15 / 42
第6章
デジャヴ
しおりを挟む
「夏帆ちゃーん」
武藤生徒会長が立ち去ると、その場にうずくまった静先輩が私の名前を呼んだ。
「す、すみません。せっかく助けてもらったのに。嘘つけなくて」
「構わない。どっちにしろ、無断で部室を作ったのは、すぐにバレただろうしな」
ジロー先輩はそう言ってくれたけど、助けてもらった手前、きまりが悪い。
「ジローちゃーん。切り替え速すぎ。俺はショックで立ち直れないよ。やっと手に入れた俺達の憩いの場所が。オアシスが~」
しゃがみこんで、両手で顔を覆い泣いたふりをする静先輩をしれっと無視して、ジロー先輩が「夏帆、これから少し時間あるか?」と尋ねた。
「ジローちゃん、あのね。ジローちゃんはもう少し、俺を尊重すべきだと思う」
「ぐだぐだ言ってても仕方ないだろ。それに、早く行かないと時間だ」
「時間?」
首を捻ると、ジロー先輩が「バスケ部の練習が始まる時間」と身に着けた腕時計を指して言った。
「あ、本当だ。急がないと」
静先輩も真顔に戻って、膝を払う。
「バスケ部に用事ですか?」
「うん。バスケ部の甘粕陽人くんにね。ちょっとしたリサーチ、的な」
……甘粕陽人。どこかで聞いた覚えがある様な。
「あ、間山さんの幼なじみ!」
思い出して、声をあげた私に、静先輩がニッと笑う。
「そう! と、いう事で、時間がないから行こう。2人とも」
ん? 2人とも? いやいやいや。私はもう。
「え。ええと静先輩、私はもう帰ろうかと……」
「ジローちゃん、そっち側お願い」
右脇を静先輩、左脇をジロー先輩に抱えられて、またしても捕らえられた宇宙人よろしく私は強制連行される。
デジャヴ。なんかこれすっごくデジャヴだよ。
「ま、待ってください! 分かりました、分かりましたから。後ろ向きだと危ないからやめてー!」
武藤生徒会長が立ち去ると、その場にうずくまった静先輩が私の名前を呼んだ。
「す、すみません。せっかく助けてもらったのに。嘘つけなくて」
「構わない。どっちにしろ、無断で部室を作ったのは、すぐにバレただろうしな」
ジロー先輩はそう言ってくれたけど、助けてもらった手前、きまりが悪い。
「ジローちゃーん。切り替え速すぎ。俺はショックで立ち直れないよ。やっと手に入れた俺達の憩いの場所が。オアシスが~」
しゃがみこんで、両手で顔を覆い泣いたふりをする静先輩をしれっと無視して、ジロー先輩が「夏帆、これから少し時間あるか?」と尋ねた。
「ジローちゃん、あのね。ジローちゃんはもう少し、俺を尊重すべきだと思う」
「ぐだぐだ言ってても仕方ないだろ。それに、早く行かないと時間だ」
「時間?」
首を捻ると、ジロー先輩が「バスケ部の練習が始まる時間」と身に着けた腕時計を指して言った。
「あ、本当だ。急がないと」
静先輩も真顔に戻って、膝を払う。
「バスケ部に用事ですか?」
「うん。バスケ部の甘粕陽人くんにね。ちょっとしたリサーチ、的な」
……甘粕陽人。どこかで聞いた覚えがある様な。
「あ、間山さんの幼なじみ!」
思い出して、声をあげた私に、静先輩がニッと笑う。
「そう! と、いう事で、時間がないから行こう。2人とも」
ん? 2人とも? いやいやいや。私はもう。
「え。ええと静先輩、私はもう帰ろうかと……」
「ジローちゃん、そっち側お願い」
右脇を静先輩、左脇をジロー先輩に抱えられて、またしても捕らえられた宇宙人よろしく私は強制連行される。
デジャヴ。なんかこれすっごくデジャヴだよ。
「ま、待ってください! 分かりました、分かりましたから。後ろ向きだと危ないからやめてー!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
はんぶんこ天使
いずみ
児童書・童話
少し内気でドジなところのある小学五年生の美優は、不思議な事件をきっかけに同級生の萌が天使だということを知ってしまう。でも彼女は、美優が想像していた天使とはちょっと違って・・・
萌の仕事を手伝ううちに、いつの間にか美優にも人の持つ心の闇が見えるようになってしまった。さて美優は、大事な友達の闇を消すことができるのか?
※児童文学になります。小学校高学年から中学生向け。もちろん、過去にその年代だったあなたもOK!・・・えっと、低学年は・・・?
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる