桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

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第4章

先輩ごめんなさい

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「今までの俺らの会話を聞いて、夏帆ちゃんも薄々気づいたんじゃないかと思うけど」

静先輩が苦笑いを浮かべながら片手で器用に私のポカポカ攻撃を防いでいる。

「桜ヶ丘中学校恋愛研究部には少女漫画を読みふける以外にもう1つ別の活動があるんだよ。それが、『恋の相談に乗ったり、恋愛のお悩み解決の手助けをします』ってヤツ」

「聞いてません!」

「今、言ったからね~」

両手でグーを作って静先輩の肩先にポカポカとパンチを繰り出す。

でも、ことごとくかわされて、しかもやればやる程なぜか静先輩がにこにこするのがなんか悔しい。

静先輩は最後の私のパンチを受け止めて、その手を取ると、「夏帆ちゃん、うちのばあちゃんちにいる大福みたい」と言った。

「大福?」

「ペットの猫だよ。猫なのに猫パンチが下手でかわいいんだよねー」

く、悔しい~‼

私はポカポカパンチ攻撃を再開した。

ジロー先輩が呆れた様子で、私達に声をかける。

「静、夏帆。間山さんが続きを話せずに困ってるだろ。猫パンチごっこは後にしろ」

今度は叱られてテンションダダ下がりの私と、なぜか上機嫌の静先輩はジロー先輩の鶴のひと声でようやくソファーへ戻った。

「私には2人の幼なじみがいるんです。男の子と女の子。家も近くで、私含め皆、桜ヶ丘中学校に通っている1年生です。男の子が甘粕陽人。女の子が岩切結って名前で。一緒にいると楽しくて、黙ってても全然苦じゃなくて、2人といるとほっとするんです。周りからもよく姉弟みたいに仲良しだねって言われます」

「でも、好きになっちゃったんだ?」

静先輩が尋ねると、間山さんがこくりとする。

「私も陽人は……弟みたいだってずっと思ってました。結が陽人を昔からずっと想ってるのだって知ってたんです。けど、中学生になってから私も陽人の事好きになっちゃって……」

泣きそうに間山さんが笑うから、見ているこっちが苦しくなる。

「幼なじみで三角関係かー。苦しいね」

「……はい」

思いのほか、優しい静先輩の声を聞いて、少しだけ先輩を見直した。

静先輩でもちゃんと後輩の気持ちに寄り添って、言葉を選べるんだ!

残念系イケメンとか思ってごめんなさい! 静先輩。
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