桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第7章

守りたい女の子は誰?

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静先輩も隣で何か考えを巡らす様に顎に手を添えていた。

「そういう事なんで。もう、いいですか」

再び踵を返そうとする甘粕くん。

「じゃあ、岩切さんでいいや」

一言、ぽつりと放った静先輩に甘粕くんがきょとんとする。

「……は?」

「俺、別に岩切結さんでもいいや。2人で話してるところ見て可愛いなぁって思ってたんだよね~」

「ますます意味わかんないんですけど」

甘粕くんの眉間に皺が寄る。

気づいているのかいないのか静先輩は話を続ける。

「だからー、間山さんとの仲を取り持つのが嫌なら岩切結さんと仲良くなれる様に協力してよ。岩切さんとも幼なじみなんでしょ?」

……静先輩、ちょっとキャラがチャラすぎませんか? 

設定とはいえ、喉元まで出かかった言葉をのみ込んで、事の成り行きを見守っていたらー……。

「消えてください」

「え?」

「今すぐ、ここから消えてください。……殴らない自信がないんで」

目に怒りを湛えた甘粕くんが静先輩を睨みつける。

「どっちもだめなの?」

「だめに決まってるだろ!」

煽る様に尋ねる静先輩に掴みかからんとする甘粕くんへ、ジロー先輩が尋ねた。

「それってさっきと同じ意味で?」

「同じ意味?」

甘粕くんが聞き返す。

「岩切さんに静の事をすすめられないのも、間山さんの時と同じで大事な幼なじみを守りたいから?」

「そうですよ。そんなの決まってー……」

「岩切さんを女の子として守りたいからじゃなく?」

一瞬、甘粕君が言葉に詰まった。

その様子を見て、静先輩が畳みかけるように言う。

「あれ? 図星さされちゃった感じ?」

言い返そうとする甘粕くんの耳が赤く染まる。

「アンタ達には関係ないだろ!」

甘粕くんが怒れば怒るほど、彼が隠したい本当の気持ちが、こちらに伝わって来る。

体育館の入り口で、バスケ部らしい男子生徒が「1年、早く中入れよ。練習始まるぞ!」とまだ戻らない部員に声をかけた。

甘粕くんは進行方向で道を塞ぐ静先輩まで歩み寄ると、怒気を含んだ声で言った。

「もし、莉理や結に何かしたら絶対に許さないから」

去っていく甘粕くんの背中を見送って、静先輩が「あらら」と他人事みたいに呟いた。

「これは、相当嫌われちゃったねー」

「汚れ仕事は得意だろ、お前」

「すごくチャラかったです、静先輩」

「2人とも、言い方。言い方が良くないな」

でも、と静先輩が両手を広げた。

「これで1つ、明らかになったね。甘粕くんは岩切さんが好きだって事が。つまり、2人は両想いだ」
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