桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第10章

先輩からの報告

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あれから3日が過ぎようとしていた。

私は2年A組の教室で、昼休みの喧騒に包まれながら相変わらず部活動一覧表とにらめっこしている……んだけど。

決まらない。

本当にどうしよう。

集中したいのに、集中出来なくて。

部活動見学に行きたいのに、行く勇気もわかなくて。

自分の机の上に、一覧表を置いて、校舎の外を見遣る。

わずかに開いた窓の隙間から入ってきた風が、教室のカーテンを揺らしている。

間山さんが涙を見せた翌日、静先輩とジロー先輩が私のクラスにあの後の事を報告しに来てくれた。

「間山さんから、正式に依頼を取り下げたいっていう申し出があったよ」

「そうですか……」

「ありがとうね。夏帆ちゃん」

「え、私は何も」

「間山さんが恋研の部室前から駆けだした時、とっさに追いかけてくれたでしょ。御手洗先輩が話を聞いてくれて、すっきりしましたって間山さんが言ってたよ」

きゅっと心が締め付けられる。

間山さんの夕日に照らされた横顔を思い出す。

俯きかけて、もう一人の依頼者に思い至った。

2人に尋ねる。

「あれから、岩切さんの方は……」

ジロー先輩が廊下の窓枠にもたれつつ、教えてくれる。

「岩切さんの方も、一旦取り下げるという事だった。間山さん自身に話を聞かれてしまったわけだから、まぁ当然かもな」

「……」

「夏帆ちゃんが、沢山、間山さんの力になってくれて助かったよ」

微笑む静先輩に、何か言おうとして、口を噤む。

なんて言っていいか、分からなかったんだ。

静先輩とジロー先輩が3年の校舎へ帰っていくのを見送って、私は私の日常に戻った。

入部受付期間は2週間。

その大半が、既に過ぎてしまった。

「ちゃんと考えないと!」

気持ちを切り変えようとする私と、ふとまた考え事を始めようとする私のはざまで悶々としていると、クラスメイトから名前を呼ばれた。

「御手洗さん、お客さん来てるよ」

「へ?」
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