桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第6章

リサーチ開始

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「もともと、今日は間山さんに近しい人を調査する予定だったんだよね」

桜ヶ丘中学校の広くて大きい体育館で、バドミントン部、バレー部、バスケットボール部がそれぞれスペースを確保して練習に励んでいるのを眺めながら、静先輩がのんびり言う。

私達が今いるのは体育館上の見学スペース。

桜ヶ丘中学校は全員部活所属型って事もあって、私達のほかに運動部の練習を見学している生徒はいない。

「体育館にジローちゃんと向かってるところで、女王様……生徒会長の武藤から恐怖の校内アナウンスがあってさ。俺らと親しい可愛い後輩ってもしかして夏帆ちゃん⁉ って思って、大急ぎ放送室まで引き返してきたって訳」

「そうだったんですね」

「偉そうな武藤の態度は相変わらず腹が立つけど、結果的にこうして夏帆ちゃんもピックアップ出来たからいいか」

「静先輩」

「うん?」

自前なのか分からない双眼鏡で、試合形式で練習を行うバスケ部員を見つめる静先輩に私は切り出す。

「昨日の……間山さんの事ですけど」

「あ、あの子だ」

「そう、あの子……え? どの子?」

持っていた双眼鏡を私に渡して、静先輩は1人の男子生徒を指さした。

「甘粕陽人くん。1年Ⅽ組、小柄だけど、さっきからいい動きしてる。バスケ経験者かな?」

「小学校の頃、ミニバスケットボールチームに所属していたそうだ」

ジロー先輩からの補足に静先輩が納得顔で頷いている。

「運動神経のいい幼なじみにいつの間にか抱く恋心。うん、少女漫画における王道だね!」

ジロー先輩が思い出したように付け加える。

「王道と言えば、お前が師と仰いでいる春風ゆかり先生の連載が月間マリーゴールドで始まるらしいぞ。知ってたか?」

「え、何それ。知らない。そうなの? いつから? 何月号から? 本誌にそんな情報出てなかったよね⁉」

「非公式ファンクラブからの情報だから、確かじゃないけどな。でも、あそこのサイトは以前も春風先生の新連載の情報をいち早く掴んだだろ。確定だといいな」

「本当だね! わぁ、どうしよう、春風先生今度は何を描くのかな? 前回は激甘同居ラブコメだったよね。ヒロインの家に学校いちのイケメンが引っ越してくるヤツ。最終回、良かったよねぇ。あのラストは予想をはるかに超えて感動的―……」

昨日と今日で分かった事がある。

静先輩は大好きな少女漫画の話を始めると止まらなくなっちゃう。

話が盛り上がるのはいいけど、肝心の甘粕くんのリサーチはいいのかな。

大好きな少女漫画のディープな話で盛り上がる2人をぽかーんと見ていたら、ジロー先輩が私の視線に気が付いてくれた。
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