桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第11章

先輩、どこですか

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自分の教室を飛び出して、どうにか迷わずに3年校舎までやって来た私は、ふと何気なく周囲に首を巡らした。

なんだか周囲からものすごく視線を感じたからだ。

「あれ、2年生だよね?」

「どうしたんだろう。誰かに用事かな」

ひそひそ声が聞こえて、そうだった! と私は自分の制服のリボンを見る。

学年の違う、どこの部活にも属していない、しかも転校してきたばかりの私が、3年生ばかりいる廊下できょろきょろしてたら目立たない筈がなくて。

さっきの勢いはどこへやら、なんだか急に心細くなって私はすすすと廊下の隅に寄る。

そういえば私、静先輩達が3年生って事は知ってるけど、クラスまでは知らないよ。

ここに来る前に誰かに聞いておけばよかった!

後悔しても時すでに遅しで。

名前も顔もよく知らない先輩だらけの廊下で、一体誰に声をかければいいか分からなくて立ち尽くしてしまう。

3年生の教室はA組からD組まであるから、その1つ1つを訪ねて行けば済む話だけど。

問題は私にその度胸がないって事!

違う学年の校舎に来るだけで、こんなに緊張するとは思わなかったよ~。

半泣きになって、私は小声で助けを求める。

「ど、どこですか。静先輩、ジロー先輩~……」

「呼んだ?」

ひょい、と。

後ろから顔を覗き込まれて、私の頭は一時思考を停止した。

「やっぱり! 夏帆ちゃんだった。見覚えある後ろ姿が向こうから見えたからもしかして、と思ったんだけど。……って、え⁉ 夏帆ちゃん、どうしたの?」

「静先輩、静先輩――っ」

突如現れた、なぜかジャージ姿の静先輩を見て安心した私は、号泣しそうな勢いで先輩の名前を何度も呼んだんだ。





「教室に戻ったら、静が後輩の女子を廊下で泣かせてたって噂になってるのに1票」

「違うよ、ジローちゃん。俺も絶対、そうなってると思うから、あわせて2票だよ」

「すみません」

内緒話をするならうってつけ、と言って静先輩とジロー先輩が連れて来てくれたのは3年校舎の非常階段だった。

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