桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第6章

デジャヴ

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「夏帆ちゃーん」

武藤生徒会長が立ち去ると、その場にうずくまった静先輩が私の名前を呼んだ。

「す、すみません。せっかく助けてもらったのに。嘘つけなくて」

「構わない。どっちにしろ、無断で部室を作ったのは、すぐにバレただろうしな」 

ジロー先輩はそう言ってくれたけど、助けてもらった手前、きまりが悪い。

「ジローちゃーん。切り替え速すぎ。俺はショックで立ち直れないよ。やっと手に入れた俺達の憩いの場所が。オアシスが~」

しゃがみこんで、両手で顔を覆い泣いたふりをする静先輩をしれっと無視して、ジロー先輩が「夏帆、これから少し時間あるか?」と尋ねた。

「ジローちゃん、あのね。ジローちゃんはもう少し、俺を尊重すべきだと思う」

「ぐだぐだ言ってても仕方ないだろ。それに、早く行かないと時間だ」

「時間?」

首を捻ると、ジロー先輩が「バスケ部の練習が始まる時間」と身に着けた腕時計を指して言った。

「あ、本当だ。急がないと」

静先輩も真顔に戻って、膝を払う。

「バスケ部に用事ですか?」

「うん。バスケ部の甘粕陽人くんにね。ちょっとしたリサーチ、的な」

……甘粕陽人。どこかで聞いた覚えがある様な。

「あ、間山さんの幼なじみ!」

思い出して、声をあげた私に、静先輩がニッと笑う。

「そう! と、いう事で、時間がないから行こう。2人とも」

ん? 2人とも? いやいやいや。私はもう。

「え。ええと静先輩、私はもう帰ろうかと……」

「ジローちゃん、そっち側お願い」

右脇を静先輩、左脇をジロー先輩に抱えられて、またしても捕らえられた宇宙人よろしく私は強制連行される。

デジャヴ。なんかこれすっごくデジャヴだよ。

「ま、待ってください! 分かりました、分かりましたから。後ろ向きだと危ないからやめてー!」
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