桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第9章

本当の気持ち

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「待って! 待って、間山さん!」

走り、遠ざかっていく間山さんの背中を必死で追いかける。

私は、岩切さんを静先輩とジロー先輩に任せて、部室を飛び出した。

考えがあった訳じゃない。

でも、追いかけなきゃって思ったんだ。

岩切さんは自分の事を運動音痴だと言っていたけれど、私も負けないくらいに運動音痴だ。

徐々にひらいていく距離、上がる息。

どうしたら止まってくれるだろう?

どうしたら話を聞いてくれるだろう?

間山さんは、岩切さんの話をどこからどこまで聞いていたんだろう。

どんな、気持ちで。

「間山さんっ」

動け、動け、私の頭。

考えるんだ。

間山さんに止まってもらう方法を。言葉を。

「甘粕くんに会ってきたの‼」

間山さんが走るのを止めた。

ゆっくりとこちらを振り返る。

怯えた様な彼女の目の中に、私がいる。

「少しだけ、2人で話が出来ないかな?」

間山さんが、小さく「はい」と言った。



まだ、桜ヶ丘中学校の校舎全体を把握しきれていない私を、間山さんが中庭まで案内してくれた。

中庭の木陰に木製のベンチが2脚、横並びに置かれている。

その片方に2人で腰かけて、私はなんて切り出そうか迷った。

「……陽人は」

「うん?」

「結の事が好きなんです。昔から、あの2人は両想いなんです」

「……そっか」

幼なじみである岩切さんと甘粕くん2人の気持ちに間山さんはちゃんと気づいていた。

「私、隠しました」

「隠した?」
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