、お前なんでジャージなんだ?」

「クラスの男子にバスケやろうって誘われて。さっきまで体育館でバスケしてたんだ~」

「え、静先輩、バスケ出来るんですか?」

「ちょっと待って、夏帆ちゃん。それはどういう驚き?」

「そのままだろ。それより、夏帆。3年の校舎に来るなんて何かあったのか?」

「『それより』じゃないよ、ジローちゃん! 俺、夏帆ちゃんからいつの間にか運動音痴みたいなイメージを持たれてたんだよ。これは由々しき問題だよ!」

「それどころじゃないんです。静先輩」

「……夏帆ちゃん。なんかジローちゃんに感化されてきたよね」

静先輩が不服そうに口を尖らせる。

私は両手でグーを作って、主張した。

「もっと由々しき問題が発生してるんです!」

私は2年A組の教室に甘粕くんが来た事、そして彼から聞いた間山さんと岩切さんの現状を説明した。

話を聞き終えた静先輩がうーんと唸る。

「そうだねぇ。なんとかしてあげたいのはやまやまだけど。本人達が依頼を取り下げちゃってるからなぁ……」

「なんとかならないでしょうか」

「時間が自然に解決してくれるのを待つっていうのはどう?」

「……解決しますかね?」

横からジロー先輩が挙手をする。

「解決しないに1票」

「奇遇だね。ジローちゃん。俺も1票」

「私も……残念ながら1票です」

静先輩の言う様に、少しずつでも過ぎて行く日常が、毎日が2人の仲を修復してくれればどんなにいいかと思う。

けど、間山さんは岩切さんの気持ちを知って、岩切さんは間山さんが自分の為にしようとしていた事を知って、そんなにすんなり元に戻るとは考えづらい。

このまま2人の心の距離がますます開いていくのを、黙って見ているのはなんだかもどかしい。

「何をすれば……どうすれば、2人の力になれるんでしょうか」

「どうして?」

「え?」

気づけば静先輩の綺麗な二重の目が、私をまっすぐ見つめていた。
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